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俺のLVは上がらないのに、  作者: 松戸真 寿司
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~謎の勢力~ -7. 何も知らない勇者






 合体ランスの人化は、概ね俺の予想通りに事が運んだ。そして今まで考えていたことの殆どに答えが出たと言っても良い。


武器が人化するキッカケは、今回の事でハッキリと俺による呼びかけだと判明した。


本当はもっと色々試してみたい事があったのだが、戦力確保を優先した為にその辺は後回しとする。

ただ、今までの蓄積から恐らくレベル3以上が人化には適しており、そして、俺の血を与えると尚良いらしい事から、ある意味ではそれらの確認になったとも言えるだろう。


 それを踏まえて今までの事を整理すると、人化に最適なレベルは3以上で、それ以下で人化した場合、何らかのペナルティが発生するようだ。

マツリカとイユキの例のみではあるが、恐らく不安定さと俺からあまり離れられないと言う制約がつくらしい。

それを補うには、俺の血が必要なのだろう。

人化後にイユキやマツリカが俺の血を必要に欲しがったのも、きっとその辺があったと思われる。

ただし、レベルが上昇するとそれも解消されるらしい。

実際、今の二人はそこまで俺の血を欲しがらない。

勿論、与えると喜んで飲むのだが。




 そうした条件を満たした合体ランスは、見事に俺の呼びかけに応じて人化して見せた。

血も事前に与えてあった為か、見た目だけはかなり人に近い。


人化したランスは紫のランスまんまの髪色を持ち、同じく紫色の服に銀色の胸当てを着込んでいる。

ただ服はローブぽいと言うか、やたらと薄いのが気になった。


背は、これまでのメンバー内では一番高く、170近い。

やはり顔立ちは整っているが、どこかオリエンタル的というか中近東当たりにいそうな感じで人化した。

ただし、その割には他のメンバー同様、どこか幼い顔立ちなので、背の高さと全体的な印象と比べると、どうもチグハグにも見える。

もっとも、そんな物は彼女の最大の特徴の前では霞むだろう。

実は彼女、六本の腕を持っていたのだ。


それぞれの腕に槍二つとメイス、クロスボウを構え、更に空いた手で器用にクロスボウに矢を装填する。

また合体させたランスも、その六本の腕で悠々と構えて扱ってみせた。

力も相当に強いようだ。


合体分離武器がどう人化するか想像がつかなかったが、こう来たか。



戦闘力を試す為ガファンドと戦わせてみたがやはり圧倒して見せた。


パワー以前に、複数の腕による同時攻撃や巧みな戦術性で、相手に力を発揮させる事さえ許さない。

また、合体ランスを使えば動きは多少制限されるが、強力な攻撃力を持つに至り、遠距離から近距離までカバーするので、多方面での対応能力に優れていると言えるだろう。


反面、やはり速度面では劣っている感じだ。もっとも、クロスボウを備えているので、その辺をカバーした戦い方もできるはずだ。


「よくやった、えーと・・・・」


「・・・・・」


まだ名前を付けていないのだが、この合体ランス娘はとても無口だ。

必要最低限の事しか話さないし、人化した直後も全くの無言だったので心配したほどだ。

一応、返事を無理やり求めたら、やっとの事で「はい」と一言もらった。

表情は、それなりに豊かで笑う事もあるんだが、何だかやり辛い。


もしかしたら、名前を付けたら多少は変わるかも知れない。

能力の確認を一通り終えた俺は、彼女の名前を考え始めた。


チャキウスが作った合体ランス・・・分離・・・・セパレート・・・・六本腕・・・



「えっと、君に名前を与えよう。今日から、アシュレイと名乗ると良い」


それを聞いた途端、合体ランスの娘改め、アシュレイが体中から光を放つ。


「・・・アシュレイ、確かに」


相変わらず言葉少なだが、少しだけ笑って直ぐに真顔に戻る。恐らくだが、気に入ってはくれたのだと思う。


