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俺のLVは上がらないのに、  作者: 松戸真 寿司
16/81

~辺境の王者~ -16. ボスモンスターの池 その2





 強烈な光にバンドラナが怯んだのか、俺を掴んでいた手を放した。お蔭で、俺は激しく地面に落下する。


そして、光が収束した時、そこには・・・・・ターナよりも更に小さい、どう見ても幼稚園児くらいだろうと言う女の子が、ホーンドヘルメットを腕に握りしめて立っていた。

茶色っぽい髪の毛に、これまた茶色の可愛らしい服を着ている。


人化?防具が?いや、このパターンは覚えがある。

俺は、アニーズを使ってみた。


名称『ナックル・ホーンドヘルメット』種別『打撃兜』レベル1


いやいや、いやいや、ヘルメットは被るものですから。打撃兜って何?

混乱する俺を他所に、小さな女の子は、鼻をフンフンと鳴らし、牛の様に足を掻くと、身を屈める。


「ま、待て。迂闊な事は・・・」


制止の言葉と共に、その子に腕を回して掴まえた時だ、俺は地面から引っこ抜かれた。

そのまま、もの凄いスピードで突進する。

あまりの勢いに、俺の首が後ろに反り返った程だ。


しかし、その突進をバンドラナは容易くかわした。


かわされた先で女の子は見事に着地しターンをするが、俺は無様に地面に叩きつけられる。


「何してるの、危ないよ?」


「いや!あの、まあ・・・・そうだね・・・」


女の子は、一瞬俺に駆け寄ろうとしたが、バンドラナが動いたのを見て、再び突進を仕掛ける。

だが、今度は飛び込んだ所に、横から攻撃を喰らって、地面にバウンドしながら飛ばされた。


「お、おい・・・」


心配して声をかけようとしたら、女の子は何事も無かった様にムクリと立ち上がると、再び突進をかけた。それを、またもや迎撃される。


駄目だ。


人間に近い姿からして、恐らく俺の血を受けて、上位体と言う物になっているらしいが、レベル差がありすぎる。

そもそも、あれは唯の防具で、特殊な物は備わっていないはずだ。勝ち目が薄すぎる。


かと言って、今の俺に何ができる?

ここはあの子を囮にして、一刻も早く、ユーカ達に合流するのが先だろう。

助かるには、これしか無い。



・・・・助かるには、だと?


また、ターナみたいになったら?第一、あの子は誰の為に戦っている。俺の為だ。見捨てて立ち去る何て、そんな真似やって良いはずがない。

だが、どうしたら・・・・・。


「名前だ」


俺は、これまでの経緯から、次のステップに進む手段に気が付く。しかし、名前を与えたとしても、果たして、レベル差をひっくり返せるのか?

見た所、彼女はパワーと防御力、スピードが揃ってはいるようだが、特殊な何かを持った存在ではない。

一応、俺が変な使い方をした事で、武器としてアニーズには認識されてはいるが、言い換えれば最低ラインにやっと届いた段階とも言える。


しかし、他に方法は無い。名前を与えて、何かしらの突破口を開かなければ。

この間にも、あの子は突撃しては、叩きのめされる事を繰り返されているのだから。


「名前・・・名前・・・・」


焦りと混乱、そして目の前で起きているハラハラする様な戦いを見て、名前を考えるのに集中できない。

適当に付けても良いのかも知れないが、それでは可愛そうだ。第一、子供の名前は一生物だから、その後のジンセイヲ・・・


等と、ぐるぐる回る思考で色々とゴチャゴチャ考えていたら、何時の間にか、俺は間違った武器名を軸に、あの子の名前を考えていた。


(兜、クワガタ、角、斧、アックス、アック・・・・・・・)


「アニー!ホーンドヘルメットの子、君の名前は、アニーだ」


その瞬間、ナックル・ホーンドヘルメット改め、アニーの全身が光り輝く。



「ハルたん、僕に名前をありがとう。アニーは、絶対にハルたんを守る」


「ハ、ハルたん?」


少し俺に微笑んだ後、アニーは拳に付けたホーンドヘルメットを、バンドラナへ向ける。

それを見て、バンドラナは面倒くさそうな仕草をする。


アニーは一歩下がると、身を屈めた。また、同じ様に突進するつもりだ。


「アニー、無茶はするな。ここは様子を・・・」


と言いかけた時、彼女は渦状の風をまとって突進した。しかも、その速度は今までとは桁違いだ。

慌ててかわそうとしたバンドラナだったが、余波に巻き込まれて弾き飛ばされ、今度は奴が木に叩きつけられる。


『銘のあるナックル・ホーンドヘルメット・アニー』レベル1 種別『魔法防具型武器』強さ『白虎クラス第9位』影響度『名もなき戦士』

『主に名前を与えられ、その属性を変えて人化した魔法防具武器。防御と攻撃力に優れ、更には突進力もある。また、劣化して効力をなくしていた風の護符が、主の血の力を受けて復活。その補正効果によって、能力の強化も可能となった』


