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その後も泉を見て回り、そろそろ帰ろうかという時だった、
いきなり一頭の馬が凄いスピードで突っ込んできた。
そして転げ落ちるように馬から降りた人物を見る。
「レオナルドお兄様?」
二番目の兄、レオナルドだったのだ。
「どうしてここに?」
私の言葉を無視して、レイの元に向かう。
「俺と戦ってもらう」
そう言って、いきなり剣を抜く。
「何を言っているの?レオナルドお兄様!
お兄様と戦ったら、レイが一瞬で吹っ飛ぶわ!」
その言葉にレイが顔を歪める。
「あまり信用されてないようだな」
レオナルドお兄様はレイがリオレイル・アクアマリンで、
王太子と言う事を知らないのかしら、
あまりの暴言に、狼狽えてしまう。
「大事なリリアーナを任せられるか確かめたい、
剣を取れ」
「駄目よ、レイ、
レオナルドお兄様はガーネット王国の騎士でも、
かなり強いの、しかも火魔法まで使えるのよ、
怪我をしてしまうわ!」
レイはふーと息を吹くと、控えていたシリウスに言う。
「剣を」
シリウスは頷き、レイに剣を渡す。
え?戦うの?
どうして?
どう考えても、レイに勝ち目はない、
レオナルドお兄様は幼い頃から剣術の才能があり、
それを努力で更に磨いてきた。
そんな兄に勝てる訳がない。
「アナ様こちらへ」
シリウスが距離をとるよう誘導する。
アンナも何も言わず、防御魔法を展開する。
シリウスとアンナの二重魔法、
それだけでも、この戦いが危険な物である事を語っていた。
「そっちから攻撃してかまわない」
レオナルドお兄様が言う。
「では」
とレイが短く答え、剣を鞘から抜く。
キンと剣が交わる音がして、兄が受け止め、
それを払い兄が剣を振る、
それで終わるはずだった。
兄の剣を受け止められる者はほとんどいないのだから。
しかし、剣戟の音は続く。
激しい剣の応酬。
え?あの兄と戦っている?
互角?
信じられない、レイってこんなに強かったの?
体つきからして全然違うのに、
負けていない事が信じられない。
無駄な動きはなく、まるで舞っているかのように、
剣と剣が交差していく。
はらはらして見ていると、
アンナとシリウスが冷静でいる事に気づき、
私も落ち着きを取り戻した。
正直、どうなっているのか分からない、
一瞬で決着がつくと思っていたのに、予想外の展開だ。
ただ、この2人が冷静でいるという事は、
どちらかが手加減をしているか、余裕があるのだろう。
その証拠に、あんなに激しく打ち合っているのに、
真剣でありながら、両者に傷1つない。
そう思っていると、レイの剣がいきなり速度を増した。
風魔法だ!
剣に魔法を乗せ、速度を上げる。
すると初めて兄が防御に回った。
そして負けじと兄も火魔法を使う。
風と火の応酬。
元々激しい剣戟だったのに、更に圧力が加わる。
防御魔法が展開されているので、
私は立っていられるが、
もし防御魔法がなければ、立つ事さえできないだろう。
いつ終わるか分からない戦は、
兄が隙をみて剣を収めた事で終結する。
「ここまでだ」
鞘で剣を受け止められたレイは素直に剣を引き、
レイの剣も鞘に納める。
「ここまでの使い手がいたとはな」
「こちらも慢心していました、
更に精進する、いい機会になりました」
兄とレイがお互いを称え合う。
結界から出た私は、兄とレイの元へ行く。
「レオナルドお兄様、レイ!怪我はない」
「ないよ」
レイが笑顔で答えてくれて、ほっとする。
「そんなヘマ、俺がする訳ないだろう」
兄が自慢げに答える。
「とにかく、俺はレイを認める」
王族に向かって認めるとは何なのかしら?と思うが、
兄なりの愛情で、
レイが伯爵家3男設定だからこそできる事だと、
無理矢理納得させる。
レイに笑顔を向けられ、どきどきする。
かっこよくて、大事にしてくれて、その上強くて・・
「妹をよろしく、もらってもらってかまわないぜ」
そう軽く言う兄に、レイが答える。
「そう簡単にはもらえません」
その言葉にずきんと胸が痛む。
そう、レイの相手は2巻のヒロイン。
今は現れてないので、私にかまってくれているが、
回復魔法の使い手が現れたら、
魔力だけ強く、魔法の使えない私なんて忘れるはず。
そう、恋したって実る事はない。
この気持ちには蓋をしてしまわないと、
多分そうかな~とか思っているぐらいならまだ間に合うはず。
そう思いながらも、今まで楽しかった思いが、
一気に重いものに変わるのを感じていた。