アニーズで確認すると、名称『銘のある特殊武器・アシュレイ』種別『魔法特殊武器』となっていた。

名前を付ける前だと、合体時はランスで一括表示され、バラすと名称にまとめて個別の武器名が入っていたが、名前を付けた事で特殊武器・アシュレイで統一された様だ。

現に、今彼女は武器をバラして持っているが、個別の武器名称は表示されない。

強さは『白虎クラス第9位』、影響度は『重騎士』となっている。

説明によると『合体分離が出来る特殊武器が、名前を得た事によって人化した。絶対的な忠誠を持ち主に誓うと共に、多方面で器用に力を発揮する。』とある。


武器の特殊性に期待していたのだが、説明を読む限りではオーソドックスな感じだ。

まあ、腕を六本も持っている時点で、十分に特殊ではあるのだが。


これで、こっちの用事は一通り済んだ。後はユーカ達と合流するだけである。


この間にユーカから更に詳しい報告をイーブル・ラーナンを通じて知らされてきたが、予想外に大規模戦闘となった様で驚いた。

また、続報によると、シーゼスは三万近い兵力を展開しているらしく、ユーカの見立てでは、先ずレパンドルは勝てないだろうとの意見も添えらていた。


一応、敵は周辺の村を襲う様な部隊は他に出していないらしいので、一先ずは各村の安全は確保されたと見て良いそうだ。

本来であれば、これで十分であったのだが、兵力差で見ると絶望的でもあったので、俺は今後の事で悩んでもいる。

見捨てるのは簡単なのだが、本当にそれで良いのだろうか。



それとは別に、俺はユーカ達の戦闘力に改めて驚くと共に、自分の無能さを悔やんだ。


村を襲う程度なのだからと、俺は勝手に敵兵力を少なく見積もっていたからだ。

多かったとしても、せいぜい百もないと思っていた。

その程度の数であれば、ターナの超高速や、マツリカの必殺の斬撃、ユーカの強欲の根があれば十分対抗できると踏んだのだ。

まあ、彼女達の戦闘力に対する認識に関しても、俺は過小評価する感じで見誤ってはいたのだが。


敵兵力については、珍しくユーカから事前に知らされなかったが、多分、命令を忠実に実行したのと、彼女達から見ると敵兵力は数も含めて脅威と捉えなかったのだろう。

結果オーライではあったが、これが逆の立場であったならと考えると、ゾッとする。

勿論、ユーカの判断力であったなら、もしかしたら勝ち目の無い戦いなら回避した可能性もあるが、改めて、俺の迂闊な判断が彼女達を簡単に危険に晒す事を自覚する。

まあ、無理をするなと伝えてもあったので、それも考慮しての判断だとは思いたいのだが、どっちとも取れる命令は今後は控えるべきだろう。


それにしても、千近い敵兵力を実質的に三名で撃破したのには、本当に驚いた。

幾ら何でも、圧倒的すぎだろ。報告では、魔法を使える者も居たらしいのだが、ユーカによれば、モンスターと比べれば大したことが無かったという。

まあ、モンスターと比べたらそうなのかも知れないが、兵数で考えたらやっぱり戦闘能力に差があり過ぎる。


そして、この実績から、クラス分けに少しだけ意味が見えてきた様な気がする。

それを確認する為に、俺はアシュレイを例にして強さの項目を表示させた。


玄武- デュラハン、- スレイプニル

白虎- ケルベロス、- マンティコア

朱雀- ハーピー、- ペガサス

青龍- ワイバーン、- キマイラ


恐らくだが、左が武器用のクラスで、真ん中がモンスター用、右がヒューマス用と言う感じなのかもしれない。

実際、モンスターの強さに四聖獣の名前は出てこなかったし、かと言って、右側のクラスの名称は一切出てこなかった。

逆に、イフィールが『キマイラクラス』であった事や、王都で遭遇したチンピラ達が『マンティコアクラス』『ペガサスクラス』となっていたので、今の所は間違いないだろう。


また、戦闘結果のみから推測すると、左が上位クラスで右側が下位クラスの可能性も高く、実際、一つ隣のクラス同士では、3から4程のレベル差で互角以上の感じがした。

つまり、左が上位クラスと仮定した場合、そこのレベル1が下位クラスの4から5に当たる事になる。

