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第三十三話


 ユウマが呪いについて説明をしている時から、既にミズは眠りについていた。

 そのため、三人は彼女をゆっくりと寝かせるために別の部屋へと移動している。


「心臓自体が呪いを吐き出しているから呪いを完全に取り除くことはできず、かといって心臓を取り出すわけにもいかない、か」

 硬い表情のユウマは確認した現状を口にする。


 それを聞いたボブスはガックリと肩を落としている。


「となると、解決方法は呪いをかけたものを倒す、もしくは解呪させる――ということですね」

「あぁ、そういうことだ。例の万能治療薬になる水があったとしても恐らく彼女を助けることは叶わないはずだ。なにせ、原因が病気じゃなくて呪いなんだからな」

 落ち込むボブスをよそに、真剣な表情のユウマとリリアーナの二人は、収納魔法による方法ではミズを助けられないという結論を出す。

 だがそれで諦めるわけではなく、次の方法に移るだけだと考えていた。


「えっ? ま、まだ助けてもらえるんですか?」

 まだ二人が次の一手を考えてくれていることにボブスは驚く。


「あぁ、せっかく知り合った縁だからな。それに、他にも具合が悪いやつが出ているとなると、これはなにか大掛かりなことが起こっているのかもしれないぞ」

「ですね」

 ボブスとミズの件だけでなく、何か組織だった動きがあるかもしれないと感じている二人は、ここで放っておいて街によくない影響がでるかもしれないと考えている。


「とりあえず、俺たちが勝手に動いて何かあっても困るから、上に話をあげることにしよう」

「……うえ?」

 ユウマの言葉にボブスが質問する。


「この街で上っていったら、ギルドマスターのマリアスしかいないだろ」

「えっ?」

 確かにユウマはギルドの二階から降りてきたのをボブスは確認していた。

 しかし、そのギルドマスターを呼び捨てにしていることに驚いていた。


「あぁ、マリアスとはそれなりに話せるからちょっとこのことを報告しておくよ。何にしても報告してから動いたほうがいいだろうからな」

 そう言うとユウマは立ち上がる。リリアーナも頷くとユウマに続く。


「えっ、これからもう行くんですか?」

 ギルドを出て、カフェで話をして、この家に来て治療を試した。

 そして、その足でギルドに戻るという。


「あぁ、ミズの状態を見る限り、放っておけばこのまま身体が蝕まれていくのは想像に難くない。それに、他にも同様の被害者がいるとなるともっと重い症状のやつもいるかもしれない。なら早く動かないといけないだろ?」

 説明をすると、ボブスの次の言葉を待たずにユウマたちは家を出ていった。


「なあ、どう思う?」

「洞窟の話ですか?」

 二人はギルドまでの道すがら、ボブスから得た情報について話し合う。


「あぁ、露骨すぎるだろ。そもそも、そんな特別なものがあって、それを手に入れることができるならもっと噂になっているだろうしみんなが知っているはずだ」

「やはり、罠ですね」

 改めて二人はこの呪いが広がってきている状況について不穏な空気を感じ取っていた。


 このグランドバイツという大きい街は、冒険者ギルドを中心に統治されている。

 道行く人々の顔は幸せそうな表情があふれている。


 そんな街にはびこる闇の気配。


 勇者としての立場を捨てたユウマは、特別強い正義感を持っているわけでもない。

 だからといって、知り合って協力をしてくれているマリアスたちが守るこの街に起きている問題を見て見ぬふりをできない。


「まあ、大変そうだったら色々と協力してもらおうか」

「そうですね!」

 そんなことを話しながら二人は冒険者ギルド、更にはギルドマスタールームへと向かって行った。



「――ダメです」

 タイグルとともに話を聞いてくれたマリアスから返ってきた言葉は予想していたものとは違った。


「えっ?」

「ええっ?」

 まさかの回答にユウマとリリアーナは驚き、固まってしまう。


「お二人の情報提供には感謝しています。そして、できるならば協力したいとも思っています。……マリアス個人としては、という前置きがつきますが」

「マリアス個人としてはってことは、ギルドマスターとして、この街の長としては容認できないということか?」

 ユウマの問いに、マリアスは苦しい表情で頷いた。


「情報量が足らないってことかな? それに、確証が持てない、と」

 これまたマリアスは頷く。


「じゃあ、せめて体調不良者の把握を頼めないか?」

 これならば実戦に戦力を割く必要がないため、譲歩してもらえないかと確認する。


「うーん、それくらいなら、なんとか……」

 それでもやや煮え切らない返事をするマリアス。


「ようっし! わかった、それに関してはわしが対応しよう」

 ここまでダンマリを決め込んでいたタイグルが口を開く。


「彼らを連れて来たのはわしじゃ。その彼らがギルドに話を持ってきてくれて、頼ってくれた。ならば、それに応えてやるのは当然のことじゃろ。というわけで、わしが病人の調査に向かおう」

「あぁ、頼む。俺とリリアーナは洞窟のほうを調査してみるよ」

 ユウマとタイグルが拳を前に出して、コツンとぶつけ合う。


「え、えっと……」

 自分の判断に関係なく話が動いていくことに、戸惑うマリアスだったが、既にユウマ、リリアーナ、タイグルは出発しようとしていた。



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