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第八話


 ギルドの中には先ほどユウマが視線で追いかけていた集団の姿もある。


 見た目以上に建物の中は広く、広々としたホールにいくつかのテーブルと椅子が設置されている。

 その先に受付カウンターがあり、冒険者たちが依頼を受けたり、依頼達成の報告を行っていた。


 入って左手のほうには大きな掲示板があり、そこにはいくつもの紙が貼られていた。


「ふむ、なるほど……。あそこで依頼を探して、それを手に取って受付に持っていく。依頼を達成して戻ってきたらカウンターで報告。この流れか」

 ユウマが物語で読んだものの中にもこういったギルドは存在しており、基本的なルールはそれと大きく変わらないことが予想できた。


「登録も、受付でいいのかな……?」

「はい、大丈夫です!」

 ユウマの何気ない呟きへの返答。その声がすぐ近くから聞こえたためユウマは慌てて振り返った。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。冒険者登録をご希望でしたら、ご案内します!」

 笑顔の彼女は狐の獣人であるらしく、きつね色の耳に尻尾が見える。眼鏡をかけており、人を惹きつけるような明るい笑顔は、他の冒険者の目もひいておりチラチラと彼女を見ている者もいた。


「それじゃあ、お願いしようかな。もし手間じゃなければ、冒険者や冒険者ギルドについて色々教えてくれると助かるんだけど……」

「わかりました、お任せ下さい!」

 教えて欲しいというユウマの言葉を聞いた彼女は、ぱあっと華やかな笑顔を浮かべて返事をする。


 冒険者ギルドを訪れる者の中には、仕事の内容を知っており説明なんていらないから、さっさと手続きをしろと強引に話を推し進めようとする手合いもいる。


 そこまでいかなくても、やはり登録を急ぎたい者は少なくない。


「さあさあ、こちらへどうぞ!」

 実のところ説明好きの彼女は、説明させてくれるというユウマの手を引いて受付へと移動していく。


 ユウマを受付前まで連れていくと、彼女はジャンプしてカウンターを飛び越えてユウマと向かいあう。


「私は当ギルドの受付嬢をしています。ミリシアと申します。それで何から話しましょうか?」

 カウンターを飛び越えるというとんでもない行動に、他の受付嬢や冒険者たちは目を丸くしているが、ユウマはこういう人もいるのだろうと納得することにしていた。


「それじゃあ、冒険者の主な仕事の話から頼むよ」

「任せて下さい! 冒険者とは……」

 ミリシアは嬉々としてユウマの質問に答えていく。


 冒険者の仕事。


・魔物の討伐

・魔物の素材集め

・素材の採集

・問題の解決

・荷物運び

・護衛

・上記は代表的なもので、それ以外にも様々な依頼がギルドに舞い込んでくる

・素材の買取をギルドで行っているので、持ち込み歓迎


「なるほど、いわゆる便利屋ってことか。で、メインとなるのは魔物関連、と」

「そうですね、魔物との戦いは危険が多いので報酬も自然と多くなります。よって、それらの依頼を選ぶ方が多いです。護衛依頼も貴族や商人が依頼主の場合が多いため報酬が多いです、ですが……」

「なるほど、ただ自分たちが魔物を狩るだけの依頼と、誰かを守りながら戦う依頼とでは難易度が格段に違うわけだ」

「そのとおりです!」


 打てば響く、言葉に対して理解力の高いユウマに対してミリシアは興奮していた。


「そのため必然的に護衛依頼は報酬も多くなります。依頼主を守るという形ゆえに、依頼主とのコミュニケーション能力も求められるのです!」

 自分のことだけしか考えない冒険者では依頼達成は困難である。そうミリシアは語っていた。


「なるほど……冒険者と依頼の内容についてはわかった。次はギルドのシステムについて聞かせてもらえるか?」

「もちろんです! 冒険者ギルドはですね……」


 冒険者ギルドについて。


・登録料を払うことで誰でも登録可能

・冒険者ギルドカードは身分証としても使うことができる

・基本的にFランクから始まり、Sランクまでの七段階にランクわけされる

・ランクは依頼達成の実績を重ねることで上げることができる

・ランクが上がると、素材の買取価格も一定額割増しになる

・ギルドと提携している宿の宿泊費がランクに応じて割引される

・ランクによって受けられる依頼が変わる(高額報酬依頼はランクが高い)


「といったところでしょうか」

 ひと通りの説明を終えたミリシアは満足そうな笑顔を見せている。


「なるほど、説明助かった。それじゃあ、早速登録を頼む。これが登録料だ」

 ユウマは収納空間から銀貨を五枚取り出してカウンターに並べる。


「承知しました。それでは、まずはこの書類に記入をお願いします!」

「わかった」

 書類にあるのは名前の欄と特技の記入欄。ユウマは名前だけ書いて、特技は空欄。ミリシアは一瞬驚くが、ニコリと笑うと手続きを進めていく。


 魔道具による名前と特技の入力。


「それでは、このカードに魔力を流して下さい」

「えっと……これでいいかな?」

 渡されたカードに魔力を込めるようイメージすると、一瞬だけ輝く。


「はい、カードはそのままお持ち下さい。それでは……冒険者ギルドへの登録ありがとうございます。あなたの冒険者生活に幸あらんことを」

 これは定型文なのか、深呼吸をしてからミリシアがユウマに声をかける。


「ありがとう。早速依頼を見てみるか」

 ユウマは掲示板の前まで移動して、貼られている依頼を確認していくことにする。


(戦闘はゴブリンとのアレしか経験がないからなあ。まずは荷物運びと薬草集めでもやってみるか)


 そう考えてユウマは引っ越しの手伝いと薬草集めの依頼用紙を剥がしていく。

 生活の基盤を作っていくための就職。


 地球ではコンビニのバイトをしようかとは思っていたものの、結局機会に恵まれなかったため初めての仕事がこれになるため、ユウマは苦笑しながら依頼用紙をミリシアのもとへと持っていく。





お読みいただきありがとうございます。


ブクマ・評価ありがとうございます。



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