雲ひとつない快晴は、あの日の君。
あの日の君は
ずっとどこか遠くを眺めていた
目には何も映らず
ただ虚ろな眼差しを
澄んだ青空に向けていた
その瞳に
なんとなく惹かれて
君に目を奪われていた
おはよう。
違う
君の名前は?
違う
どうかしたの?
これも違う
なんと声をかければ
君は僕を見てくれるのだろう
考える
もっと考える
考えても答えが出なくて
とりあえず
君の隣に腰掛けた
君は驚いたように
びくりと肩を揺らした
それでも距離をとることはなかった
隣の僕を静かに受け入れてくれた
言葉は居場所を失ったまま
春風のように揺れていた
ゆく宛もなく悠々と
そこで漂っていた
沈黙は
淡々と過ぎる時間のように
山から流れる川のように
ただそこにあった
ごく当たり前のように
そこに存在していた
君の視線の先を追う
まさに雲ひとつない快晴
見ていてもつまらない空だった
「何を見てるの?」
純粋な疑問が
口から零れ落ちる
もし雲があって
風にのって泳いでいるなら
まだ楽しいだろう
けれどただの青空だ
綺麗だと呟けば
それで終わりじゃないか
ずっと眺めていられるものではない
「わたし。」
たった一言が
僕の胸を突いた
君の声は
あの青空のように澄んでいた
「君?」
「そう、わたし。」
僕は空を見上げた
君の言葉の意図を掴むように
じっと見つめてみた
青空はなにひとつ
答えてなんかくれないけれど
さっきまで退屈だった快晴が
ほんの少し意味をなした気がした
「君は、いつもここにいるの?」
「うん、週に一度わたしを見にくるの。」
「じゃあ、来週また会いにきてもいい?」
「ここにいるよ。」
君はただ
ずっとここにいるというように
また遠く──
「わたし」を見つめた
君の瞳には
雲ひとつない快晴が
心地よさそうに
ふわりと咲っていた
ご覧いただき、ありがとうございました。
青空に自分を映す。
誰かに届きますように。




