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俺のLVは上がらないのに、  作者: 松戸真 寿司
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~謎の勢力~ -17. 天敵襲来 その2






 フォーメルがハルタとの連絡手段を取ってから数日経ったある日、秘密とされる小部屋では、セイレアヌが一人佇んでいた。

その顔には、やや緊張感が漂う。

実は、今日がハルタと会う約束をしていた日だったのだ。


時刻は夜更けを回り、そのお陰で辺りはやけに静かだった。

時間的な指定もハルタからの希望であり、できる限り沿う形を取ったが、それはセイレアヌにとっても都合が良かった。

全ての業務が終了したので人は殆ど居らず、かつ、セイレアヌもよく一人で残って何事かをやる事も多かったので、心配する様な素振りを見せる者は居たが怪しまれる様な事はない。

会合となる場所は騎士団長の一室、更に奥に設けられた所を選んでフォーメルには伝えてある。

場所に付いては「出来る限り人目を避けられる場所」と言う指定があっただけなので、こちらで決めさせてもらった。

実際に来る場合は、彼らは一旦フォーメルと人気の無い場所で合流し、その後に案内されてここを訪れる手はずとなっている。

秘密の小部屋としたが、実際にはセイレアヌが使うと言う理由で他の者が入るのを憚れるというだけであり、部屋の存在その物は知っている者は多い。

しかし、そこは実質的に彼女の私的な部屋でもあり、そこで着替えたり時には体を拭く様な事もあったので、断り無く入る者など皆無である。

故に、ある意味では彼女の許し無く入れない、絶対不可侵な領域の場所なのだ。

また、奥まった場所にある為に会話が聞き取られる事も無かったし、誰かが入ってくればその前に分かるので、本当の意味で秘密裏に会うにはうってつけの場所でもあった。

もっとも、ここに来るまでが難しいのだが、それはフォーメルが何とかしてくれるのだろう。


 セイレアヌはじっと待ちながらも、落ち着かずに無意味な事を繰り返してもいた。

念の為と言うか単に落ち着かないからだが、フォーメルと予め打ち合わせておいた事を頭の中で反復する。

ハルタらは自分たちがアーマルデ・ロイデンである事を知らない。そして、その確証もまだないので、こちらかは決して打ち明けてはならない。

同時に、これらは交渉の武器になると共に、切り札でもある。

故に、迂闊に必要以上の情報は与えない。

 一通り思い返した事で、胸に手を当てて深呼吸し、それらを体に染み渡らせる。

交渉事は何度かやって来たはずなのだが、今回は色々と勝手が違っていて緊張がなかなか解けない。

切り札を隠して相手と話し合うことなど、自分では手慣れてきたつもりだったのだが、今になって思い返せば、それは周囲に手助けする人間が何人もいたからこそだった。

フォーメルが付くとは言え、実質的にはほぼ一人で、それも自分を指名しての相手と一対一となると初めてである事に、今更ながら気がついたのだ。

しかも、今回の相手は事前の情報が殆無く、それを今から探ろうと言うのだから、ある意味でセイレアヌにとっては何もかもが初となる。

ただ同時に、それらとは違う妙に高揚させる様な気分もあって、セイレアヌは相反する内心を処理しきれずにソワソワとしていた。

必要かもと思って食べ物や飲み物も持ち込み、それを綺麗に並べてあったが、時々触っては配置の微調整を繰り返して所在の無さを潰してみた。

 ハルタは、この食べ物や飲み物を気にいるだろうか。

自分の姿をどう見るだろうか。

騎士団長として精一杯の正装をしたつもりだが、やや野暮ったいかも知れない。

いっその事、他に人が来るはずも無いのだから、ドレスに着替えた方が印象としては良いのではないか。


 そう、止めどもなく考えていたセイレアヌあったが、これでは想い人を待つ乙女の様ではないかと、急に恥ずかしくなった。

ハルタという人物が勇者などではなく、アーマルデ・ロイデンの可能性が高いと知った時には失望したはずなのだが、それでも何かの期待をまだ持っているのか、或いは初めて会った時の印象の不思議さからか、彼女はやはり落ち着かなかった。

もっとも、そこには彼女の美化が入り混じってもいたのを自覚してもいたので、それを振り払うのにも苦労していた。



 と、隣の部屋に誰かが入ってくる気配を感じる。それも数人だ。


(遂に来た)