これならば、ユーカ達が千名規模の兵力を圧倒したのも頷ける。

例え、千の兵士のレベルが数字上でユーカやターナと同じだったとしても、二つの隔たりを加えて単純に考えると、両者の差は10近くもあった事になる。


もっとも、相手の情報が全く分からない上に、全て推測に過ぎないので、どこまで当てはまるかは分からない。

第一、この俺の考えには、各クラスの階位までは考慮に入れていない。

そうした面を入れると矛盾も多いので、今は参考程度に見ておくべきだろう。


ただ、今だにクラス分けの縦の関係性は、意味が分からない。

朱雀と白虎の違いは何であるのか。

これらは俺の知識では、方角を指すと覚えているのだが、そうだとしてどの様な基準で属しているのか・・・・。


後、俺の強さに該当する『百鬼夜行』の意味も不明のままだ。

チンピラ達との一件や、モンスター戦等で考えれば、恐らくその中間のクラスに当たるのかも知れないが、警告の様に表示されているのが気になる。

また、マツリカを俺の体内に取り込んだ時、付与と言う形になっていたのだが、本来は何かと組み合わされて俺は存在していた可能性すら出てきた。

もっとも、それを確認するには情報が足りな過ぎる。

更には、ミズツノシシオギが何故封印されていたのか、そして奴が何故マツリカを出来損ないと呼んでいたのか、俺はまだ知らない事が多い。




「アシュレイ。 ちゃんとハルたんの名前を呼んで、お礼を言わなきゃ駄目でしょ」


名前を付けた途端、アニーがアシュレイに先輩風を吹かし始めた。

下からの声に、アシュレイが顔を俯かせ、目線を下げてアニーを見る。


「ほら、ハ・ル・た・ん。言ってみて」


「・・・・・・・ハルたん」


「ちょっと待てえええ」


名前を呼ぶのは良い。だが、呼び方くらいは選ばせろ。そもそも、それはアニーだから許されるのであって、アシュレイが使うのはどうかと思うぞ。


そんな感じでアニーとアシュレイの間に入った俺だが、そこにイユキ達までもが参戦して余計にややこしい事になる。



「アシュレイ、主君と呼んだ方がお主には似合うぞ」


「いえ、私の呼び方、我が君こそがとても素敵ですわ。さあ、言ってごらんなさい」


「族長だ、族長。この呼び方が一番だって」


「アシュレイ殿、我らが隊長は主様と呼んでいますので、どうか、ご参考に」


何時の間に来たのか、ユーカレブトまで混ざってやがる。ユーカが俺の生活の面倒を見せる為に、一体置いていった奴だ。


ワイワイと言いあっていたら、突然、アシュレイが俺に歩みよって来た。

その行動に、みんなが急に静まり返って注目する。



「・・・・ハルたん、名前の件、感謝します」


ええ~、それで良いの。

・・・気に入ったなら、別に良いんだけどさ。

どういう分けか、にっこり笑う彼女を見て俺は特に意見する事ができなかった。




 それから三週間の後、俺達はユーカらと合流する。


本当ならもっと早く合流する予定であったのだが、ローナとアシュレイのレベル上げも行う為に、多少の時間をかけたのだ。

ただし、俺とアニーが王都を出てから数日後、何故か森付近を兵士が彷徨く様になったので、それを避ける為に移動しなければならず、それも大幅なロスを招いた。

まあ、その間、あまり大きな動きがユーカ達からも報告はされなかったので、これからの展開に備えようと敢えて合流を遅らせたのも一つの理由だ。

お蔭で、ローナは念願だったレベル10となり、イーブル・ラーナンの基本レベルも3以上の物が誕生する様になった。

実際、数は少ないのだが、数体はレベル4の個体が生み出される様になった。

また、アシュレイもレベルを7まで上げたので、足手纏にはならないはずだ。



 その後俺達は、二つの村の中心付近にユーカの力を使って作られた拠点に入った。


拠点は地形を利用して上手く偽装されており、見た目は木々が生えた小高いただの丘だが、実際は地下もあって広い空間を備えていた。

お蔭で、もうすぐ千に届く数になったイーブル・ラーナン達も余裕で収納できる。

