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君とコーヒー

作者: 小鳥遊紡

はじめまして。初めて投稿してみました。

よかったら読んでくださると嬉しいです。

短編となっています。

今日は月が綺麗だ。


片手にコーヒーを持ってベランダに出た。




「今日は寒いね。」




コーヒーから出る白い湯気がゆらゆらと揺れた。




「寒くない?」




そう言いながら手に取るのはブランケット。


君によく似合う色の、暖かいブランケットだった。




「コーヒー、苦いの苦手だっけ?」




ちょっとだけ苦笑する僕。






「ちょっと待ってて。砂糖とミルク取ってくるね。」






そう言って、君のコーヒーの湯気がゆらゆらと揺れた。


砂糖は多めに、ミルクは美味しいものを。





「ただいま。」





ベランダの扉を開けては、すぐに君のコーヒーに砂糖とミルクをいれた。


湯気が少しだけ薄れた。


僕のコーヒーもだんだん冷めてきている。


この、時間が、もうすぐ終わる。






「ん。まだ、ここにいてよ。」







コーヒーから出る湯気は、もう少しで消えそうだ。






「この時間好きなんだよ。ずっと前から。」


『私もよ。』




消えそうな声で返事が聞こえた。


それと同時にコーヒーの湯気が消えた。


彼女の声に顔を上げても、誰もいない。






もう、遠い昔にいなくなっている。





『私ね、ベランダでコーヒー飲むのが趣味なの。』


『月が綺麗な日に飲むんだぁ。まぁ、毎日飲むんだけどね!』


『このブランケットが好きで、くるまってる。』


『湯気が消えたら中に入るの。寒くなっちゃうから!』


『これから毎日、付き合ってくれる?』


「当たり前だよ。」





そんな話をした日が懐かしい。





『コーヒー、飲めなくなっちゃったねぇ。』


「ここにベランダないもんね。」





ピッピッと響く電子音。


彼女は息をするのも辛そうで、沢山の管が体に繋がっていた。





『ねぇ…忘れ…ないでね。』


「なにいってるの。忘れるわけないだろ?」


『ずっと、そばに…居るからね。コーヒー、…飲みに…行くからね。』


「毎日飲むよ。あのベランダでさ。」


『約束、だよ。』


「うん。約束。」






安心したのか、嬉しそうに笑顔を浮かべて、するりと手を落とした。


電子音は一定のリズムから長いピーという音に。


それからは泣き崩れた記憶しかない。






君がいなくなってから1ヶ月。







1人でベランダでコーヒーを飲んだ。


君の分も用意して。





「今日は月が綺麗だね。」


『ふふっ、そうね。』





彼女の声がした。


驚いてコーヒーを落としそうになったのは秘密。


声が聞こえても誰もいなくて、ただただ不思議な空気が漂う。





「1ヶ月、飲まなくてごめん。」


『ほんとよ。待ってたのに。』





返事がまた返ってきた。


また涙を流してしまった。


止まらなくて、溢れて、下へと落ちていく。


泣き止む頃にはコーヒーの湯気が消えかかっていた。





『そろそろ時間だわ。またね。』


「待って!行かないで。」


『コーヒーの湯気が出ている時間だけ、私はあなたに会えるわ。』





その言葉を最後に、スっと消えてしまった。


コーヒーから湯気は消えていた。






「ははっ、毎日飲むかー!」


それから俺は毎日コーヒーを飲んでいる。



だって、







「君に会いたいからね。」

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