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剣と魔法の人生ゲーム  作者: 真川塁
第1章 幼少編 ~生まれて飛び出て~
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1-2 welcome to albert!!

 ぴっと背筋を伸ばし、一直線に僕は歩く。

 といってもまだ5歳。大人げなく大人ぶっているのは自分自身でも重々承知だが、このように育てられてきたのだから仕方がない。


 初めて喋った時の失敗はあの後上手く(かどうかはわからないが)誤魔化した。


 メリィさんの知らせを聞いて部屋にやってきた母親とハーヴィス先生相手には拙い言葉で喋ったこともあり、結局メリィさんの聞き間違いということで落ち着いた。しばらくメリィさんは釈然としない顔をしていたが、しばらくするとまた何事もなかったかのように接してくれるようになった。


 喋れるようになってからはやることが多くなった。

 今までは本を読んでお話を聞かせてもらったり、おもちゃで遊んだりというコミュニケーションが大半だったが、それからはモノの名前を覚えさせられたり、正しい発音の仕方などのどちらかと云えば勉強めいたことに時間を多く割くようになった。

 といってもまだその程度。本格的な勉学・鍛練は5歳以降になるらしい。


 そして、今日は僕の5歳の誕生日だ。

 どうやら風習としてここアルベート王国の王族は5歳になると国民にお披露目されるらしい。


 そのため僕は新しく新調されたシンプルだけど質感とデザインから高級感が伺えるよくわからない服に着替えさせられて、こうしてバルコニーに向けて歩き出している。


「イクス様、落ち着いて、頑張ってください」


 どっちなんだ。

 後ろから着替えも手伝ってくれたメリィさんが無茶なことを言ってくる。


 その言葉により一層緊張してしまい、喉が鳴る。知らない人大勢の前に立たなきゃいけないとか……なんだかお腹も痛くなってきた。

 こちとら体は子供だが、中身は元高校生である。そういう変な羞恥心ばかり育って仕方がないくらいだ。


 余談だが、メリィさんとはよく一緒に入浴したり一緒のベットで寝たりということもあるが不思議とえっちぃ気分にはならない。

 体が子供だから反応しない、というわけでもない。母親に対する感覚に近いものがある。公務に多忙な実母の代わりとして一緒にいる時間が長いからかもしれない。

 と、関係のないことを考えると少し緊張が和らいだ気がした。

 今のうちだ、と思い少しだけ歩く速度をあげる。

 

 バルコニーには既に家族が揃って待っていた。

 左から兄ワイナード、父ゼーリット、母エミリダ、姉のシーゼリカ。


「――それでは、我が息子第2王子イクスを紹介しよう」


 ゼーリットの話が終わり、締めくくりとしてその言葉が紡がれると観衆から大きな歓声があがった。

 その声にさきほど収まった緊張がまたぶり返してきてしまい、あと一歩というところで足がすくんでしまい、動けなくなる。


 しかし、そんな僕に前方から声がかかる。


「イクス、大丈夫だからおいで」


 そういって手を伸ばしてくれたのはワイナード兄さんだった。

 他の3人も優しい目でこちらを見ている。


 その視線に、その伸ばされた腕にすがりつくような形で手を掴む。

 兄さんに引っ張られる形でバルコニーに降り立った僕に太陽が容赦なく日差しを浴びせてくる。一歩ずつ前進しながら、空いた方の手で庇を作ろうとした僕の元に大歓声が届く。


 下から突き上げてくるソレに驚き、そちらへと目をやると、円形の広場には実に多くの人の群れが出来上がっていた。皆が皆、こちらを見上げて手を振ったり叩いたりしている。

 条件反射的に僕が手を振り返すとまた場内が沸いた。


「イクス様~!」


「王子~!」


 そんな声があちらこちらから聞こえてくる。

 中には「父親のような遊び人になるなよー!」といったようないかにも親戚の叔父さんなんかがいいそうなことを言っている人もいた。その声に周囲から笑いが生まれる。

 え……そんなこと言っても大丈夫なんすか?


 ちらりとゼーリットの方を見ると苦笑していた。エミリダはエミリダで「全くです」と非難するどころか同意している。……王様、フレンドリーすぎね?


 僕の視線に気づいたゼーリットが僕の方を見、そして手を僕の肩に回した。そして、その手にエミリダの手が重ねられる。

 そうすると、自然と歓声が収まり、静寂とまではいえないまでもざわめきくらいにまでは落ち着いた。

 人々が何かを期待するような目でこちらを見ている。


 ……なんだろう?


 僕が疑問に思っていると隣に立つ母親から助け舟が入った。


「イクス、皆さんに自己紹介を」


 そういえばメリィさんがそんなことを言っていた気がする。只、極度の緊張で耳に入れど、いまのいままで忘れていた。


 自己紹介かぁ。

 ……どうしよう、何も考えてないや。


 何を話そうかと考えている間も観衆か期待のこもった目でこっちを見ている。


 やめろ、こっちみんな。

 期待するな。ハードルをあげるんじゃねぇ。


 ついそんな言葉を吐きたくなったが、それだと初めて喋った時の二の舞になるのは火を見るより明らかだったのでなんとか口を閉ざした。

 ……まぁ、5歳児なんだから名前と軽い挨拶とかで良いだろう。

 深呼吸して、早口にならないように気をつけて挨拶する。


「あるべーとおうこくだいにおうじ、いくす・あるべーとです。おうじとしてこのくにをよりよくしていきたいので、みなさんよろしくおねがいします」


 云って、頭を下げる。

 無音。

 静寂。

 不思議に思い顔をあげると、そこにはぽかんとした顔を民衆&家族が。

 やべぇ、またやっちゃったか!?

 僕が不安に駆られ、頬を汗が垂れていく。


 しかし次の瞬間、

 先ほど以上の大きな歓声があがった。


「よく出来た坊ちゃんだ!」


「期待してるぞ、王子さま~!」


「こりゃあ、ゼーリット様にとって代わる日も近いな!」


 などと広場いっぱいの声が僕に届く。


 ……よかった、なんとかなった。

 ふぅ、と安堵のため息を漏らす。


 そんな僕の頭に大きな手が被さる。

「よく頑張ったな」とでもいうようにゼーリットが僕の頭をなでていた。

 ワイナードやシーゼリカ、エミリダも目を細めて僕を見ている。

 広場の歓声はいつしか大きな拍手に、そして「イクス様万歳! アルベート王国万歳!」といったものに変わっていた。


 その光景を見て、僕は本当の意味でやっとこの世界の人間になれた気がした。



 これにて、連続投稿は終了です。

 八月からはとりあえず「週1回以上」を目標に更新する予定です。

 

 読んで頂きありがとうございました。

 よかったら今後もよろしくお願いします。

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