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5.既に会っている

「申し訳ございませぇん。貴族は入会出来ない決まりでしてぇ」

「貴族じゃないので大丈夫です」

「……えぇ?」

「えっ?」


 冒険者ギルドの職員が理解出来ないとばかりに首を傾げ、さらにその反応にノアが首を傾げる。

 その状態で両者見つめ合うこと数秒。


「…………嘘を吐いてもぉ、調べるのでバレますよぉ?」

「嘘じゃないので大丈夫ですよ。心配してくださってありがとうございます」

「えぇ?」

「え?」


 冒険者ギルドの職員が理解出来ないとばかりに以下略。

 そんな2人を側で眺めていたグランは想定した通りのやり取りに頷いた。混乱しているだろう職員に同情を覚えつつ口を挟む。


「このやり取りは無駄でしかないのでさっさと入会しましょう」

「そうですね。疑惑を晴らすには徹底的に調べて貰うしかないですし」

「…………分かりましたぁ」


 もういいやという投げやりな目をした職員が入会書をカウンターの下から取り出した。


「此方に名前と出身地をお書き下さぁい。書けない場合は推薦者サインが必要になりますぅ」

「グラン、お願いしても良いですか?」

「はい」


 ノアからペンを渡された。

 ノアが貴族だという証拠はどれだけ詳細に調べようが出て来ようがないためグランが推薦者になったとして、何にも不利益は発生しない。

 素直にサインしようとして、職員に止められた。


「推薦したのにその方が貴族だと発覚した場合ぃ、推薦者の方はランクが一つ下がってしまいますよぉ」


 知っている。グランは頷いた。


「本当に良いんですかぁ?」


 気持ちは分かる。グランはもう一度頷いた。今度こそサインをし、紙を差し出す。


「承りましたぁ」


 職員はカウンターに置いてある機械に何かを打ち込んだ。そしてその機械とつながっている魔法陣に金属のプレートを置いた。


「ではぁ、次はギルドタグと魔力の紐付けを行いますぅ。魔力をこの魔法陣にプレートが光るまで込めてくださぁい。出来ない場合はぁ、血を垂らすことになりますぅ」

「魔力は使えるので大丈夫です」


 ノアは言われるがままに魔法陣に魔力を流す。すると直ぐに光った。魔力微々たる人も含め万人に対応しようとしたら当然なのだが、そんなに魔力が少なく済む仕組みではないはずなので、機械の方に魔力を貯めておける仕組みがあるのだろう。

 プレートの発光が収まり、見るとそこには先程まで何も刻まれていなかったプレートに文字が刻まれている。



Name,Noah

Rank,F

Affiliation,capital of Venu



「凄い」

「私も最初見た時は驚きましたぁ」

「プレートの文字に魔力を含ませる事で、違う魔力を持つ人が触れると文字が消える仕組みなんですね」


 何故分かる。職員のにこやかな笑顔が消え真顔になった。


「………………。えっとぉ、これからギルドの仕組みについて説明しますねぇ」


 何も聞かなかったことにした職員は気を取り直し、笑顔を作った。


「最初はお試し期間としてFランクからスタートしましてぇ、Sランクまでありますぅ。Fランクは依頼を10達成したらランクがあがりますぅ。EからBランクまでは職員の判断であがりますがぁ、Aランクはギルド長1人の判断、Sランクは最低でも3人のギルド長の判断になりますぅ。そして依頼にもランクがありましてぇ、自身のランクの2つ上までしか受けられませぇん」

「Fランクでもですか?」

「変わりませんよぉ。ですがぁ、どのランクでも2つ上のランクの依頼を受けることは推奨していませぇん。全て自己責任ですぅ」

「なるほど。実力とランクが乖離している間の救済措置なんですね」


 冒険者がそこまで考えるはずがない。そして一般人もそこまで気づかない。絶対にこの人貴族でしょ。そう思いながら、また職員は真顔になった。


「………………。えっとぉ、次は依頼未達成の場合について説明しますねぇ。依頼未達成の場合はぁ、その旨がギルドタグに記載されますぅ。余りに多いとランクアップに響いてくるので注意してくぁさぁい。基本的に依頼未達成となるとぉ、その依頼の報酬金額半額を罰として徴収しますぅ。そしてぇ、2月以上依頼を達成しなかった場合ぃ冒険者ギルド員から名前が消えますぅ。以上ですねぇ」

「ありがとうございます」


 今日は依頼を受けるつもりはなかったのでそのまま玄関へと向かう。

 扉に手を掛けよと持ち上げた腕をグランに取られ、体ごと引かれる。すると扉が開いた。


「ありがとうございます」

「……」


 ノアはグランを見上げて礼を言う。しかしグランの目は前を鋭く見据えていた。


「あっれー? ニーサンじゃん。誰かといるなんて珍しいね?」

「……」

「無視? 無視? まあいいけど」


 軽い口調でグランに話しかける青年は赤い瞳に白髪という配色を持ち、独特な雰囲気を纏っていた。

 青年は掛けていた青いサングラスを上にずらし、にへらと笑いながらノアに視線をやる。


「どーもこんにちは」

「こんにちは」

「アンタ見ない顔だね、此処初めて?」

「実は、先程冒険者になったばかりなんです」

「へーえ。余計に珍しいね」

「そうなんですか?」

「うん。あ、俺、ニーサンとは昔馴染みなんだ。よろしくね」


 そう言って差し出された手を握り、握手をした。瞬間、肌に少しピリリとした感触が走る。直様グランの手刀が青年の手首に直撃し離れたためあまりしっかりと感じはしなかったが。


「いってぇ」


 青年が手をプラプラと揺らし、グランを見る。しかしグランはノアを見ていた。


「昔馴染みでも何でもありません」

「じゃあ何ですか?」

「只の同僚です」

「それは……そうですよね」

「ひっでぇ扱い」

「十分です」


 青年はケラケラと笑う。


「まあいいや。また会うだろうし。またねー」

「はい、また」


 ギルドを出て、少し離れた所にて。


「昼間に外に出るなんて、凄いですね、彼」

「何がですか」

「普通だと肌が爛れてしまうでしょう?」

「爛れませんが」

「僕達は、ですね。でも彼はアルビノなので、大変だと思いますよ」

「アルビノ?」

「あれ、知りません?」


 首を縦に振られる。


「身体に色を持たない人達の事をアルビノって言うんです。そして、その方達は太陽等の光に極端に弱くて、日中にただ外に居るだけで皮膚が損傷します」

「……確かに、基本ヤツは夜に外に出掛け、朝1番にギルドで依頼達成手続きをしています」


 でも今は昼だがという疑問の目を向けられ、ノアは苦笑した。


「そこで、彼は凄いという話に繋がります」

「ヤツが?」


 鼻で笑われた。


「ああして太陽の下、長袖にサングラスだけで済んでいるのは、彼が己の魔力で皮膚を覆って光から防御しているからなんなすよ、多分」

「そうなんですか?」


 まだ疑わしい目を向けられている。


「多分ですよ、多分。さっき握手した時、少し手がピリリとして。あれ、高濃度の魔力に当てられた時と同じ感覚だったんですよね」

「へえ」

「もうちょっと興味持ってください」


 グランに心底どうでも良いという声音で返され、ノアはしょげた。




 軽薄な子が主人公にだけ振り回されていたり、甘えてきたりするのが好きです。ついでにサングラス。

 これが性癖の人は続きもどうぞよろしくお願いします。

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