表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のLVは上がらないのに、  作者: 松戸真 寿司
35/81

~辺境の王者~ -35. マジン






 二つの影が凄まじいスピードで動き回り、接触する度に鈍い音が辺りに鳴り響く。


「ははは、 良いぞ、出来損ない。この"あ"の速度にここまで付いて来れるとは、なかなかにやる方だ」


「そうか、なら、これでも喰らえ。 必中の一閃!」


ハイパーマツリカとでも言える彼女から放たれた一撃は、ミズツノシシオギを真っ二つにし、更にはその背後の木々まで一刀両断にしながら弾き飛ばしていく。

普通に考えれば致命傷どころか、即死レベルの攻撃だった。


しかし、真っ二つにされたはずのミズツノシシオギは割れた部分から綺麗にくっつくと、何事も無かったかの様に再びマツリカに襲いかかる。


「確かに攻撃力だけを取れば、この"あ"にも匹敵する。だが、防御はどうかな?」


瞬間、目で捉える事ができない程の速度でミズツノシシオギが剣を振るった。そのあまりの速度にマツリカは反応できない。

辛うじて鎧がその攻撃を受け止めはしたが、重い衝撃を伴うその攻撃によってマツリカは弾き飛ばされ、派手に地面を抉って後退させられる。

見ると鎧にはヒビが入っていた。


「「ヤバイじゃねーか。あんなの何度も喰らったら終わるぞ。どうすんだ」」


「ええーい、少し静かにしろ。これも策だ」


「「策ぅ~? あんた、何時も力押しじゃねーか。何? どんな策があるってのよ。おにーさんに教えてみろよ」」


「この~、実体が無いからって調子に乗って。後でぶん殴ってやるからな」



「何を一人でブツブツと言っておる。あの世に行く前に、念仏でも唱えているのか?」


嫌らしく笑いながら、ミズツノシシオギが余裕をカマしながら近付いて来る。


「必中の一閃、必殺の斬撃、全防御喰い破り、そして、彼方の果て」


足が動いたと思った瞬間、マツリカの姿が消える。超高速の攻撃を繰り出したのだ。


が、それも完全に見切られ、ミズツノシシオギが剣で刀を受け止める。


「ククク・・・これで最速か? あの赤い残像の娘の方が速い気がしたぞ」


「くっ!」


刀を一瞬引いてから振り抜き、その反動を利用して距離を取るマツリカ。


やっぱり駄目か。

今のマツリカはブーストとかバーストとか大層な名前や強そうな評価はされているが、こっちのレベルはまだ106程度。

対して向こうは190もある。単純に考えても2倍近い開きがあるのだ。

オマケに奴が言っていた通り、攻撃力は互角だとしても防御や耐久力に差があり過ぎる。

本当に、このままマツリカに任せて良いのか。



「あのマツリカ・・・もしかして・・・?」


ターナは安全圏に離れながらも、二人の戦いを見守っていた。しかし、ただ移動したのではなく、主人たるハルタの姿も探したのだが、それが見つからない。

彼は、マツリカと一緒に居たはずなのだ。

それを考えた時、ターナはさっき感じた妙な感覚からありえないと思いながらも、一つの考えが頭を過っていた。

それは半分は当たってはいたのだが、マツリカの特性を危険な方向へと捉えた物だったので、最悪な事態を想定していた。


「ご主人様の血が・・・足りない・・・」


ターナは蹌踉めきながら歩く。

敵は恐ろしく強かった。これまで戦ってきたモンスターたちの比ではない。

実際、ターナは奥の手に近い方法で相対したのだが、それでも何とか立ち塞ぐ程度しかできなかった。

しかもそれは、彼女を彼女たらしめる今まで溜めた主の血肉を、文字通り消費させてもやっとの事だったのだ。

バンドラナ相手に見せた全身を攻撃手段とする方法も使う隙きも伺っていたのだが、近付くことさえ困難であった為に遂には使う機会もなかったし、今から考えれば例え使ったとしてもどれ程の効果があったものか。

