本当に大切なもの
ある寒い日の朝、弟が私の大切なぬいぐるみを壊してしまった。
両親は、“許してあげなさい“というけれど、私は許せなくって泣きじゃくる弟に背を向けた。
まるで私が悪者みたいだ。
私は、つらくなって、家を飛び出していた。
弟ができて、私は“お姉ちゃん“になった。
やりたいことや甘えたいことなんて、全部“我慢“そんな日々のスタートだった。
だから、“お姉ちゃん“になるまえのぬいぐるみを壊されたとき我慢してた“何か“が溢れてしまった。
気がつくと、小さな神社についていた。
なぜか神社のなかは、開いていてちょうど雪も激しくなったのでなかにはいった。
そして私はいつの間にか眠ってしまった。
-ねえ、なんでないているの?-
気がつくと目の前には白い髪と瞳の着物を着た少女がいた。
「えっと、かってにあがってごめんなさい。雪がやむまで、ここで休ませてもらえませんか?」
-いいよ、ちょうど話し相手がほしかったから-
少女は、私に暖かい食べ物や飲み物を出してくれた。
それからあたりさわりがないおしゃべりを楽しんだ。ふと家族の話になり私は、朝の出来事を少女に話していた。
-そっか、お姉ちゃんって大変だもんね-
「うん、何でもガマンガマンでつかれちゃって……」
-そっか-
「どうしたらいいんだろう?」
-どうしたら………そうだ、ねえ、その気持ち伝えたことある?お母さんやお父さん、弟に-
「うーん、ない……かな?……」
-なら伝えてみようよ、言わないと伝わらないこともあるし-
「でも、うまく伝えられるかな?」
-私の勇気がでる宝物をプレゼントしたあげる-
そういうと少女は白い雪のようなプレスレットを私の腕につけてくれた。
-私も応援してるから頑張って-
「うん。わかった!」
それから、少女といろんな話をしているうちになぜか眠くなり、気がつけば眠ってしまった。
「うーん」
気がつくと、そこは知らない部屋だった。
「気がついたか!心配したぞ!三日も見つからなかったんだ。」
「もう、会えないんじゃないかって…」
「おねえちゃーん、うぇーん、よかったー」
お父さん、お母さん、弟も私が起きたのを見て号泣していた。
落ち着いて話を聞いてみると、三日間どこを探しても私が見つからず、もうだめだと思った時、森の入り口に倒れていた私を村の人が見つけてくれたらしい。
私は、ふと腕をみるとそこにはブレスレットがちゃんとあった。
-あれは夢じゃない…-
少女の言葉をふと思い出した。
-なら伝えてみようよ、言わないと伝わらないこともあるし-
-私も応援してるから頑張って-
私は、ギュッとブレスレットをさわりながら、
「ねぇ、じつはきいてほしいことがあるんだ。あのね……」
言葉を一生懸命紡いで、自分の我慢していた今までの気持ちを伝えた。途中涙が溢れそうになったけど、少女が応援してくれてるようで最後まで頑張ることができた。
-がんばったね-
ふと、少女の声が聞こえたような気がした。
腕をみるとそこにはもうブレスレットはなかった。
そのあとは、お父さんもお母さんも“お姉ちゃんだから“とあんまり言わなくなった。時々甘えたくなると受け止めてくれるようになった。
あの日から何日かした後に、祖母から、困っているこどもを助けてくれる神様がこの村にまつられてることをおしえてもらった。
「ありがとう、私に気持ちを伝える勇気をくれて」
-どういたしまして-
どこからか優しい風が私のほほを撫でた。
おしまい