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深き安眠は終わり、始まるは道無き道  作者: takosuke3
終章 ~そして〝カナセ〟の始まり~
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そして〝カナセ〟の始まり

「というわけで、私達の次のお目当てはここです」

 サクラは、マオシスが出した地図を示して言った。

 何が〝というわけ〟なのか──スザンノーという、移動手段兼スイキョウの隠れ蓑兼家を失った今のソーディス一家にとって、船の確保は喫緊の問題であった。

「レヴェラの遺跡で手に入れた情報に、当時の地図と街や施設の情報も入っていました。で、さしあたっての候補はここ」

 トリーレからは北東の大地──エナ大陸の西南地域の一部が拡大される。

「カルター州の北──海岸部分に当時の造船があったそうです。主な設備は海底の更に下になりますから、中身も当時のままのはず。てことは」

「使われなかった船があってもおかしくはない、と」

 勿体ぶった言おうとした結論をラヴィーネに奪われ、サクラは色々と詰まらせたような顔になった。

 そんなサクラに、フィルはすかさず、

「サクラ様、お言葉を奪われてご不満なのは分かりますが、ここは一つ」

「別にそんなんじゃありませんし」

 サクラは鼻を鳴らして不満を追い出すと、話を続ける。

「そこまで察してるなら、話の続きも分かるでしょう……はい、マハル?」

「……西部方面軍でしょ?」

 話を振られたマハルは、地図を再び確かめると、カルター州の北側──ノルフェス州を指さす。

「軍本部が近くて、しかも州境で海。ゴタゴタが起こっても後始末がしやすいから、必ず出張ってくるでしょうね」

「……それなんだけどね~」

 ラヴィーネが、思案顔で言った。

「ちょっと考えがあるんだよね~」

 それはもう、見るからに悪巧みの顔で。


*****


「……で、こうなるんだもなぁ~」

 哨戒に注意して慎重に侵入し、カルター州の南部の平野で降ろされたレイヤは、嫌そうにぼやいた。ラヴィーネの悪巧みに対して。

「でも、本当にここで良いのですか?」

「これでもかなり近づいちまってる。のんびり歩きの旅っても悪くねえ……て思うさ」

 サクラの心配に、二つの背嚢の中身を確かめながら、レイヤは鼻を鳴らした。

「……分かりました。でも、いざとなったら無理はしないこと。行くのは貴方だけじゃないんですから」

 サクラは、レイヤと共に降り立った白い少女に目を向ける。

「いざとなったら、貴方だけでも逃げてくださいね……カナセ」

「了解した」

 十三番と呼ばれていた白い少女は、淡々と頷いた。

「では、こっちも行きましょう」

 二人を残して、スイキョウは静かに飛び去っていく。レイヤは、それを見送ることはせず、

「ったく、何が大丈夫だっつの。囮なんて面倒なことやらせやがって」

 代わりにぼやきをくれてやった。

「嫌なら、断っても良かったのでは?」

「断ったら断ったで、それはそれで別の面倒が待ってんだよ。姉御の性格は、お前も知ってんだろ?」

 脳裏にラヴィーネの悪巧みの顔が浮かび、レイヤは気分は大きく減退する。

「まあ、いざとなったらお前の力でオサラバすりゃいいだろ」

「レイヤなら、私がいなくてもどうとでもなるのでは?」

「便利なモノは、どんどん使えってこった……よし、と」

 欠品が無いことを確かめ、レイヤは背嚢を背負い、

「そんじゃ、ぼちぼち行こうぜ。カナセよ」

「了解した」

 カナセもレイヤに倣い、もう一つの背嚢を背負う。


 作られた人形に過ぎなかったソレは、道の無い道を歩みだす。

 十三番と言う番号を捨て去り、カナセ・クドー・ソーディスと言う、一人の存在として。

 一個の存在(カナセ)としてのあり方を、見出していくために。

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