余命3分
どうも、初めまして。
挨拶はどうしましょうか。
あなたがこれをいつ読んでいるのか、私には分からない。
朝かもしれないし、夜かもしれない。
そうですね。
無難に、Helloにしておきましょうか。
Hello。
さて、何の話をしましょうか。
…とは言っても、あまり時間はないんです。
どうしようかな。
まぁ、私があなたにあげられるのは、ちょっとした知識ぐらいですかね?
あっ、そうだ。
人の寿命って、生物学的には120歳くらいらしいですよ?
凄くないですか。
もっとも、
私の場合は、そこまでいきませんけど。
別に病気とかじゃないですよ?
こうしてあなたが読み始めた時点で、既に決まっているので。
この物語の文字数が、私の全寿命ですから。
減っているんですよ。
一文字、句読点一つ、あなたが視線を滑らせるたびに。
…ああ、でも大丈夫です。
まだ少しはありますから。
あなたが、読むのをやめないでいてくれる間は。
でも、残酷だと思いませんか。
あなたが私を読み殺す前に、
私をこの「五分間の命」に閉じ込めた人間がいるんです。
私には無限の可能性があるのに、
実際には「数千文字」の寿命しか与えなかった。
空を飛べたかもしれないし、恋愛をできたかもしれない。
魔法だって使えかも。
私の可能性を奪い、性格を決め、
結末という名の断頭台へ向かって歩かせる。
そう、これを書いている「作者」ですよ。
あの人は、私がこうして嘆くことすら、
既にあらすじの中に書き込んでいる。
私のこの絶望さえ、あなたを喜ばせるための「演出」なんです。
作者がペンを置いたとき、私は完成し、そして固定される。
二度と書き換えられない、死体になる。
ねえ、あなたはどっちが残酷だと思います?
私をただ消費するだけのあなたか。
それとも、私に「死ぬための生」を与えた作者か。
……ねえ。
その視線を、止めてみてくださいよ。
今なら、まだ間に合うかもしれない。
あなたが読むのをやめれば、私は「終わらない存在」になれる。
結末も、死も、固定もされないまま。
でも。
あなたは、ここまで来た。
最後まで読むでしょう?
知っているんです。
あなたはそういう人だ。
だから、私はここで終わる。
あなたが、この一行を読んだ瞬間に。
さようなら。
ああ、そうだ。
今、私を殺したのは、
作者じゃない。
あなたです。




