しゅらば
初めての恋愛もの。
わたしは未空瑠衣、高校1年生。
目の前には二人の男子がいる。
一人は、沢崎望、同級生。
私が付き合っていた男子だ。
でも、2ヶ月前に沢崎から別れてほしいと言われ、別れた。
本当は別れたくなんてなかったけど、あの手この手で言い包められてしまった。
私は沢崎が心の底から好きだった。
悲しかったから死ぬほど泣いて、ていうか自殺を考えることもあった。
そして、もう一人。
一歳年上の、池永隼。
彼は私を理解してくれて、愛してくれる。
沢崎を忘れるために付き合ったけれど、彼のことを沢崎以上に好きになることはできなくて、だから別れてもらった。
隼は、そんな私に怒ることなどせず、許してくれた。
それで、私たち3人が何をしているのかと言うと。
ここは放送室で、鍵は閉まっていて、蛍光灯は仕事をしていない。
でも美味しい展開ではないのは、わかっていることだろうけど。
私は椅子に座り、二人は私の前に立ち、睨みあっている。
理由は簡単。
隼が沢崎を殴ったから。
何故、隼が沢崎を殴ったのか。
私が沢崎に振られて、私はそのことを先輩として親しかった隼に告げた。
「未空はどうしたい?」
「そりゃ、ヨリ戻したいよ・・・」
「だよなぁ。」
そして私は沢崎とヨリを戻すために、手紙を出し、メールをし、電話をかけたが、全て無視を食らった。
私は精神的に追い詰められ、自殺を考えるようになった。
「もう、死にたいよ・・・」
「そんなこと言うな。お前が死んだらみんな悲しむ。」
「わかってるけど・・・でも、もう辛いんだよ・・・」
「未空、・・・」
泣きだしてしまった私を、隼は抱きしめた。
「え、せんぱ、」
「俺じゃ駄目?」
「え、え?」
「俺じゃ沢崎の代わりにはなれない?」
「・・・わからないよ」
「お前が好き。沢崎を忘れるためにでもいいから、付き合ってくれ」
「・・・・・ありがとう。」
そうして、私と隼は付き合うことになった。
でも。
私の脳裏にはいつも沢崎がチラついて、離れなかった。
彼は愛してくれたけど、私は彼を沢崎以上に愛せなかった。
申し訳なくて、別れて、と告げた。
私は昨日、私の思いを沢崎に伝えることに決めた。
沢崎を放送室に呼び出す。
その役を隼が買って出てくれた。
「やっぱり、沢崎が好き。忘れられない。
昔みたいに、一緒にいたい・・・」
「はぁ?そんなの無理に決まってんだろ。俺新しい彼女いるし
図に乗ってんじゃねーよブス、お前なんか遊びだっつの」
心に突き刺さる言葉だった。
沢崎が言い捨てた瞬間、隼は沢崎を殴っていた。
「ふざけんなよ、お前!!」
そして、今。
つまりは修羅場である。
うーわー、どーしよーというのが私の本音ではあるのだけれど、そんなことを言える空気ではない。
未だ二人の睨みあいは続いていて、私が口を出せるような空気ではない。
しかしその状況は、隼の手によって変えられる。
「お前のせいで、どれだけ瑠衣が傷ついたと思ってんだよ!!」
「・・・」
隼が叫んでも、沢崎は微動だにせず、隼を睨みつけている。
「・・・もう、いいよ」
二人の視線が私に集まる。
「もう、いい。」
「瑠衣!」
私は、放送室を飛び出してしまった。
続く