表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のLVは上がらないのに、  作者: 松戸真 寿司
14/81

~辺境の王者~ -14. 南西の森へ その5





 王都跡に行く時、あれだけ苦労したと言うのに、そこから戻る時は実に簡単だった。


何故なら、複雑な地形もリディの大鎧に捕まって移動すれば良いので、全く問題にならなかったからだ。


移動速度はあまり速くないのだが、それでも俺に比べれば遥かにマシで、これによって一日程度で平坦な場所に到着した。

イユキにおぶられるのは罪悪感があったのだが、これなら格好もつくし気軽に乗れる。

それにより、一日の移動距離も上がり、南西の森にも大分近付く事ができた。

もっとも、それによって遭遇するモンスターの数も半端なく、今度はそれが障害となり、前進速度は落ちたのだが。


現在のパーティ構成は、前衛にイユキ、中衛にユーカ、後衛にリディとなっている。

ただ、この組み合わせは悪いとは言わないが、以前と比べると待ちのスタイルとなってしまうので、敵に先手を取られ易くて思ったよりも苦戦する事が多い。


攻撃力や防御と言った面では申し分ない物の、撹乱や速攻に関しては決め手に欠き、敵に連携する余裕を与えてしまうのだ。

ターナが抜けた穴は、意外と大きかった事を思い知らされる。


そのターナは、今も目覚めない。

だが、少しばかり、良い兆候も見られる様になった。


飲むことは無かったが、唇に含ませて染み込ませる様にして、毎日血を与える事だけは続けていたら、ターナの赤い模様部分が拡大し、更にはその真ん中から人間の肌の様な物が現れた。


だからどうだという分けでも無いが、変化が見られる以上、何らかの希望はある様に思える。


実際、血を与える際には、彼女が握っている短剣を利用している。それで切る事ができるのだから、少なくとも武器としては死んではいないはずだ。

また、血による変化は、ユーカにも見られる様になった。


以前は関節が剥き出しで、人形そのままっと言った感じだったのだが、気が付いたら、その関節部分が覆われて見えなくなってしまっていた。


更には、表面も人間に近くなった。


まだ木の様な質感と色ではあるのだが、比べる物が無いとそれも分からない程に、大分人に近づきつつある。

同時に、運動能力の面でも向上が見られ、レベル以上の強さを発揮しつつあった。


イユキも相変わらず血を欲するが、こっちは特に変化は見られない。因みに、レベルは8にまで上がっている。


一応、リディにも血を与えたのだが、何故か、一回飲んだだけで以降は遠慮する様になった。

理由を聞くと、影響が強すぎてバランスが崩れるとの事。

何のバランスなのかは分からないが、元々、彼女は禁呪等を施されて誕生した上に、更には無茶な実験台にもされていたので、余計な物を取り込むとおかしくなるのかも知れない。