それだけ、相手の強さは規格外だったのである。


ただし、使わなかった理由は他にもある。それはやはり、万が一の場合はハルタを抱えて逃げる為の余力をどうにか残そうとしていたからだ。

だが、その中途半端な判断が今は彼女の体力を完全に奪っていて、行動不能寸前にもしていた。



「ターナ」


呼ばれて振り返ると、ユーカとローナが居た。


「ターナ、何があったのです。主様は、彼はどこに?」


「分からない。でも、もしかしたら、マツリカがご主人様を・・・・」


「マツリカ・・・? !! まさか!?」


「何だ?マツリカが、族長をどうしたって言うんだ」


ローナはその答えの意味を感覚的に分かっていたが、彼女もまた、それを否定したいが為に敢えて聞き返した。

だが、それには誰も答える事はなかった。

それどころか、ユーカは口を両手で覆い、明らかに取り乱して返事どころの様子ではない。


直感的にユーカは、マツリカがダオウルルズと同じ事をハルタにしたのが分かった。

あの時とは違い姿に異様さを感じなかったが、逆に言えば不都合なく取り込んだと見る事もできる。

もし、そうであったなら、ハルタは完全にマツリカに乗っ取られたのかも知れない。


「そ、そんな・・・主様・・・・」


尚も取り乱そうとするユーカであったがしかし、それをローナが両肩を掴んで揺すぶった。


「しっかりしろ、ユーカ。 族長は大丈夫だ。それと、マツリカを信じろ。 もし、お前が考えている通りの事が起きていたとしたら、俺達だって影響が出ているはずだ。そうだろ?」


そうは言ったが、実はローナにそうした事への根拠と自信は一切ない。

嘘でもそうしておかなければ、自分も含めて全員が動けなくなる。

そう考えての言動だった。


「・・・え、ええ。 そうね、そうだわ」


「よし。 今、この場でのリーダーはお前だ。どうすればいい」


「と、取り敢えず、ヴィーダルを移動させて、修復しましょう」


涙を拭いながら、ユーカが答える。


「もう一度戦うのか」


「いいえ、万が一に備えるの。 逃げるにしろ、時間を稼ぐにしろ、私達に残された最大の戦力よ」


二人は頷きあった。




 ユーカ達に余計な心配をかけているとは知らない俺は、ミズツノシシオギと戦っていた。

正確には、俺の身体に吸収したのに主導権を握っているマツリカが、だが。


「「他に無いのか。これじゃ、最初の頃と変わらないぞ」」


「ハルタ、ちょっと黙りなさい。集中できない」


「「そんな事言ったって・・・き、来たぞ。避けろ」」


言い終わらない内に、ミズツノシシオギの斬撃がマツリカと俺の肉体を襲う。

初撃だけは何とか受け流したが、連続して繰り出された奴の攻撃を数発喰らう。


凄まじい攻撃を一通り浴びたが、僅かな隙きを付いて反撃を試みるも、それも容易くかわされた。

しかも、幾つかの攻撃が通ったのか、マツリカの兜が割れ、地面に落ちる。

それによって彼女の赤髪が露わとなり風になびく。




「変・・・ね」


リディとイユキを回収しながら、ユーカが漏らした。その顔には既に冷静さが戻っている。


「何がだ」


回収を手伝っていたローナが聞き返す。


「マツリカがダオウルルズにした様な力を使っているとしたら、異常性が見られないと言うか・・・・むしろ、神秘性すら感じる。それに、あの化け物相手にあそこまで戦える物なの」


戦いの場に直接居た分けではないが、周囲の状況からユーカには容易に相手の強さが想像できた。

高い防御力やタフさを持つリディやイユキが簡単に倒れている上に、ヴィーダル二世の被害状況、そしてターナやアニーのやられ具合を見ても、一対一でどうにかなる相手ではないのが分かる。