これは、期待して良いのか。風の護符による補正効果ってのが、さっきの渦を発生させたのか。ともかく、名前を与えただけの結果は得られた様だ。後は、この場を乗り切れるかどうかだ。


「グゥウオオオオ!!」


思わぬ反撃を食らった為か、バンドラナが怒りの声を上げて立ち上がる。

四本の腕の内、何も付けていなかった二本を後ろに回すと、籠手を装着して前に掲げる。

なんてこった。

こっからが、本番って事か。


それを見て、アニーが牽制するかの様に地面を足で掻き、一定の距離を取りながら反時計回りに動く。

どうやら、俺から遠ざけようとしているらしい。

と、バンドラナが一旦、俺に向かうと見せかけてから、急ブレーキをかけてアニーに突撃する。アニーは、完全にそれに引っかかった。


一度目の打撃は防いだのだが、二撃目はモロに喰らい、小さな体が弾け飛ぶ。しかし、木に激突する瞬間、再び風の渦が発生し、衝撃を殺す。


アニーズで確認すると、状態『損傷・小』となっている。防御力が優れているとあったが、流石に、こうもやられてしまうと唯では済まない様だ。

このままでは、やはり不味い。


俺は、再びアニーズを使うと、周辺を確認する。幸いにも、ユーカ達の反応はまだある。あそこにまで行ければ、何とかなるはずだ。


「アニー、聞いてくれ。コッチの方角に、仲間がいる。君の突進力を活かして、そっちに逃げるぞ。俺の所まで飛べ!」


大声での作戦会議に、バンドラナが訝しげにアニーと俺を交互に見る。言葉は理解できていない様なので、多分、大丈夫だろう。


「分かったよ。ハルたん、行くよ」


次の瞬間、アニーが風の補正効果を受けて、全力で突撃する。

最初に喰らったのを警戒していた為か、バンドラナは大きく飛んで、かなりの距離を取った。好都合だ。


アニーは俺の手前で急制動をかけると、強引に地面に着地する。


「ハルたん、つかまって!」


俺がアニーに腕を回すと同時に、彼女はその力を使って、全速力でその場を離れた。


補正効果のお陰か、一回の跳躍がかなり長い。そして、速い。

しかも、途中途中で推進力を補填すると言う方法を取る為、いちいち地面に着地して力を溜める必要もない。

これなら、奴を振り切れる。


そう思っていたのだが、予想以上の速度で奴は追いかけて来た。


「アニー、急げ。奴が追いかけて来ている」


それを聞いた瞬間、アニーは跳躍中に後ろを振り返り、ヘルメットを二回ほど振った。

すると、風の弾丸の様な物が飛んで行き、バンドラナを襲う。

しかし、奴はそれすらも難なくかわすと距離を縮め、直ぐ間近にまで迫る。

それを、アニーはジグザグに動いて、何とかやり過ごそうとした。俺も、放り出されない様にするのに必至だ。

背後には、どんど奴が迫って来る。




 ユーカは、理性と感情の間で揺れ動いていた。


本当なら今直ぐ飛び出し、ハルタの元へと駆け出して行きたかった。

だが、目の前のバンドラナと言う敵の強さは尋常ではない。


力と防御は自分を大きく上回り、出入りのスピードでは僅かにこっちが上ではある物の、四本の腕がそれを帳消しにしてくる。

それに、これは勘ではあるが、単純に走る速度でも自分と互角か、レベル差によっては向こうが上の気がする。

大体、数が多すぎる。


何度かのアイコンタクトにより、イユキも行けと言う合図を出してきたが、二人で形を作って漸く有利な状況となっているので、迂闊な事はできない。

せめて、ターナが居てくれれば・・・。だが、それも絶望的だ。


しかし、その一方で別の形でもユーカには確信があった。

これも勘ではあるが、ハルタは恐らくまだ無事だ。

イユキに言われたからではないが、何かをユーカも感じていた。

何がそう思わせるのか、或いは単なる希望的な観測に過ぎないのかは分からなかったが、その小さな物がかろうじてユーカに理性的に留まる事を許していた。





 グングンと近付いて来るバンドラナに、もう駄目だと思った瞬間、俺達は喧騒の真っ只中に出た。


「ユーカ、イユキ!」


「主様!!」


「我が君、無事でしたか」


何とか、間に合った様だ。そのまま、彼女達の元に着地する。

チラッと見ただけだったが、一瞬だけ、ユーカとイユキが泣きそうな顔をした様な気がした。


二人の元に転がり込んだ所で、追ってきたバンドラナが急ブレーキをかける。

アニーも加わり、三人が俺を守る様に囲んでそれを牽制する。


