プロローグ-1
この場所に封印されてからどれくらい立ったのだろうか。
確か………
だめだ。思い出せない。
しかしまあ、あまり関係の無い話なのだろう。
今までもこれからも俺はここに封印されるのだろうから。
久しぶりに目を覚ますと遠くで声が聞こえる。
「……であり…………ということです」
懐かしいものである。一体どれぐらいぶりなのだろう。
「………ここか、しかし意外なものが封印されているものだな」
懐かしくはあるが何故だろう。無性に神経が逆撫でさせられる口調だ。
「取り敢えず封印を解くとするか」
どうやらこの場にいるのはさっき喋った男と武器を携えているのが三人。そのうち一人が女で、もう一人別の女がいるな。
「お前に解けるのか?この特式魔導多重血界が」
ふむ、久方ぶりに声を出したが案外うまく出せるものだな。
「しゃ、喋れるのか。いや、当然であろうな。難と言っても旧世紀の遺産であるからな。さて、君の質問だが答えは出来るだ。それも簡単に、だね」
自信たっぷりと言い放ちおるな。
「ほう、そこまで言うのなら解いて見せよ」
封印の目の前まで男は歩いてきた。
ここまで近くにいると封印の中とはいえ顔が見える。
中々に整った容姿ではあるな。無性に気に入らないが。
「我 血の盟約により 彼の者を解き放たん」
特定呪文はあっている様だがはてさて、問題はこれからなのだが。
「な、何故だ?何故何もおきん」
「お主アホであろう?本当にそれだけでこの封印が解けると思っているのか?いったであろう血界であると」
こやつはアホらしいな。特定呪文を唱えただけでその後に何もせんとは。
「もうよい。お主はどうやらあやつの子孫ではないらしい」
全く、あの詐欺師め。魂を賭けた約束は破らんのが信条ではなかったのか?
「ど、どうなっているのだ。答えよ、シルヴェステシア」
「お、おそらく、血が必要なのではないでしょうか」
以外にも答えたのは武器を持っていない女だったな。
「っく!! 我 血の盟約により 彼の者を解き放たん」
お、今度は特定呪文とともに血を出してきたか。
そして目の前が光に包まれ……………………………………………………ない。
「おい!これはどういう事なのだ!?」
ふむ多少は緩くなったようだがしかし、根本的な封印は解けておらんな。
「それは私にも分かりかねます……」
この多少でどれほどのことが出来るのやら。試してみねばならんな。
「お主、少し黙っておれ。今から封印の何段階までが解けたのかを調べるのでな」
「何故お前などに指図されなければならんのだ!」
「お主があの『誉れ高き詐欺師』の傍系の子孫だからじゃよ」
全く、しかし傍系とはいえ子孫。三段階までは解けているようじゃな。ということは魔眼、邪眼、神眼、鳳眼くらいまでなら出来るか………
(千里を見通し世の果てを知るものよ その力顕現せよ 『千里眼』発動)
『千里眼』その名の通り千里を見ることが出来、千里内であるなら何でも読み解くことが出来る。
無論それが世界の情報であったとしても。
なるほど、今はオリガテスシア暦、いや旧暦だと3914年、今のシルテスシア暦だと1512年か。二千年近く封印されていたとは。
さて
この部屋まで来れたということはこの中に詐欺師の直系がいるはずなのだが。
男の騎士二人は違う。女のほうは………チッ!『悪鬼羅刹』の直系ではないか。あまり関わりあいたくないな。
ということは残った普通の女が直系か。以外だったな。あの詐欺師の子孫だ。もっと待遇のよいはずなのだが。
「おい!さっきから何を黙り込んでいる!何故何もおきないのだ。それと俺が傍系とはどういうことだ。説明しろ!」
「黙れといっただろうがこのクズめが。それよりそこの女。お前の血を垂らしてみろ」
「私、ですか?」
「あぁ、そこの『悪鬼羅刹』の子孫の血など垂らされてみろ。俺は発狂してやるぞ」
おずおずといった様子で封印の前まで女は来ると男の後ろで控えていた騎士に小型のナイフを借り
右手の人差し指から血を垂らした。
そして今度こそ目の前、いや世界が白く染まった