それなのに、押されている様に見えているとは言え、マツリカは致命傷を受ける様な攻撃を一切喰らっていない。

どこか、違和感を感じるユーカだったが、それは同時に彼女に希望ももたらしていた。




「「マツリカ、マツリカ」」


「えーい、静かにしろと言うに」


「「だ、だって、お前、頭。兜を割られたぞ、大丈夫なのか」」


「兜を割られただけだ。 それに、これは幾らでも再構築される」


「「へ~、そんな便利な兜なのか・・・・って、ちがーう。頭に怪我をしなかったか聞いたんだ」」


「ふん、あんな下手くそな剣をまともに喰らうか。かすり傷一つ受けてないわよ」


強がるマツリカだが、全体を見回すと少なからず怪我を負っている。言ってる事と違う。




 出来損ないにワザと付き合ってやっていたが、"あ"はとっくに奴の狙いに気が付いていた。


恐らくだが、こちらが大技を使うのを待っているのだろう。

例えば、先程まで使っていた魔法、フレットとかな。


あれは水と空気を極限まで圧縮した物を打ち出し、触れた瞬間に爆発させる魔法で、雑魚を消滅させるのに便利だ。

高威力故に、確かに発動させる為には動きを止める必要がある。

実際、そこを突かれてあの出来損ないに邪魔をされたので、予定の力の半分も出せなかった。

まあ、最初からある程度は手を抜いていたので、余計に威力は差し引かれてしまったが。


そもそも、こんな雑魚どもは"あ"が本気になる程の相手ではない。


今の出来損ないは何やらした様で、基本的な能力は確かに向上していたが、結局はそれだけだ。

"あ"を傷つける程の力は全く無い。

まあ、切り札を残しているのだろうが、それも通じるとは思えない。

なので、敢えて隙きを作ってやる事にする。


この余興にも、そろそろ飽いた。本気で終わらせるとしよう。




「やはり、お前は出来損ないよな。全くつまらん。 今、止めをさしてやる」


そう言って、ミズツノシシオギが両腕を水平に開く。すると、奴を中心に膨大な何かが外に漏れ出し、充填されていった。


「「何だ、アレは」」


「何かは知らんが、勝機だ。彼方の果て、神魔絶刀!」


瞬間、マツリカの姿が再び消え、更には赤い刃の蜃気楼の様な物ををなびかせて斜めに一閃させたかと思ったら、ミズツノシシオギの身体が真っ二つになった。


上半身と下半身で二つに割れたミズツノシシオギの身体はくっつこうとしたのだが、接合部で何故か弾かれ、次の瞬間には上半身がボトッと音を立てて落下し、下半身がガックリと崩れ落ちた。


奴を見ると、信じられないという表情をしている。

やったのか。

マツリカも首だけで振り向き、それを見る。

大技を使ったせいなのか、刀を地面に食い込ませたまま、その場からは動かない。


しかし、驚愕の表情を浮かべていたミズツノシシオギは、僅かな間を置くと、再び嫌らしく笑った。


「この程度が切り札とはな。やはり、出来損ないよな」


すると、奴は腕と足の一部をそれぞれ剣に変えると、マツリカに受けた切断面を自分で切り離す。

そして、切り口の部分が波打つ様に活発に動くと、上半身と下半身が再びくっついてしまった。


「残念であったな。この程度、"あ"にはかすり傷にもならない。そして、これで終わりだ。 死ぬが良い、プルトゥール・デビス」


デビスだと?

