表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

13.貴方のような人を待っていた

 キリが良くないんですけど投稿させてください……。

 部活(23日にコンサート)とバイト(研修中、しかも初バイト)と課題(人間失格の魅力についてA 3にまとめよ)のトリプルコンボと、今シャンフロにハマっていて……。服屋編と小話を終えたらダンジョン行きます! 書きます!

「試着室借りても良いですか?」

「勿論でございます」


 仕上げた鞄に肩掛けストラップまで付け終え、表へと戻ってすぐにそう声を掛けたれたデザイナーは、特に何も考えずにそう言った。だって、服屋の店員で「試着室借りても良いですか?」と尋ねられ、空いていない以外の理由で「駄目です」と答える者なんていないだろう。


 デザイナーはそのまま深く考えずに、というかそれよりも、グランと2人きりになってしまった状況の方に焦っていた。

 顔と骨格が見えていればその人にあった服のセールスをすれば良いが、その点グランは何も分からない。ローブしか見えない。


(ローブで攻める……?)


 しかし、グランが被っているローブはとても素材が良く、しかも丁寧に扱っている事から新しいローブは勧めても買い替えない可能性が高い。


(ならオプションか……)


 それならば、無限収納付きの鞄を持ち込む際に、ローブに刺繍を追加しないかと言おうか。別に充分な利益を上げているので新規顧客を無理して増やす必要はないのだが、デザイナーの感がこの2人と繋がりを持っておけと訴えているのだ。


「お客様、次のご来店時にそのお着になっているローブに刺繍を施すのは如何でしょうか」

「刺繍」

「はい。そのローブ、とても良い素材をお使いですし、長く着ていらっしゃる事も分かります。なので、刺繍を施す事でさらに大切な一品にするのは如何でしょう」

「………………考えておきます」

「ありがとうございます」


 そこで会話は終了。デザイナーがノアの話で会話を繋ごうとしても、グランが1人の世界に入ってしまった為、話し掛ける事すら出来ずにデザイナーにとって気まずい沈黙が降りる。勿論、グランは話し掛けたそうにしているデザイナーに気付いていて無視をしていた。


「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

(美人なお客様早く出てきて……!)


 独特な強者の雰囲気を纏うグランと2人きり、厳密に言うと試着室にはノアがいるので違うのだが、沈黙がデザイナーには凄くプレッシャーだった。


「………………」

「………………」

「………………」

「………………」


 シャッと試着室のカーテンが開けられ、沈黙の終わりが来た。


「グラン、どうです? 似合いますか?」


 デザイナーは軽い足取りで此方へと歩いて来たノアを見て、雷に打たれたかのような衝撃を受ける。

 シンプルなコルセット風スカートに、レース刺繍のブラウス。それらはノアの骨格を綺麗にカバーし、見ていて違和感のない、中性的な要望と声も相まって男性だと知らなければ女性だと思うだろう格好となっていた。


(私が求めていたモノ……!)


 ノアはグランに似合うかと問いかけてはいるが、似合わないとは微塵も思っていないのだろう。その自信に満ち溢れた佇まいにも感銘を受けるデザイナー。


 グランはというと。

 何を試着しようとしているのかは知っていたためそこまでの衝撃はなかったが、自分の想像よりも似合っていたため、また実際に目にした事で驚き、反応が遅れた。


「似合ってます」

「とてもお似合いです!」


 被った。

 おお、とノアは目を瞬き、そして微笑んだ。


「ありがとうございます」


 そのありのままの様子に、デザイナーの目は静かに大洪水を起こしていた。端的に言うと、泣いていた。それも大号泣。

 ノアは肩を揺らすほど驚き動揺したし、グランは引いてデザイナーから1歩どころか3歩離れた。


「どうしました?」

「大丈夫でずゔぅ気にしないでぐだざいぃ」

「大丈夫ではないですね……?」


 気にしないなんて無理だという言葉は飲み込んだ。


「気にしないなんて無理でしょう」


 ノアは飲み込んだのに、グランが遠慮なく言ってしまった。


「ですよね。申し訳ございません。少々お待ちください」


 掌をノア達へと向け、そう言ったデザイナーがもう片方の手で目元を覆った瞬間、店の扉が勢い良く開けられる。


「おししょー! 買って来ましたぁー!!」


 ノアと乱入者の視線が合った。


「はうぅ!」


 乱入者は奇声を上げ、胸を押さえよろめいた。その様を呆然と眺めるノアと、引いた目で見るグラン。


「な、なんて美しい人なんだ!! お姉さん! 好きです! 結婚を前提に付き合ってください!!」

「ごめんなさい。僕、男なんです」

「え……!?」


 衝撃を受けたように口も目も限界まで開いた乱入者が、弱々しく首を横に振りよろめいた。信じられないようだ。


「信じられないんなら見ます?」

「「駄目です」」


 乱入者が言葉を紡ぐ前に、即、デザイナーとグランが割り入った。此方は乱入者と違い力強く首を横に振る。


「ほ、本当に、男……!?」


 3人同時に頷いた。


「そ、そんなぁ……」


 乱入者は遂に膝を付き、項垂れる。


「えーと、すみません……?」

「お客様、謝る必要はございません。この不肖の弟子は一ヶ月に一度は恋をしておりまして、直ぐに立て直りますので」

「ああ。恋に恋するお年頃、というものですね」

「とんだ茶番ですね」


 2つの冷たい視線と1つの微笑ましい子供を眺める視線に泣き真似をして見せるデザイナーの弟子に、デザイナーが追い討ちを掛ける。


「扉は丁寧に、静かに開けなさい。お客様の前だと何度も言っているでしょう。そろそろ弟子辞めさせるわよ」


 弟子は泣き真似ではなく本気で泣き出した。


「えぇ!? おししょ、捨てないでぇ」


 デザイナーは頭を抑える。泣きたいのはこっちだ。


「お客様の前なのよ。シャンとしなさい」


 重ね重ね見苦しいものをお見せしてしまった謝罪だと会計を半額にしてもらい、被害を被った訳ではないし得をしたとノアとグランが店を後にしようとした時、新たに客が入って来た。



 綺麗なお姉さんは好きですか? ちょっと天然なお姉さんは好きですか? ほのほのと微笑んで見守る、慈愛の目をしたお姉さんは好きですか? 若しくはお兄さん。

 合うなぁという人は続きもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