因みに、出入り口はユーカの強欲の根によって開閉するので、普通はそこに入り口があるとは分からない様にもなっていた。

ただ、ここからは村の様子が見えないので、ロータル村の状況を見るには更に移動する必要がある。



「ようこそ、主様。長旅、ご苦労様でした・・・・その子は?」


「ああ、新しいメンバーのアシュレイだ」


「・・・・・」


相変わらず、無口なアシュレイ。だが、変わりにアニーが答える。


「アシュレイは無口なの。ほら、みんなに挨拶して」


促されて、アシュレイがペコリと頭を下げる。

その後、マツリカやターナとの顔合わせも済んだので、俺は本題をユーカに切り出す。



「村を見てみたい?」


「ああ。 今、どんな様子かを知りたいんだ」


その言葉に、マツリカが急に落ち着かなくなり、ユーカもちょっと眉をひそめる。

何か、俺が行っては駄目な理由とかがあるのかな。

事前の報告では、シーゼス軍と思われる連中が暫く彷徨いていたとあったが、もしかしたら、再びまとまった兵力を展開させているのだろうか。


「良いですが・・・遠くから見るだけですよ?」


渋る事情は話してくれなかったが、取り敢えず、俺達はロータル村を見張る事ができる場所へと案内される事にはなった。




「それと・・・村人らしき者を保護したのですが・・・・」


「え?」


事前の報告とかも無かったので、ちょっと驚いた。

村人を保護って、勝手に接触したのか。いや、ユーカの事だ、何かの事情があるのかもしれない。

一応、俺は彼女の話を聞いてみる事にしたのだが、先ずは見た方が早いと言われ、ターナに連れられて来た女の子と引き合わされた。


随分と小さい女の子だった。

年の頃は、三、四歳くらいだろうか。


ターナ達に面倒を見てもらっていたのか、見た目だけは元気そうに見える。

しかし問題は、顔に一切の表情が無い事だ。

喜怒哀楽が無いってレベルではなく、生きる気力の様な物が感じられない。


ユーカの話によれば敵の捕虜だったらしく、どこかの村人の生き残りの可能性が高いとされたが、彼女達にもそれ以上の事は分からなかったらしい。

何故なら一切会話をしてくれないからだそうだ。


ただ、できるだけ集めた情報から、ロンダルと言う村が既に滅ぼされたらしいので、恐らくそこの生き残りだろうとの事だった。

実際、アニーズで確認すると、そうした情報が表示される。

だが、更に興味深い事がその子にはあった。


彼女は二つのクラスを持っていた。

一つは『ペガサスクラス第10位』とあり、これは特に問題はないが、もう一つは『ケルベロスクラス第10位』とある。

ケルベロスは、ハーピー、デュラハン、ワイバーンと並んで、モンスターのみのクラスでは無かったのか。

ただ丁寧に情報を読むと、その理由らしき物が見える。


名称『ルミン・タイラム』種別『イーブル・ローダ系ヒューマス』レベル2

強さ『ペガサスクラス第10位及びケルベロスクラス第10位』影響度『魔女』

『ロンダル村の生き残り。モンスターの魔素を取り込み、それを行使する能力を身に付けた、ヒューマス系の突然変異種。身体強化系魔法を会得している。様々な要素で不安定であり、何時死んでもおかしくない。』


影響度の魔女や、その他にも気になる事があるが、モンスターの魔素を取り込んだ?


イフィールを見た時にも似た様な事が書かれていたが、この子はモンスターから取り込んだとある。一体、どうやってそうなったのだろうか。


クラスを二つ持っていると言う事は、何かしらの形でモンスターの影響を受けたのか?

突然変異種とされている位だから、最初から特別な存在だったのか。

それで、敵にも殺されずに連れ回されていたって事なのか。


実際、『ストライルド(脚強化)』『アーファー(防御アップ)』の魔法を持っているので、それで何かの役に立つと思われたのかもしれない。


色々と不穏な点があるが、一番気になったのは何時死んでもおかしくないと言う物だ。

この子の生気のなさって、もしかして、死にかけているからなのか?