ダナウン・ダナンザが使っていた、あのブレンダン・バーズにも匹敵する魔法か。

いや、プルトゥールとか付いているって事は、更にその上を行く奴なのか。


「「逃げろ、マツリカ!」」


それに一瞬だけ反応して、マツリカは体ごと振り返った。

だが俺の叫びも虚しく、マツリカはその攻撃をまともに浴びた。



青い帯状の閃光がマツリカを完全に包み、俺にもその姿が見えなくなってしまう。

更にはその背後も容赦なく打ち抜き、木々が消し飛んで地形さえも変える。


俺は幽体みたいな物だからか、そのプルトゥール・デビスとかの影響は一切ないのだが、同時に何もできない。

もし汗をかく事ができたなら、きっと嫌な感じの脂汗を大量にかいていたはずだ。

これは、幾ら何でも絶望的だ。


と、何かが弾ける音と共に、大きく空気が抜ける様な音がして、次の瞬間にはプルトゥール・デビスが掻き消されると同時にミズツノシシオギの両腕が爆ぜる。


「何!?」


その光景に、初めてミズツノシシオギが本当に驚いた様な声を上げる。


水蒸気の様な煙が辺りに充満していたが、やがて、それらを纏いながら赤髪の鎧を来た女が歩み出た。


「ば、馬鹿な、あの攻撃をまともにくらって無事なわけが・・・」


「無事では無かったさ、功相打つを最小限で使ったからな」


マツリカが言った通り、彼女の鎧の幾つかが剥ぎ取られて肌が顕になり、その顔にも傷の様な物が見える。


「お前が見抜いた通り、大技を使う瞬間を待ってたよ。 ただし私は、発動直後を狙っていたがな。そして、これが私と主の本当の力だ。特と味わえ」


言うが早いか、マツリカの全身から赤黒いオーラと言うか、エネルギーの帯の様な物がほとばしる。


「こ、これは。 この強大な魔力は・・・・!?」


「喰らえ。正真正銘、神魔絶刀!!」


大技の発動後で体が動かないのか、ミズツノシシオギはマツリカの振り上げた何かを呆然と見上げる。

それに対しマツリカが先んじて動けたのは、ダメージ覚悟でカウンター技らしき攻相打つを最小限で使い、既に神魔絶刀と言う技の発動準備に入っていたからなのだろう。


赤黒い更に巨大な蜃気楼の様な刃が、ミズツノシシオギの身体を丸ごと薙いだ。



「こ・・・・」


ミズツノシシオギが何かを叫んだ様な気がしたが、それが発せられる前にマツリカの技が諸共掻き消した。


赤黒い蜃気楼がゆっくりと消え、それと同時に辺りは静けさだけが支配していく。

それを確認した後、マツリカはゆっくりと刀を鞘に収めた。その収める音が何故か大きく響いた様な気がする。


「ふん、だから言ったであろう。その余裕が命取りになると。 と、もう聞いておらんか」


「「終わった・・・のか? それに、あの技は一体・・・・」」


「神魔絶刀。 あらゆるものを切り伏せる大技だ。これを喰らっては、どんな奴であろうと倒せる。

まあ、使う為にはそれなりの力が必要だし、発動する際にはかなりの魔力のタメが必要になるが、貴様の身体のお陰で何とか使えた。

もっとも、それも、敵が大技使い終わって硬直する寸前を狙うという、私の判断あってのものだがな」


腕を組み、マツリカは誇らしげにその場に仁王立ちする。

何と言うか、最初は俺の事を持ち上げていた様な気もするが、最終的に凄いのは自分だと言わんばかりだ。



「「そうか・・・・じゃあ、そろそろ、俺の身体を返してもらおうか」」


「ふーん、だ。」


「「は? フーン、じゃねえよ、早く返せ」」


「戦いの最中、色々と好き勝手言ってくれた罰だ。 後少しは、このままでいさせてもらおう」


「「ふざけんな!」」


「フフ、ハルタの身体を独り占め出来るなんて、結構悪くない」


そう言いながら、自分の身体を擦るマツリカ。何か、悪寒を感じる俺。


「「マ、マツリカさん、俺が悪かった。 謝るから、どうか早めに身体を返して・・・・」」


「断る」


幽体のまま、俺は頭を抱えて天を仰ぎ、あーっと言った顔をした。




 その直後だった。激しく土煙を巻き上げ、青い膨大なエネルギーを撒き散らしながら、再び奴が、ミズツノシシオギが姿を現した。


「おのれ、おのれえ!」


