第2話:この恐ろしい病院から脱走を
第2話:この恐ろしい病院から脱走を
病院のベッドで佐藤真は考える
異世界転生したのもわかったしチート能力で女の子になった事も理解した……しかし……
なぜ俺は病院にいる?
よくある異世界転生ものだと転生前にトラックに跳ねられても転生後は無傷で森や高原にいる……オヤクソクというやつだ。
実際、トラックに跳ねられたはずの体に怪我らしきものは見当たらない……
所々覚えがない縫い跡はあるが、既に完治しているような感じだ。
あんな事故の怪我が数日程度で治るはずがない。きっと転生による奇跡で治っているんだろう。
じゃあ、なんのために……ここにいる?
突如現れた異世界人を調査し研究するためか……
その考えに至った瞬間また耳鳴りがした
すると病室の外から看護師らしい女性の声が聞こえてきた。
「305号室の佐藤さんもう長くないですって」
「あー佐藤さんね、お気の毒ね……まだお若いのに……」
もう長くない?!お気の毒?!
もう十分調べたから用済みで消されるってことか……やっぱり現実の世界に似てるけど異世界……このままじゃ殺される!
真は決意した
ここから逃げ出そう
そう思い備え付けの棚の戸を開ける
そこには転生前に来ていたスーツがあった
スーツのジャケットはボロボロだったが、シャツとスラックスは平気なようだ
逃げ出す時の服は何とかなりそうだ。ちゃんとした服は脱出後に考えよう
そう考えなら別の棚の戸を開けた。
そこには自分の通勤用カバンがあった。
あ、財布は……あった。
中には現金とカード類、あと前の会社に出しそびれた領収書が数枚。
お金はとりあえずあるか……いやまてよ。
この世界は自分の知ってる世界に似てるが、通貨や価値も一緒なのか?
これはこの病室内では調べようがないから脱出後か……
そう思いカバンにしまった。
あ、俺のスマホだ
カバンの奥に以前から使っていたスマートフォンだったものがあった。
それは無惨にも壊れ果てておりかろうじて元の形を保つだけのものだった。
これは使えそうもないな……ま、どうせ異世界だし使えない可能性の方が高いか。
とりあえず実行は今夜、人気がないタイミングを見計らって逃げ出そう。
数時間後
すっかり夜も深くなり外から気配が完全に無くなった
よし、そろそろ……
そう思いベッドから立ち上がるとそのまま床へ崩れ落ちた。
あれ?上手く体が支えられない?
ベッドの上ではダルい程度に考えてたが、想像以上だった
きっと、女性化した時に筋肉が落ちたのか……それか異世界転生の後遺症みたいなものか……
もしかしたら自分が知ってる世界より重力が重い可能性だってある。
なんたって異世界転生したのだから
自分の常識が通用しないなんて異世界転生モノあるあるじゃないか
そう思い、手段を考えていると
あ、チート能力!
女性化の代償まで受けているんだチート能力があるのも当然だろう
しかしどのようなチート能力でどういう風に使えばいいものか……
「……ステータスオープン」
しゃがれた声で呟いてみたが何も起きない
そういうのがないパターンかもしれない
次は強く念じてみる
もしかしたら身体強化魔法とかあるかもしれない
そう思い強く念じたまま立ち上がる
すると今までに感じたことの無い大きな耳鳴りが起きたその瞬間
立てた……
そのまま歩く……行けそうだ!チート能力《身体強化》
気を張ったまま入院用のガウンを脱ぎスーツを着る
よし行くぞ
そのまま通勤用カバンを持ち病室のドアを出た。
そのまま周りを警戒しながら廊下を進む
女性化の影響かブカブカになったスーツが絡まるようにまとわりつく。
夜間用の出入口まで来た。
夜間用受付に明かりが付いている。
どうしよう……出るには受付の前を絶対通ることになる……そうだ!チート能力!
姿を消すような……《インビジブル》!
その瞬間強い耳鳴りがなった。
上手くいったのか?自分で見てもよく分からないが……
なるようになれと出入り口を堂々と歩いて出た。
途中受付の人がこちらを見た気がしたが特に何も反応はなかった。……《インビジブル》成功だ。
そうして真は病院の外へ脱出する事に成功したのだった。
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とある看護師の会話
「305号室の佐藤さんもう長くないですって」
「あー佐藤さんね、お気の毒ね……まだお若いのに……」
「佐藤さん?ああ佐藤よしこさんですね……今おいくつでしたっけ?」
「確か50になったばかりって言ってたわ。」
「せっかく315号室の佐藤さんは奇跡の回復を見せたのに」
「佐藤真さんね〜こっちの病院に来たばかりの頃は90kgくらいの体重だったのが、今では45kgですって。」
「そんなにあったんですか?!すごい!」
「ずっと点滴だけで3年だからねぇ」
「3年で体重が半分に……意識不明ダイエットですね」
「こーら、滅多なこと言わないの。」