『それは融ける程暑い日の事』
――――それは嫌味な程、酷く暑い真昼の事だった。
部屋の中は真夏特有の嫌味ったらしい日差しが窓から差し込んでいた。
外の様子はコンクリートの地面は焼かれた鉄板のように熱くなっており、少し離れた木の上からは蝉の鳴き声が聞こえてくる。
しかも昨日の夜、雨が降った為か日光で蒸発した雨が空気中に満ちている。
熱い、うるさい、ジメジメのトリプルコンボ。正直言ってやっていられない。
そんな日に――――自分の意識は目の前の部屋に釘付けになっていた。
――――落ち着け、落ち着け。
その部屋の周辺は不気味な程に静まり返っていた。
先程まではその周辺からは銃弾が飛び交い、爆発音が轟いていたというのに、今は噓のように静まり返っている。
震える手を抑える為、落ち着け、落ち着けと、自分の体に言い聞かせるようにそう何度も心の中で復唱する。
効果のほどは分からないが、何もしないよりかはマシだろう。そう自分の中で結論付け、さらに前へ進んでいき、周囲を警戒しつつ、開けきられている扉から部屋の中へと足を運ぶ。
部屋の中は静寂に包まれており、自分の足音と水滴が垂れる音以外は何も聞こえない。
『オーケー、周りは大丈夫...』
耳元につけたデバイスから聞こえてくる声の主から、周辺の安全が取れたとの情報が伝わってきた。
実際、完全に安全かどうかは分からないが、そこは信じるしかない。興奮して周りの状況が分からない自分より、その言葉の方が何倍も信頼出来る事は確かだろう。
銃を構えて、狙いを定める。ベッドの下や本棚の裏など、隠れているかもしれない方向へ狙いを定めて、いつ出てきても対応出来るように、人差し指をトリガーに携える。
一歩、一歩ずつさらに進んでいく。進む度に手の震えが大きくなっていく。
――――冷静に、沈着に。
埃と塵が舞う部屋に、銃を構えている自分。水滴の音と自分の足音のみが部屋に響いていく。
一見、自分以外この部屋にはいなさそうだが―――必ず敵は、この部屋のどこかに潜んでいる。
先程までこの部屋から銃声が聞こえてきたのだ、自分がそれに気づいて駆けつけるまでの時間は不明だが、別の部屋に移動する時間などはなかった筈。
そもそも、銃声の音が止んでから移動する音など聞こえてなかった。ならばこの部屋にいるのが道理。
そう考えながら、部屋の最奥部まで辿り着くが、敵影の一つも見つからない。
逃げたのかと一瞬思案したが―――いや、そんな筈はない。
この部屋には窓だってないし、扉もさっき入ってきた場所以外には無かった筈。
音も、先程まではこの部屋から銃声と爆発音が響いていた筈。移動する時間などなかったし、足音すら聞こえてこなかった。
ならば、何処に―――――――――
『ドアの方っ――――!」
声が聞こえてから瞬時に扉の方向へと身体を向けようとするが、時すでに遅し。
気付いた瞬間、扉の向こう側から轟音が鳴り響き、飛んできた弾丸が自分の足や腕、胴体を貫いていった。
機能を維持できなくなった腕から銃が流れ落ちていき、足は自分の肉体を支える事が出来なくなり、重力に従ってその肉体は、先程まで立っていた地面へと落ちていく。
――――一体、何処から。
一体、どうやって移動したというのだ。移動する音を聞き逃していたのか、それとも元からこの部屋にいて、自分が気付いていなかったのか。
いや、そうか、最初から―――
最後に気付くが、もはや全てが遅かった。目の前が暗くなっていき、全ての音が遠のいて行く。
意識が闇に落ちていく中、最後に見えた光景は、先程撃ったであろう敵が、自分の身体を漁っている光景だった―――――
――――そして画面には、Game Overの文字がでかでかと表示された。