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そして待ちに待った、下町へ行く日。
満面の笑顔を浮かべる私に、
周りの人達もどこか嬉しそうににこにこしている。
下町へ行くと行っても、安全第一。
大きな市場があるメインストリートまで馬車で行き、
市場をぐるりと見て帰る。
寄り道はもちろん不可。
時間制限などないが、あまり長くならないように言われている。
流石に1人は駄目で、メイドのアンナと一緒だ。
一番質素な馬車、とはいえ、町で住民が乗っいるのより
十分豪華な馬車で下町へ向かう。
街並みはヨーロッパで、
赤みがかった茶色いレンガが積みあがった、
可愛らしい家が並んでいるのが見える。
そのベランダには花が植えられ、
公爵家の庭や、王宮の庭とはまた違う、
小さな可愛らしい花が並ぶ様は、
ほっこりとした気分にさせてくれる。
メインストリートの馬車の停車場で降り、
アンナと市場の中へと向かっていく。
市場からは威勢のいい掛け声がかけられ、
沢山の人々が様々な物を物色しているのが見られる。
ちらりと野菜を売っているらしい店を見たら、
前世知識とこの国に来て2週間で習得した知識、
それらを合わせてもまだ知らない野菜があるぐらい、
沢山の品々が溢れていた。
「素敵!」
「リーナお嬢様はぐれないで下さいね」
「もう!お嬢様はなし!
今は下町なんだからアナって呼んで」
アナは今日の為に考えておいた偽名だ。
しかし、
「それはできません」
頑なにメイドとしての立場を貫くアンナに、
溜息がもれる。
これじゃ完全にお忍びとは言えないのでは?
そう思いながらも、ここに来れている事自体、
アンナにとってはかなりの妥協なのだろうから、
あまり言わないでおこうと思い直す。
次に果物の店に行く。
「わあ!美味しそう!」
「まあ、お嬢ちゃん、目が高いねえ」
恰幅のよい豪快なおばちゃんが話しかけてくれる。
「丁度これなんか食べごろだよ」
「へえ、どんな味?」
「しゃりしゃりして甘いよ、どうだい」
「そうね、食べてみようかしら」
そう言うと、アンナがさっとお金を払う。
本当は自分でお金を払って買いたかった、
しかし、所詮公爵令嬢。
お金を払わすなんてできません!
と強く言われ、しぶしぶアンナに任せている。
「今食べるかい」
「いいの?」
「取れたて、剥きたてが一番だよ」
「じゃあお願い!」
ここで食べる事に、ぎょっとするアンナを後目に、
大きな手で器用に果物をむくおばちゃんから、
果物を受け取る。
一口、口にいれて。
「わあ!美味しい!」
日本でいうと梨のような食感だろうか、
リリアーナとしても初めて食べる果物だ。
「ねえ、アンナも食べてみて」
「いえ・・・私わ・・・・・」
言いよどむアンナに果物を口元に持って行く、
観念したように、アンナが一口かじり、
「美味しい」
と目を見開いて言う。
「でしょ?」
下町に来て本当に良かった、
そう思いながら次の店に向かった。