そうセイレアヌは思ったが、それでもジッと待って様子を伺う。

フォーメルが居れば彼が案内してくるだろうし、違う誰かであればコチラを呼ぶはずだ。

ただ、もし違う者たちであれば声をかけて欲しくなかった。

何故なら、セイレアヌは騎士団長室で作業をしていると言う風を装うには、やや不自然な程に小奇麗にしていたのと、今の自分ではどんな顔をして出れば良いのか分からないと言う思いがあったのだ。


 しかし、長めの時を置いても、一向に入ってきたらしい連中に動きはない。

出るでもなく、こちらに声をかける様子も無い。ただ入ってきたと同じ様にして、その場でジッとしている感じだ。

すると、扉が開く様な音と共に、くぐもってはいるが、聞き慣れた声が遠くでする。


「助かった。後はこちらでやる。 もう、持ち場に戻っていいぞ」


相当に注意して聞かなければならないが、確かにフォーメルの声だ。

その後、何かをゴソゴソと入れる様な音と共に、扉が閉まる様な音を聞いた様な気がするが、彼の会話が僅かな間を置いて続く。


「待たせてすまん。だが、上手く入れたろう」


「ああ、そうだな」


どうやら誰かと会話している様なのだが、ここからでは最初に入ってきた連中と話しているのか、或いは連れ立ってきたハルタ達と話しているのか分からない。

迎えるタイミングその物を逸してもいた為、セイレアヌは出るに出れない状況にもあった。

すると出し抜けに扉がノックされ、不意を突かれたセイレアヌは肩を跳ね上がらせたが、続けざまにフォーメルが声をかけてくる。


「セイレアヌ様、いらっしゃいますか?」


それに弾ける様にして扉に駆け寄った彼女であったが、取っ手に手をかけようとして一旦引っ込め、落ち着ける様にして一つ深呼吸をし、それから少しだけ扉を開いた。





 俺たちは、レパンドル王都の城内、更に騎士団本部なる場所に来ていた。

フォーメルから受け取った手紙には会う日付と場所が書かれていたが、それは単なる合流場所で、そこから更に詳しい説明を現地で受けた上でここに居る。

もちろん俺に手紙を読むことはできなかったが、アニーズによる解析で大凡の事は把握できたので特に困る事はなかった物の、やはりニュアンスの違いみたいな物で齟齬が生じる。

てっきり、合流場所にセイレアヌ姫が来ると思っていたからだ。

そこは人気も少なかったので、俺的には良いとは思ったが、良く考えたら身分のある者が来れる様な場所でもない。

それ故、フォーメルの案内で騎士団本部の敷地内に潜入、その後は室内の見張りを彼が荷物運びの手伝いとして呼び出した所で、隙きを突いて俺たちはまんまとこの部屋へと入りこんだのだった。