それがキッカケでもあるが、俺は最近、自分の血が実は特別では無いのかとも考える様になった。

武器が人化する秘密は、実は俺の血にある・・・と言い切りたいのだが、それだけでは説明できない矛盾も多いので、やはり結論付ける事はできない。


例えば、ユーカ。

彼女は人化する時に、俺の血など関係なく変化した。まあ、それ故に、人形よりの姿で変化し、血を与えた今になって人に近くなったとも考えられる。

しかし、少なくとも、もう一つ、血とは関係なく人化したリディの例もあるので、人化に影響は与えるが、キッカケでは無いのかもしれない。

もっとも、リディの例は特殊過ぎる上に、この一例によって更に謎は深まってもいる。


俺は、てっきり武器だけが人化するものと考えていた。


と言うのも、当初、イユキは防具として分類され、人化の要素であるレベルの項目が無かった。

それが攻撃に用いる事で、特殊とは言え武器に種別が変化し、それによって人化してしまった。


種別で判断するならば、ゴーレムはどの例にも当たらないし、どの例にも当てはまってしまう。

だとしたら、人化するキッカケや条件、更にはどの様な物が当てはまるかの境界が、さっぱり分からない。


まあ、もしかしたら、この世界の武器や防具が単に特別だって可能性もある。


何にせよ、他に比べられる存在が居ない上に、人化させた例も少ない以上、全ては憶測の域を出ない。


そして、もう一つの謎が俺を悩ませる。それは、持ってきたクロスボウだ。


アニーズによれば、ハッキリと武器と分類されているのに、コイツはレベルの項目が除外になっている。

実際、攻撃を仕掛けても経験値が入ってこない。

遠距離攻撃要員が手に入るかもしれないと期待していたのに、ガッカリだ。

いや、イユキの例もあるのだ、何かが足りないだけなのかも知れない。

ただ、その足りない部分が矢ではなく、クロスボウ本体で直接攻撃する必要がある場合は、諦めるしかない。

そんな事したら、確実に壊れる。それでは本末転倒だ。

一応、このクロスボウによって、俺も援護として戦闘に参加はできる様になっているので、今は失うわけには行かない。


現に今、このクロスボウによって目の前の敵に対し、ある程度の抑止が行えているのだ。




 俺達は今、モンスターの軍団と戦っていた。軍団と言っても、俺が勝手にそう呼んでいるだけだが。


モンスターの名前は『バンドラナ』

強さは『ワイバーンクラス第8位』危険度は『歴戦の戦士』となっていて、レベルは12から14。

腕を四本生やしたリザードマンと言った風貌で、武器だけではなく盾や防具を身に着け、更には役割分担を持って戦ってくる。


説明にも『独自の文化を発達させたモンスター。戦闘においても、それを遺憾なく発揮して戦う。恐ろしいのはその社会性で、組織化され、良く訓練された仲間と共に行動する為、単純な力押しで勝つのは難しい』とある。