俺は、改めてその子の様子を確認しようと、引き寄せて見てみた。

それに、ユーカ達がちょっと慌てて制止しようとしたが、逆に俺の方が退ける。


頬を触って見たが、特に血色や体温に変化は感じられない。

脈も見てみたが、俺の分かる範囲では、異常と思える様な乱れは確認できなかった。

知り得る限りでは、特に健康的に問題は見えない様に見える。


だとしたら、もっと中の部分、魔素と言う奴が関係しているのかもしれない。


だが、そうだとしたら、俺にはお手上げだ。

アニーズでも、そうした面は確認できないので、何をどうしたら良いのか分からない。

むしろ、本人に何が苦しいかを聞き出す以外に方法は無いだろう。



「ルミン?俺の名は、ハルタ。 君の力になりたいんだ。 何でも良い、喋ってくれ。 苦しい所は無いか?喋るのが嫌なら、体のどこかを指差すだけでも良い。」


「・・・・・」


やはり、反応は無い。

どうしようと困っていたら、横からターナが代弁的な真似をする。


「ルーは、どこも痛くは無いんだよねー。でも辛い事があったら話しても大丈夫だよ?ご主人様は優しいから、ルーの事、助けてくれるよ。」


それに僅かに瞳が動いた感じがしたが、やはり何も答える事は無かった。

暫し思案した後、俺は彼女の素性に付いて尋ねてみる。



「ルミン、君の家族はどうしたんだい。お父さんやお母さんは?兄弟とかは居るのかな?」


それを聞いた途端、ルミンの表情に激しい変化が見られ、そして、堰を切った様に嗚咽を始めた。


「お、おかちゃ、おとと・・・おにい・・・」


しまった、迂闊すぎるぞ俺。考えたら、簡単に分かる事じゃないか。


「うええええええ・・・ん」


それまで黙っていたのが、嘘の様に泣き出すルミン。

どうしようと慌てる俺を他所に、ターナが抱き寄せて慰める。


「泣かないでルミン。もう、大丈夫だから」


見た目的に、ターナもどっちかと言えば子供で、更に武器が変化した物のはずなのだが、やはり女性の姿故に母性本能的な物を持つのか母親の様に接する。


今だに泣き止まないルミンに、アニーも「大丈夫?」と言って心配そうに近寄ってきた。

いや、アニーだけではない、その他の連中も何故か集まってくる。


さっきまで警戒した様子を見せていたはずのユーカでさえ、傍らに座って身体を優しく撫で始めるし、マツリカでさえも何か悲しそうな顔を見せていた。



俺だけ明後日な思考だが、こうした行動は実に興味深い。


自分だけの認識としての話なのだが、彼女達は所詮は武器が人化した存在なので、どこまで人間へ関心を見せるかは謎だった。

特に弱い者への保護意識とでも言うのか、俺が指示を出さずとも対応するのはある種の驚きがある。

イフィールとの接触等でも少なからずその様な部分を見せてはいたが、それはある程度の情報をもらっていたからでもあり、その上で何となく理解できたからこそ対応していた様にも見えていた。

それ故に、感情だけしか無い子供に対して、これだけの対応を独自に取るのは何となくだが安心する部分がある。


いや、それだけじゃない。


初期の激昂するターナとかの事を考えると、メンバーは精神的にも安定した感じが見られる。

少なくとも人として成長を遂げているとも見るべきだろうか。


人として?


何だか妙な感じに俺は引っかかりを覚えたが、それが何かは分からなかったのでそのまま考えるのを止めた。




 ルミンの方は一先ずコチラにおいて様子を見る事にし、落ち着いたら改めて対応すると言う事で決まった。

てっきりターナが面倒を見るのかと思ったのだが、通常の世話はイーブル・ラーナンがやるらしく、数体に引き連れられて行ってしまう。

ユーカ曰く、中核戦力のターナを束縛する事はできないんだそうだ。


うーむ、やっぱりどこかズレてる気もする。


そんなこんなでロータル村の様子を見る為、俺達は移動した。

そこにもユーカが地形を利用した見張り用陣地が作られており、外からは分からない様になっている。


そして村を見てみると、割と沢山の人が何やら村の出入り口に並んでいる様子だった。

殆どが一般人と言うか、引っ越しでもするかの様な大荷物を抱えており、それを兵士らしき者が対応している。


「あれは何をしているんだ」


「どうやら他の村や王都からコチラへやって来たらしいですね」


何故?と言う問いに暫くユーカが目を伏せてから、マツリカの方をゆっくりと向く。

それに対しマツリカは口笛を吹きながら知らん顔をしようとした。


「マツリカが主様の名前を出してしまったせいで、何か勘違いでもされてしまったのか、この村は安全だと思われている様です」


「は!?」


「会話が聞こえるギリギリの距離で集めた情報なので確実ではありませんが、村に集って来ている者達の多くは"勇者ハルタ様が守ってくれる村"と言う風に仰っていて、それで避難先として選ばれている様です」


「ゆ、勇者? な、マツリカ? 何してくれてんの」


「た、ただ助けるのも癪だろ。 誰がお前らの命を救ったのか、少しは教えておこうと思ったんだ」


「そんな事したら、今後、動き難くなるだろ。第一、このレパンドルに味方するなんて、決めてないのに」


「べ、別に味方しなくて良いだろ。 人間どもが勝手にそう思うなら、そうさせとけ」


「あのなあ・・・」


「ほら見なさい、マツリカ。 やっぱり、主様が困る事になってる」


「うう・・・ご、ゴメン」


そう言って、マツリカは頭を下げて手を合わせながら謝罪した。

まあ、仕方がない。偽名を使う方法もあるしな。

しかし、噂の広がり方が妙でもある。

勇者ハルタって、何だ。


「まあ、やっちまった事は仕方が無いが・・・マツリカ、お前、勇者なんて言ったのか」


「いや・・・そんな事は言ってないけど。 な?ユーカ」


「ええ。 ですが、噂で広まったなら、途中で尾ひれが付いたのかも知れません」


そんなもんか。しかし、村を守った戦闘から三週間程度しか経っていないってのに、こんなにも過大に伝わる物なのだろうか。

俺は、直接行って確かめたくなった。

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