部屋の奥には更に幾つかの別室らしき物があり、その内の一つが僅かに開いたと思ったら、隙間からコチラを伺う女性の姿が見えた。

どうやら、それがセイレアヌ姫の様だ。

 こちらとあちらの中にも明かりはあったが、この世界の照明の明るさなど知れているので、俺の記憶と適合させる程には、こちら側からは彼女の姿を確認できない。

しかし、俺たちの方を確認できたらしい向こうが扉を開くと、その全身がハッキリとする。

そこには、確かに見覚えのある女性が居た。


俺たちは暫く見つめ合う。


と言うのも、どこかに更に出かける用事があるのか、彼女はやけに綺麗な格好をしていたのが気になったのだ。

向こうは向こうで、フォーメルを除く俺と他の二人を交互に見ている。まあ、こっちも全身を覆う様なマントをまとっているので、誰を見て良いのか分からないのだろう。

マントは念の為、フォーメルに言って俺が事前に用意させていた物だ。

それもあってか、ちょっと遠慮気味にチラチラとこちらにセイレアヌは視線を送るのだが、その綺麗な姿と相まって仕草が可愛らしい。

が、無粋者がその空気を打ち壊す。


「ったく、うっとおしい」


そう言って、マツリカが全身を隠す為に用意したマントを剥がし、それに倣ってユーカも羽織物を取る。

ここまで普通に着用していたが、他の装備を嫌がる二人に着させるのは少し難儀をした。

アニーズで確認しても特に変化が無いと俺がお墨を付けたので、どうにか着用してくれたが、それでも説得するのは骨が折れた。

その二人の姿を確認すると、セイレアヌの方は期待するかの様に俺に目線を向ける。

仕方なく、俺もフードを取って顔を見せた。



「初めまして・・・では、ありませんね。勇者ハルタ様。 ようこそ、いらっしゃいました。 私が騎士団長のセイレアヌ・ホバートです。よろしく」


そう言ってセイレアヌはニッコリと笑ったが、王家独特のオーラをまとっている彼女の笑顔は、高貴さの様なものを放って俺を圧した。


「えっと・・・こちらこそよろしく。 でも、その勇者ってのは止めてくれ」


頬を掻くことでしかその対応を知らない俺を、マツリカとユーカの二人が小突く。


 その後、軽く自己紹介をした上で、俺たちとセイレアヌは部屋に入った。

室内の扉付近にはフォーメルが待機して万が一の訪問者に対して備えている。

俺は椅子に座り、その背後にはマツリカとユーカが両側に立って控えていた。

テーブルを挟み、座ったセイレアヌと向かい合う。

彼女がお菓子の様な物を勧めてきたので俺はありがたく頂いたのだが、背後の者は受け取らなかたので、表情を曇らせるセイレアヌに彼女たちは食べない事を説明して誤解を解いてやる。


「まあ、本当に・・・・フォーメルから聞いた通りなのですね」


彼女は、一瞬目を見開いて驚きかけたが、それを強引に冷静な顔へと戻した。

ただし、興味津々と言った感じで背後の二人に目を向けている。

しかし、それに対してマツリカは腕を組みながらふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向き、ユーカはチラッとセイレアヌの方を一瞬だけ見たが、直ぐに真正面を向いて無表情を貫く。