誰を見るでも無いが、その目は怒りに燃え、顔は憤怒の形相をしている。


ただし、顔も身体も半分が大変な事になっており、酷くただれて無残な姿になっていた。


「こ、こいつ、神魔絶刀を喰らったのに・・・!」


驚愕の声を上げながらもマツリカは再び刀を構えたが、それに反応したミズツノシシオギから高圧縮された水の帯が飛ぶ。


寸前でそれをかわしたマツリカだったが、あまりの勢いに手を出せない。


「この・・・・必殺の斬撃」


ダメージを喰らうのを構わず、マツリカが反撃する。

魔力が乗っている為か、最初に使ったのとは威力も速度も違う斬撃がミズツノシシオギを捉えると、そのまま吹き飛ばし、再び動かなくなった。

同時に、マツリカも奴の攻撃を喰らって地面を擦りながら飛ばされる。


「「やったか?」」


「まだだ、止めを刺してやる」


そう言ってマツリカが再び構えを取る。

と、ミズツノシシオギが半狂乱の声を上げて宙を舞う。更には、全方位を攻撃する魔法を使った。

恐らく、ウオントの魔法だろう。

辺り構わず水弾が乱れ飛ぶ。その威力はダナウン・ダナンザが使った奴よりも数段高い。

それ故にマツリカも防御せざる得なかった。



「おのれええええ、出来損ないごときがあああ。 良くも、この"あ"の身体に怪我を負わせてくれたなあああ。もはや、一切の容赦はせん。 何もかも、全て破壊し尽くしてくれるわ。 クーリュー!」


宙に浮かびながら叫んだ奴の周りに、池の水を始めとして大量の水が集結して行く。

そして、それはやがて形を成して行き、最終的には巨大な竜の様な姿となった。


「「こ、これは」」


俺は、目の前の光景が信じられなかった。水の竜の大きさは半端ではない。

その全長は恐らく十数キロにも及ぶ。実際、尻尾に当たる部分が霞んで良く見えない。


池の水だけではない、最近降ってここいらに溜まった雨水までも掻き集めたって感じだ。


「フフ、アハハ。 我が偉大なる力、このクーリューの恐ろしさ、特と味わえ」


ミズツノシシオギが手を上げるのと、マツリカが再び必殺の斬撃を飛ばすのはほぼ一緒だった。


それにより、奴は再び吹き飛ばされたのだが、同時にクーリューとやらで生み出された巨大な水竜が天に昇り、重力をも利用した圧倒的な水量が俺達を襲った。


その水圧と膨大な水により、木々は簡単にへし折られて流され、地面さえも大きく抉れて地形その物も変えてしまう。

濁流は留まる所を知らず、水位より低い土地は全て飲まれていった。





 辺りは荒れ狂う水が轟音を巻き、辛うじて高さを伴う地形だけが何とか洪水の合間に姿を見せるという有様だった。

その辛うじて残った地形すらも、脆弱な地盤はやがて削られ飲み込まれ、その姿を消す。


それでも幾つか残る地面に、青い者が蹲っていた。



(こんな事があって言い分けがない。この"あ"が、無様に撤退するなど)


だが、あの力は一体何だったのだ。たかが出来損ないと侮り過ぎたのは確かだが、どこからあんな力が出てきたのだ。

"あ"の再生能力さえまともに働かないなど、これでは本当の技ではないか。

まさか、本物のマガツノミホロだとでも言うのか?

いや、そんな事はありえない。

あれは、"あ"が誕生する以前に破壊されたはずだ。

それ故に、馬鹿どもは"あ"を頼ろうとしたはず。


何れにしろ、このままでは済まさん。

必ず力を取り戻して、全ての出来損ない共々、皆殺しにしてやる。


身体の半分を失ったミズツノシシオギは、ヨロヨロと歩きながらその顔を憎悪で満たす。

その姿も、やがて巻き上がる水飛沫と地形を飲み込む土煙によって、次の瞬間には消えていた。




 その遥か後方、やはり僅かに残る地形に二つの人影があった。


赤髪の者が一方を支えてはいたが、両者は彼方を凝視して微動だにしない。

その先には、今も荒れ狂う水のうねりが、土とも水ともつかない煙を巻き上げ霞ませていた。

それは辺りに広がっていき、その二人の姿も飲み込むと、やがて判別できない程に濃度を増していった・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