「主様、その怪我は」


「何とか、大丈夫だ。今は、コイツらを倒す事に集中しろ」


短いやり取りをしたが、二人の声には明らかに安堵感があった。



戦闘は、一応のまとまりを見せていた。


イユキとユーカが背中合わせとなり、全方位を二人で対応する様にしていたらしい。

リディは巨大化したまま、相変わらず取り付かれて良い様にされているが、大したダメージは追っていない様で、逆に敵を引き付ける事で、ユーカ達の援護になっていた様だ。

もっとも、多数に拘束される形となっているので、思う様に動けなくなっていた。

そして、皮肉な事に、俺が居なくなった事で、彼女達は攻めに転じる事ができたらしく、それによって窮地を脱したらしい。

ただし、相変わらず、数の不利を覆すには至っていない様で、足止めをくっていた様だ。


「主様、その子は?」


「詳しい話は後だ。取り敢えず、新しいメンバーとだけ言っておく・・・・ターナは?ターナはどこだ」


襲撃を受けた際、ターナはこの辺に寝かせてあったはずなのだが、それが見当たらない。まさか!


「ターナは、奴らに連れ去られました。しかし、今は、この事態を脱するのが先です。主様、場合によっては、覚悟を決めて下さい」


覚悟?覚悟って何だ。ユーカは、何を言っているんだ。

俺は、アニーズを使って、ターナを探す。すると、やや離れた所に、その反応を見つけた。だが、状態が『損傷・中』になっている事を知る。

どうやら、俺と同じで、連中に良い様にやられている様だ。このままでは、本当にターナを失ってしまう。


「ターナ、ターナ!起きろ、ターナ。そのままだと、やられちまうぞ。目を覚ませ、ターナ!!」


あらん限りの力を振り絞って叫んだが、受けたダメージのせいで、俺は咳き込んでしまい、それ以上は声が出ない。


「ハルたん」


「主様、無茶をしないで下さい」


俺はガクリと膝を落とし、その場から動けなくなる。すると、それを待っていたかの様に、無数の矢が飛んできた。

それをイユキが盾で防ぎ、ユーカが俺に覆いかぶさる様にして守ってくれる。

アニーも、ヘルメットを使って叩き落とした。

だが、防ぎきれなかった数本が、俺を庇ったユーカに刺さる。


「ユーカ」


「大丈夫です。このくらい・・・・」


そう言いながら、忌々しそうに、刺さった矢を抜くユーカ。傷口の様な物が一瞬見えたが、抜くと同時に塞がる。どうやら、この程度は問題ないらしい。


とは言え、これでは埒があかない。むしろ、俺と言うお荷物が来た事で、イユキ達の動きを制限してしまっている。これでは、アニーと一緒に別方向へ逃げていた方が、まだマシだったかも知れない。

一体、どうしたら良いんだ。







 誰かが呼んでいた気がする。


何だろう、とても温かくて懐かしい。それでいて、私を突き動かそうとする声。


そう言えば、私はどうなったんだけ。


確か、モンスターの攻撃を受けて・・・・


駄目だ、それ以上は思い出せない。


でも、そろそろ起きなきゃ。あの人を助けに行かないと・・・・


あの人って・・・・誰?

何だろう、何かを忘れている様な気がする。絶対に忘れちゃ行けない事だった様な。


動かなきゃ。立たなきゃ。なのに・・・何で動かないの。


私は、本当にどうしたんだろう。ずっと、体の奥が熱い。

まるで、全身に熱を行き渡らせようとしている様な・・・・・ああ、そうか。

これは、あの人の血だ。私、ずっと、あの人に守られていたんだ。本当は、私が守らないと行けないのに。

そうだ。ご主人様は、私が守らないと。






 ズウゥ・・ン


打開策を悠長に考えていたら、背後で地響きを立てながら音がした。振り返ると、リディが倒されていた。更には、大槌まで取り上げられている。

やられたわけでは無いので、まだ藻掻いてはいたが、足や腕を取られてしまっており、立つことすら許してはもらえない。

その様子からも、バンドラナ達の腕力が良く分かる。

完全に、能力、戦略、戦術的な面で敗北している。このまま、俺達は終わるのか?


その時だった。


「ヒギャー」


鋭い叫びと共に、火だるまになりながら、一匹のバンドラナが転がり込んできた。

俺達も含めて、その場に居る全員が一斉にその方向を見る。

すると、そこには、炎をまとったターナが居た。

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