少しは愛想良くして欲しいものだ。


この二人を選んだのは能力の高さ故だ。

潜入するにしても壁超えと言った無茶をするのと、失敗した場合や罠を掻い潜る場合でも、この二人なら問題としないだろうと考えての事で連れてきた。

別にセイレアヌたちを敵視しているわけではないが、何があるか分からないから用心に越したことはない。

アニーも行きたがったのだが、今回だけは留守番を申し付けた。

再びここに潜入する場合が生じた時、アニーはその姿がやはり民衆に溶け込み易いであろうから、余り顔を覚えられて欲しくはなかったのだ。

基準で言えばターナも連れてきても良かったのだが、最近ルミンが夜中に起き出し、彼女を探してウロウロするので仕方なく置いてきた。



「・・・にしても驚きました」


「何がだ・・・です」


「フフ、気を使わなくても結構ですよ・・・。

いえ、私が知識として知っているのとは、随分と様子が違うものですから」


様子が違う。

その意味を上手く飲み込めず、俺は沈黙した。

そう言えば、フォーメルもそこに居る全員が武器から人化した者だと言った時、少なからず驚いていた気がした。

彼が話していた、特殊な兵士とは何か俺たちは違うのだろうか。


「どんな風に違うんだ」


その質問に、セイレアヌはやや思案する様な感じで、顎を摘んで少し俯いて目を閉じた。

しかし、直ぐにパッと目を開くと語りだす。


「広く知られる噂では・・・」


「ごほんっ!姫様、あまり時間はありませんぞ。 その話は資料等を集めた上で、また今度とした方がよろしいかと」


横合いからフォーメルが会話に割って入った為、言いかけたセイレアヌも少し身を引いてしまった。

俺としてはその話を聞きたかったのだが、確かに悠長にしていられる時間はあまりない。

誰かが何時来るとも限らないのだし、優先すべき話は他にもある。

本当は情報として聞いておきたかったのだが、今は問いただすのを我慢した。

第一、俺が彼女らと交渉する条件の一つが情報の取得にあるのだから、向こうから迂闊に喋られても対処に困る事もある。



「オホン。では、ハルタ様。あなたの目的を教えてください」


「小さい子を俺の所で預かっている」


「?」


「どこの村の子かは、こっちも詳しくは知らない。 しかし、シーゼスの連中によって、酷い目に合わされた事は間違いが無いだろう」


それを聞いて、セイレアヌは心当たりがあると言う様な顔をしたが、話の意図が見えないのか戸惑う表情も見せた。


「えっと、俺個人の考えとお節介な性分でな。 恩を受けた相手に返したいと思ったんだ。

ほら・・・初めてあった時、宿の手配や換金とか、親切にしてくれただろ。 だから、この国に味方をしたいと思ったんだ。 それに、シーゼスの非道なやり方も許せなくてさ。

預かっている子が、静かに暮らせる場所を用意してやりたいとも思ったんだ。

目的と言えば、そんなところかな」


それを聞いて、セイレアヌは目をぱちくりとさせていた。

しかし、暫くの後、やや声を低めて問いただす。


「それは、本心ですか。 あなたは、自分に対する見返りなど求めず、ただ私が一回行った恩に報いたいだけだと?」


「うーん、どうしたら信じてくれるのかな。

そうだ、セイレアヌ姫。 貴女は他国を侵略し、国土を広げたいと思っているかい」


その問にセイレアヌは探るような目を俺に向け、暫しの沈黙の後に答えた。


「そんなことに興味はありません。 私は、このレパンドルと言う国と、多くの人々の平和を願うだけです。 もし可能であるならば、シーゼスとでさえ友好を結びたいと思っています」


「そう、それだよ」


俺の返答に、セイレアヌは振り回されたかの様に困惑し、フォーメルの方にも目線を送る。

しかし、フォーメルは口を少し結んだだけで、返事はしなかった。


「賢明な統治者の力になれるってのは、結果的にこちらにもメリットがある。 下手な野望を持たない分、俺たちを使うとしても非道な事は命じないだろう?」


「それは・・・」



非道な命令をしないと言う部分に、セイレアヌは詰まった。


別に自分は聖人君主ではない。

むしろレパンドルとその民を守る為ならば、酷い決断だって下すだろう。

少なくとも国防を預かる一人として、既に敵兵を殺す命令を出しているのだ。

ハルタのその言葉は、矛盾をはらむ自分に突き付けられた刃の様な気がして、彼女は息を飲む。

だが、これに助け舟を出したのはハルタ自身だった。


「そんなに深く考えないでくれ。 要は、良識の範囲で優しさを持って接してくれると見込んだんだ。 君をね」


 と、俺は彼女の良さを褒め称え、それに価値を見出して力を貸すと言う意味を込めたつもりなのだが、やはり上手く伝わっていないのか、セイレアヌは難しそうな複雑そうな顔をしている。

やはりここは、何かしらの見返りが欲しいとハッキリと言った方が、互いの為なのだろうか。

まあ、今までの会話を素直に受け止めれば、タダで力を貸すと言っている様なものだからな。

ボランティアとか、そうした概念がこの世界にあるのかは分からないが、少なくとも戦争という状況では怪しまれるのは無理もないのだろう。


「あー、実は欲しい物が無いわけでもない」


「それは何ですか」


欲しい物があると聞いた途端、セイレアヌが「やはり」と心で唱えた。


「情報が欲しい」


「情報? 我が国のですか?それとも・・・・」


「違う、違う。 俺が欲しいのは、ある特定のモンスター、或いは人物についてだ。

そして、できればこの世界全体の事についても教えてくれたら助かる」


それを聞いたセイレアヌは、またもや目をぱちくりとした。




 ハルタが求めた見返り・・・と言うか、ただの世間話に近い物は、興味を惹かれる部分もあったが、同時に彼と言う存在へ改めて関心をもたらすと共に、疑心暗鬼するのが馬鹿馬鹿しいと、セイレアヌに思わせた。

無論、完全に疑いを晴らした訳ではないが、それでも彼の求めている物が分かるに連れ、実際には陰謀や策略などそこにはなく、本当に自分が施した恩への礼だけで動いている事にも驚かされる。


