あとがき
始めに本作を読んでいただいた方へお礼を述べさせてください。
約2ヶ月分の分量で約10万文字の長編ですがお付き合いいただきありがとうございました。
ナツガタリ用に学園ミステリーを考えた結果、「学校の中じゃ人が死ぬようなミステリーは起きないよなぁ」と考えまして元から死んでいる人を主軸に考えてみました。
始めに完結までのプロットを作ったのですが、書いていく内にどんどんプロットからズレた行動をする人達のお陰で何度も何度も何度何度もプロットを書き直す羽目になったことにお礼をしたいです。
タイトルのお話ですが日本には古来より花の散り方に様々な言い方があります。
桜は舞う
梅はこぼれる
椿は落ちる
牡丹は崩れる
など様々なものがあります。紫陽花はしがみつくというのも初めて知りました。
花が散るのは花としての命が尽きるということにほかなりません。花は女性にも例えられることから今回は日和霞、つまり先輩のイメージとして死んだ花を使いました。
ダブルミーニングではないですが紫陽花のしがみつくは茎に枯れた花がしがみついて見えるところから来ているらしく、現世を生きる夜月雪にしがみついているところも掛けています。
それが起こるのは初夏のこと。雪くんが新しい自分に一歩を踏み出す季節が紫陽花がしがみつく頃というわけです。
本作にはミステリーにありがちなトリックというものが存在せず、あるとすれば叙述トリックでしょうか。読者の方は始めから須藤が嘘を伝えた理由が分かっていたかもしれません。でも雪くんは推理をする人ではないので分かりませんでした。
霞の行動理由は謎を解くというのが本の世界の探偵と同じで面白そうという理由以外に雪くんと一緒に楽しみたいというものもあったと思います。
閉じたセカイで自分のことを見つけてくれたたったひとりの男の子を特別に思ってしまうのは不思議なことではありません。
続きを書くことがあれば、今回は書かれることがなかった先輩から雪くんへの重い感情を書くことがあるかもしれません。今作でも先輩の重さの片鱗は見せていました。暇だから家に遊びに行くというのも、普通に考えたら重い行動でしょう。雪くんは自分が重い感情を向けていることに気がついていますがそれは親友を少しだけ独占したい程度の気持ちです。霞からすればそれは可愛いものでしょう。
最後になりますが本作のテーマは『他者の存在なくして一歩は踏み出せない』ということになります。雪くんも霞も須藤も柊も相手のことを考えて常に動いています。人間は他人に認識されて初めて人間であることが出来ます。つまり他人というものは自分を動かす起爆剤として一番有効なのです。
動けない人は他人のせいにして行動を起こしてみても良いのでは?と思って今作を書きました。
また次回作も楽しんでいただけたら嬉しいです。