説明には無いのだが、恐らく、知能レベルも高く、更には技術的な面でも優れたモンスターと考えられる。


何故なら、身につけている防具や武器は、歪な形状はしているが、彼らに合わせてどれもしっかりとした作りをしていたからだ。

ただ、武器の一つ一つは大きくて如何にも重そうなので、手に入ったとしても俺には使えそうにない。逆を言えば、攻撃力もそれだけ高いという証拠だ。


そいつが二十匹居るのだが、十匹が前に並んで隊列を組み、五匹が弓矢を構えて背後で支援を行い、更にその奥に一段と良い装備をした五匹が控えている。

動きを観察するに、一匹は指示の様な物さえ出していた。

まさに、軍団と呼ぶに相応しい。


実際、俺達はその巧みな連携の前に攻め倦ね、逆に追い込まれている。


イユキ、リディのどちらかが突っ込めば、前衛が囲む様にして足止めし、更には後方の俺達を狙おうとする。

かと言って離れたら、弓矢による遠距離攻撃を繰り出し、こっちに体勢を整える暇を与えない。

一度、ユーカがその速度を活かして前衛を突破して弓兵を狙ったのだが、後ろに控える五匹がカバーしてくるので、全くつけ入るスキが無い。

また、後方の五匹はレベルが14と最も高く、技術も含めて戦闘力が高い。


オマケに戦闘経験も豊富なのか、決して無理をしない上に、チャンスとあっても陣形を維持する事を優先する為、崩すことすら難しかった。

恐らくだが、こっちが決定的なミスをするのを狙っているのだろう。

実際、幾度かの戦いの後、弱点は俺だと分かったのか、優先的に狙われ始めた。

これにより、イユキとリディはカバーに入るのに必死で、突撃すらできない。


数的不利を補おうと、背後に木が密集する場所を背に選んだのが、逆にそれが逃げ道を絶ってしまって不味い状況だ。


数的な不利もあるのだが、ターナの様に速度と攻撃力を持つメンバーが居ないので、柔軟な対応ができないのも痛い。


俺も、クロスボウで反撃を試みるも、隙間無く並べられた盾の前に防がれる。

ただ、俺にも攻撃力があると分かったのか、向こうも突撃を仕掛け様としたのに止めているので、全く役に立っていない訳では無い様だ。

だが、一体どうすれば、この状況を打破できるのか。




「主君よ、ブレンダン・バーズの使用許可を願う」


「ブレンダン・バーズ?」


確か、ドノロファルを倒した遠距離攻撃か。俺は直接見ていないが、その跡を見ただけでも、その威力は十分過ぎる程に理解できた。

当てれば一気にカタをつけられるかもしれないが、あの武器は威力が高すぎる。

それに、発射には多少の時間を要する上に、その間は無防備になるのではないか。

それを、連中が見逃すとは思えない。しかし、これ以外に打開策は・・・・。


それ以前に、疑問に思う事がある。

それは、リディの能力だ。ドノロファルを倒した時、話を聞くに、速度面でも圧倒していたらしい。

なのに、今のリディにはそれがない。

安定した結果、逆に幾つかの能力が損なわれてしまったのか。



「ブラットン。あれなら、使用を許可する」


以前のポンコツゴーレムの時は、闇雲に繰り出していたので無駄に終わったが、今のリディなら、効果的に使えるのではないだろうか。


「分かり申した。では、主君よ、そして他の方々よ。危険なので、我が背後へ」


それを聞いて、イユキが俺達を守る様にして後退する。

それを確認した後、徐にリディが大槌を振り上げた。


「ブラットン!」


地面に叩きつけられた一撃が、衝撃波を伴って周囲に拡散される。

その威力に、イユキさえも盾を支えにして耐えるのがやっとだ。

俺達も、彼女に捕まって何とかやり過ごす。

しかし、収まったと思った瞬間、二撃目、更に三撃目が繰り出される。

振り回される体勢で見ると、バンドラナの連中も地面を転がったり跳ね上がったりして、陣形を維持できない。

そして、ブラットンを繰り出しながら、リディが前進する。

行けるか?


と、背後に控えていた五匹の内の一匹が、何かラッパの様な物を鳴らした。

それにより、一目散に撤退して行くバンドラナ達。

それはあっと言う間の出来事で、後には静けさと共に俺達だけが残された。


撤退した・・・・?


アニーズで確認するが、とっくの昔に遠くに離れていってしまっている。

戻ってくる様子も無い。どうやら、この付近のモンスターを、今までの相手と同様に考えては行けないのかも知れない。


強力なメンバーが増えた事でまた慢心していたが、高レベルなモンスターは知能的にも高いと見た方が良いだろう。

もしくは、戦闘経験が豊富である為に、戦い慣れしていると見るべきか。

何れにしろ、単純なレベルアップの為の相手と考えていたら、痛い目に遭う事は間違いないだろう。

今後は、俺もアニーズを積極的に使い、更には戦術や戦略面も考えて、みんなに指示を出す事を考えた方が良いかも知れない。





「う~ん・・・」


俺は、石ころを並べて、今後の陣形に関しての最良の案を考えていた。だが、元から人数が少ない上に、現在は偏った編成とも言えるので、なかなか難しい。

イユキとリディは、攻撃力と防御力はあるのだが、速度面で劣り、ユーカは速度こそあるが、攻撃力と防御力に不安がある。


また、レベルアップを目的にしている以上、前衛にはなるべくイユキとリディを並べて置きたい。しかし、この二人だけだと、側面に回られて抜けられてしまうので、今度は後方に控える俺が危なくなる。

ターナがもし居たら、前衛にリディとイユキを並べ、中衛にユーカと一緒に入ってもらう事で、ある程度は問題を克服できたかもしれない。

まあ、ここで一番の問題は、結局は俺の弱さなのだが。


「駄目だ。分からん」


そう言って、俺は仰向けに寝っ転がった。木々から溢れる日差しが心地良い。

俺達は今、小休憩を取っている。本来ならば、高レベルモンスターがウロウロしている地で、こんなにノンビリとはしていられないはずなのだが、ユーカがモンスター避けを行ったので、ある程度は安全に休めていた。