本当に良い人。


最終的にセイレアヌの中にあるハルタに対する評価は、大部分がそれで締める様にもなっていた。


 ハルタの話を大凡で要約すると、彼は青色で人型のモンスター、名称をミズツノシシオギとか言う輩を探しているらしかった。

何の為に追っているかまでは答えてはくれなかったが、モンスターを探していると言う時点で勝手な想像はし易い。

残念ながら、そんなモンスターの事は知らなかったのだが、継続して情報の提供と収集に協力すると約束したら喜んでくれた。

また、彼は世間的な事に疎いらしく、基本的な情報を提供すると言うだけで十分な見返りとすると言う。


なるほど。フォーメルが念押しをしていた意味が、何となく分かってきた。


何れにしても、こちらは何ら利益を損ねる様な事は無い。

その辺に関してはある程度は覚悟していただけに、セイレアヌは肩透かしどころか無垢な子供でも相手にしている様ですっかり気が緩んでしまう。

とは言え、まだ本題に入った訳ではないし、相手の根っこを引き出した分けでも無さそうなので油断はできない。

見返りと言うには、あまりにも軽い物を求めている以上、こちらの申し出に対してはどこまで応えてくれるのか、そこが問題でもある。

そこでセイレアヌは、少し意地悪をしてみた。


「ところで、魔法武器の方は如何でしたか?」


与えた物が、この場の会話だけではない事を、暗にハルタに投げかけてみる。

勿論だが、今の彼女にはそれを見返りの品として、場に出すつもりはない。

あれは、ここで会う為の条件の一つに過ぎない事を、理解してはいるつもりだ。


しかし、それを聞いた途端にハルタは少し表情を落とした。


「えっと・・・・使えなかった」


「え?」


予想外の返事に、セイレアヌは思わず聞き返したが、それにも増してフォーメルが割って入る。


「術が壊れていた、と言う事ですか?それとも、武器自体に何かの不具合が?」


選んで持ち出した本人だけに、色々な責任に気付いて慌てている様だった。


「いや、武器自体には問題は無かった。むしろ、俺の方に問題があったようでね。 全くの無反応と言うか、残念ながら、同調すらできなかったよ。 あ、でも、あの槍は気に入ったし、使ってる」


その返答に、セイレアヌもフォーメルも、一瞬動きを止める。


魔法武器の同調に失敗したと言うなら分かるのだが、無反応で同調すらできなかったという意味が分からなかった。

リミットコネクターを使わなかったにしても、魔法武器が持つ基本能力として、同調位は誰にでも出来るのだ。

例え、両者の魔力型が大きく違っていたとしても、無理をすれば当てはめる事ができる。

それで使い物になるかどうかは別として、何の反応も無いと言うのはおかしい。

本当に同調をしたのだろうか。

もしかして、自分が使う様に見せて、実はどこかへ送ったのではないのか。


途端に、セイレアヌとフォーメルの中に深い疑念が過った。



「同調すらできなかったと言う事は、魔法武器から何も反応がなかった?」


「ああ、そうなんだ。 あ、因みに、例のリミットコネクターってのも正常に動いているから、別に壊れていたとか壊したとかとも違う。 本当に、俺に使えないって事なんだ」


尚も聞き返すフォーメルに対し、ハルタは自分で説明しながらも意気消沈していった。




 あの日、魔法武器を受け取って意気込み勇んで同調しようとした俺だったが、件の武器はうんともすんとも言わず、明らかに俺を認識の対象外としている様だった。

アニーズで確認しては見たが、基本情報以外は提供されないので原因はさっぱり分からない。

まあ、予想通りだと言えばそうなのだが、無反応と言うのは想定外だ。

そして、俺自身に関する嫌なアニーズの評価が思い出され、それが立証された気にもなって落ち込みそうになる。

それをやると周りが心配するので、グッと堪えてお首にも出さなかったが。

ともかく俺には、この世界の便利アイテムによる能力付与は期待できないらしい。

これでまた、レベルを上げる手段の一つが絶たれた事になる。




 魔法武器を使えなかったと言う事について、セイレアヌとフォーメルが深刻そうな顔をして話をしだした。

彼らにとっては余程の重大事項であるかの様で、話が段々と大きくなりそうで俺も内心慌てる。

ここは思い切って全てを話した方が良いかも知れない。

俺は一つ腹を括った。


「あの・・・その魔法武器が使えないって事についてだが、俺の秘密を全て話そうと思う」


その告白に対し、その場に居た誰もがピタリと動きを止めた。背後に居る者たちでさえもだ。

ただし、真っ先に動いたのはユーカだった。

俺の耳元に口を寄せると、例の如く色々と心配しての忠告をしてくる。

それは分かっているのだが、知らない事が多い以上、相手から情報を引き出す為にもコッチも腹を割って話す必要があるだろう。

それに、会話の中で思ったのは、やはりセイレアヌと言う人物は信用出来ると言う事だ。

むしろ、彼女を信じられなかったら、誰とも話はできない。

何となくだが、交渉的な段階を踏んでいる様にも見えるので、向こうも全てを晒し出してはいないのだろう。

得体の知れない連中を相手にする以上、仕方の無い事だと俺も理解しているつもりだ。


その様な説得をユーカにして、俺は遂に、イフィール以来初めて他の人間に対し、これまでの経緯を話す事にしたのだった。

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