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次に向かったのはレース編みの店、
ガーネット王国は放牧が盛んで、
同時に革製品も有名である。
また織物なんかも多く、柄も豊富だ。
しかし、今目にしているようなレースは見ない、
レースはアクアマリン王国特有の文化なのだろう。
小さなコースターや肩掛けを見ていく。
「凄い繊細で綺麗ね」
「本当ですね」
私は髪紐を一本だけ買う事にし、
アンナが代金を払う。
「ねえ、このレースドレスの裾なんかにつけたら、
綺麗だと思わない?」
「ドレスにレースですか?
聞いた事ございませんが、確かに綺麗かもしれませんね」
そんな話をしながら店を見て回る。
ガラス細工の店、
木彫り細工の店、
いろんな店があるが、やはり精密度、
出来栄えの良さはガーネット王国で見た物の方が高い。
公爵家に持ってくる程のものだから、当然なのだが、
爆買いする予定が、思っていた程心が動かず、
あまり何も買えずにいる。
とは言え、見ているだけで楽しいし、
こうゆう下町独特の活気は、
その場にいるだけで気分を高揚させてくれる。
次どの店を見ようかしら・・・
そう思っているといきなり騒ぎが起こった。
「何?」
「確認致します」
アンナが少しだけ距離を取り、確認取る。
騒ぎの原因はすぐ分かったようで、すぐ戻って来た。
「どうやら、この辺りで悪さをしていた盗賊を、
騎士達が追っていて、ここまで来てしまったようです、
とは言っても、相手は専門の騎士、
すぐに取り押さえられるでしょう、
お嬢様は騒ぎに近づかないで下さい」
「分かったわ」
騎士達が器用に店に被害を出さないように、
盗賊団を追い詰め、捕縛していく、
アンナの言った通りだ、この様子なら、
騎士達がすぐ盗賊団を抑えてしまうだろう。
そう思って見ていると、
少し離れた所にいた盗賊が、子供に手を出した所が見えた。
体が無条件に動く。
丁度靴も下町風の踵が高くない靴だ、
あっと言う間に、盗賊の近くに行くと、
手を取り、捻り上げ、足元を崩す。
普通、盗賊と言えば力が強い、
足払いをかけた所でそんな簡単に転ぶワケがない。
しかし、私が相手をした盗賊は、
「いたたた・・・」と声を上げ、簡単に転ぶ。
その様子に、見ていた周りが呆然とする程だった。
「お嬢様!」
アンナが追い付いてくる。
「あら、ごめんなさい、反射的に動いてしまったわ」
盗賊が逃げ出さないよう、手を捻ったまま答える。
それを見ていた騎士が、
申し訳なさそうに私の元に近づいてくる。
「お嬢さん、ありがとう、こいつは引き取るよ」
その言葉に盗賊をどん、と騎士の方に突き飛ばす。
大きな体が不思議なぐらい、
盗賊がよろめいて騎士の前に倒れ込む。
「強いんだな」
「コツがあるのよ」
「ぜひ伝授願いたい所だ」
「うふふふ」
そうして話していると、眼鏡をかけた、
長髪の男性が近づいてきた。
王子、兄達でイケメンは見慣れているハズの私でも、
ついつい見とれてしまう程のハンサムな男性。
ゲームなら絶対攻略対象でしょう!と言いたくなるような、
オーラのある男性だ。
騎士達がほぼ同じ制服を着ているのに、
その男性だけ違う服を着ていて、
騎士の対応から、騎士の指揮官らしき事が分かった。
まだ若いのに・・・
見たところ18か19歳ぐらいだろうか、
その年で指揮官だと、貴族である可能性がある。
そのイケメンが声をかけてきた。
「私はレイ、盗賊の捕縛の協力感謝します」
ああ~外見を裏切らないいい声、
私の好みドストライク!
いやいや恋はいいって思ったばかりでしょう!
ミーハーすぎるって。
そう思いながらも、男性のペースに巻き込まれてしまう。
「お礼がしたいのですが、少しお時間いかがですか?」
イケメンのお誘い!
しかも騎士の司令官となると立場はしっかりしてそうだし、
そう思うも、アンナが首を横に振る。
ハイそうですよね。
「お礼をして頂く程ではございませんわ」
内心、惜しいと思いながらも、
しおらしく答える。
「フリュイデルのタルトなどご馳走しますよ」
その言葉に目が輝く。
果物が有名なアクアマリン王国、
その果物を作った絶品タルト!
しかし、王族、高位貴族など一部のファンにしか作らず、
例え公爵令嬢とはいえ、他国の住民である私は手に入らず、
食べたいとコネを探していた所。
「行きます!」
力強く宣言した私に、アンナが何とか思い止めようとする、
しかし私の意志は固い、
この機会を逃したら、いつになるか!
結局私に弱いアンナはレイの紋章を確認し、
伯爵家の3男である事まで聞き出し、
なんとか了承してくれたのだった。