モンスター避けとは、ユーカの体内で浄化された水の事で、聖なる水的な要素を持つらしく、それを一定の範囲で吹き付けておくと、その場所をモンスターが避ける様になららしい。

百パーセント避けてくれる訳ではない上に、効果時間にも限りがあるが、ちょっとした休憩くらいには使えた。


だが、流石に夜はこの付近の森はヤバイので、俺はリディの鎧の中で眠る様にしている。

ここは木々が高く、夜になると真っ暗になるので、視界が殆ど利かなくなる。


一応、リディは暗闇でも見える様なのだが、俺を含む他の者はそうは行かない。

例えアニーズで警戒したとしても、移動速度が速い奴もごまんと居るので、リアルタイムで場所の特定をするのが難しい時もある。

そこに奇襲を喰らってしまうと、対応が遅れてしまう為に、こうした方法を取っているのだ。

中は狭くて眠るには適していないのだが、死ぬよりはマシだ。

因みに、中にはリディも居るので尚更狭い。


基本的に、夜の戦闘は避ける様に言ってある。敵が近づく、あるいは奇襲等を受けたら、全員がリディに掴まり、速やかにその場から移動すると言うのが、この森で過ごす一つの決まりごととなっている。


風に飛ばされたのか、木の葉が俺の顔に落ちてきた。薄っすらと目を開けると、ユーカが顔を覗き込んでいた。


「何?」


「いえ、お疲れではないかと」


「大丈夫だ。ただ、後ちょっとだけ、休ませてくれ」


「了解しました」


そう言うと、彼女はどこかへ歩いていった。



俺は、王都跡での事を思い出す。


星集めの部屋にあった、ボロボロになった武器。あの形状は、間違いなく刀だった。

それ自体は特に珍しい物じゃないが、問題は柄を含む装飾部分だ。

何となくだが、マガツノミホロの物に似ていた。

まあ、外装は幾らでも真似できるだろうから、関連性があるかどうかは分からない。

しかし何故、あの武器だけが一だけ、あの部屋に置かれてあったのか。

そして、あそこで何が行われていたのか。


アニーズに反応は無かったのだが、あの部屋には崩れた瓦礫に隠れてはいた物の、魔法陣の様な物が見られた。

リディに施されたと言う、何かの実験とも関係があるのかも知れない。

そんな風に考えていた俺は、何時の間にか眠ってしまっていた。




「ハッ!?」


慌てて飛び起きると、当たりは暗くなりつつあった。

キョロキョロと見回すと、近くにイユキとユーカが居る。


「どうして、起こしてくれなかった?」


「ぐっすりと眠っていましたので。それに、相当お疲れだったのでしょう。今日はもう、このまま野宿に入りましょう」


そう、ユーカが言った。

確かに、ここ最近は疲れが取れていない感じはしていたが、まさか眠っちまうとは・・・。


「リディは?」


「現在、周囲を警戒中ですわ。ユーカの探知に、少し引っかかりましたので」


今度は、イユキがそう答える。

そして、間もなくしてリディが戻って報告をする。問題は、無かったらしい。



その夜、俺はリディの鎧の中に入って休んでいた。

リディと二人で入っていると言う以前に、狭いので膝を抱える形で身を縮め、壁にできるだけ寄る様にする。因みに、リディの方は立っていた。


「眠れませんか?」


中は真っ暗なので、俺からはリディの様子は見えないのだが、向こうからは見えているらしく、俺の事を気にかけてくる。実は、小休憩の時に眠ったせいか、目が冴えているのだ。


「いや、大丈夫だ。眠るよ」


そう言って、俺は目を閉じる。すると、横側に重みを感じる。リディがくっついて来たらしい。その証拠に、俺の頭を抱える様にして撫でる。子守でもしているつもりなのかな。

だが効果はあった様で、単調な繰り返しの彼女の動きに、俺は眠りへと誘われていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