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俺のLVは上がらないのに、  作者: 松戸真 寿司
12/81

~辺境の王者~ -12. 南西の森へ その3





 ガキン!


鈍い音が響くと同時に、激しく空気を震わせて、鋭い振動の様な物が辺りに響く。

だが、俺に届くと思った攻撃は、何時までもやって来ない。

恐る恐る目を開けると、両刃斧が大槌に受け止められ、そして視線を落とすと、そこには重甲冑を来た戦士が居た。


「我、主君ノ召喚ニ応ジ、馳セ参ジタリ」


何だ、コイツは?


「ア、アニーズ!?」


『魔導戦士ガレスタ・第24番機』種別『イビル・アイアン・ゴーレム』強さ『白虎クラス第7位』影響度『小規模兵団』

『対変異モンスター用に作られた、アイアン・ゴーレムの一種。禁呪や邪法を用いた事により、通常のゴーレムと違って独立した思考を持って動く。また、歴戦の戦士の技術、戦術、戦略的な知識も取り込んで、あらゆる戦闘に対応可能。起動状態で待機されたまま放置されていたが、主君の呼びかけに応じ、活動を開始した。

因みに、24番機には特殊な術が追加で施された為、不具合が発生している』


魔導戦士?アイアン・ゴーレム?変異モンスター?


新しい情報が次々と飛び込んで、様々な疑問が湧き上がる。

それに、一体どこから出てきたんだ。そして、何故、俺を助ける?


「主君ヨ、御命令ヲ」


何が何だか分からないが、助けてくれたことには間違いない。


「やっちまえ!」


そう言った瞬間、フルフェイスの奥が赤い光を放ち、両刃斧を押し返し始めた。

だが、残りの触手による攻撃を受け、ガクッと膝をつく。

装甲が厚い為か、ダメージを負っている様には見えない物の終始押されっぱなしだ。

そして、金棒の一撃で吹き飛ばされる。


一応、その重量と防御力によって、ターナ達の様に遠くに飛ばされる事はなかったが、その後も愚直に突っ込んでは同じ事を繰り返す。


駄目じゃねえか、コイツ。


戦い方が下手くそ過ぎる。

確か、説明には歴戦の戦士の技術とか知識も取り入れたと書いてあったはずだが、欠片すらもそれが見えない。


攻撃も単調その物で、大鎚をブンブン振り回すだけだ。

それを、ドノロファルは容易くかわす。


「真っ直ぐ突っ込むな。フェイント入れろ。違う、そうじゃない。ああ!」


俺なりに戦い方をアドバイスするが、イマイチ伝わらない。何だか、初めてリングに立つボクサーの試合でも見ている様な気分だ。説明にあった不具合って、これか。


「我ガ主君ヨ、ブラットン、ノ、使用許可ヲ、求メル」


ブラットン?何だそれは。アニーズには何も出てこないぞ。コイツ、もしかして何かの枷があるのか。

どんな物かは知らないが、今の状況を好転させるなら何でも良い。


「良いぞ。ブラットンでも、何でも使え。行け」


「了解。ブラットオオオン!」


そう叫びながら、奴は地面を力いっぱい叩く。すると、凄まじい衝撃波が起こり、俺もろとも地面を抉って吹き飛ばした。


「ブラットン、ブラットン、ブラットオオオオオン!」


狙いも定めずに、ただ闇雲に地面を叩くアイアン・ゴーレムのせいで、辺りは瞬く間に穴だらけになった。

ただし、肝心の標的であるドノロファルには、一切その攻撃は届いていない。

衝撃波が来るタイミングに合わせ、軽やかに跳躍してそれをかわす。

逆に、俺は地面の揺れと衝撃波をモロに受け、立ち上がろうとしてもヨロけたり、転がったりする。


「や、やめ・・・オイ・・・・やめろ!ブラットン、禁止いいい!」


大きく叫んだ所で、大鎚を掲げたまま、やっと止まってくれた。そこに、ドノロファルの一撃が入り、前のめりに倒れ込み足蹴にされる。

それに抗い起き上がろうとするが、ドノロファルが頭を踏みつけて阻止した。

更には、各武器で連続して攻撃し始める。


ただ、相当に頑丈なのか、傍目から見ても凄まじいと分かる攻撃を連続で受けてもヘコむ様子すら見えない。


アニーズで改めて見ると、このアイアン・ゴーレムのレベルが1である事に気が付いた。戦いが下手な理由の一つは、これも原因か?



「我が君」


何時の間に来たのか、気が付くとイユキが側に居た。しかも、脇にはユーカを抱えている。

アニーズで確認すると、イユキの状態は『損傷・小』。ユーカはまだ『停止中』とあった。


「あの大鎧は、何ですの?」


「分からない。何故か俺を助けてくれた。ただ、レベルが低すぎて話にならない」


「そうですの。では、アレを囮にして後退しますわよ」


そう言われて、俺は一瞬戸惑う。

確かに、あのゴーレムは、今のところは役に立たない。しかし、置いて行くと言われると、何だか申し訳ない思いが込み上げる。

弱いとは言え、俺を助けにわざわざ出てきたのだ。しかも、今も懸命に何とかしようとしている。

見捨てて良いものか・・・・。


「イユキ、アイツも連れていきたい」


「何を・・」


「頼む。あの牛野郎の気を引くだけで良い。立ち上がらせる事さえできれば、あのゴーレムなら自力で逃げられるはずだ」


「・・・・分かりましたわ。ですが、我が君は、ここから離れて下さいませ」


それに頷くと、今も意識が戻らないユーカを俺が引き受ける。



「コッチですわ。牛野郎」


俺が下がった方向とは反対側から、イユキがドノロファルを挑発する。

しかし、それを無視するかの様に、奴はゴーレムに槍を突き刺し続ける。

更に挑発を試みようと、イユキが一歩前に出た時だ。

奴は突然、イユキに突進した。


それに対し、盾の先端を地面に突き刺して耐えようとするイユキ。

それでもぶっ飛ばされ、地面に抉る痕跡を残しながら、かなりの距離を後退させられる。

膝を付いた所に、ドノロファルが跳躍して頭上から追撃を仕掛けた。

それをイユキは横っ飛びに転がってかわし、その横腹目掛けて一撃を放つ。

だが、それも背後の触手によって防がれる。

一瞬の静止の後、両者はそれぞれに飛んで、距離を取って仕切り直す。



ユーカを茂みに隠し、イユキがドノロファルの相手をしている間に、俺は身を伏せながらゴーレムに近付いた。


「おい、大丈夫か。立てるか」


「主君ヨ、申シ訳ナイ。我ガ力、不甲斐ナク、更ナル、研鑽ヲ積ミ・・・」


「今は、そんな事良いから。早く立て。逃げるぞ、急げ」


モタモタするゴーレムを急かし、どうにか立ち上がらせる。

しかし、自分で作った穴で転び、その次の穴でもまたもや転ぶ。


もう、コイツ、本当に置いて行こうか?


「ホラ、立て、早く」


巨大かつ重量がある為に俺は手を貸す事もできず、口で急かす事しかできない。

見た目には分からないダメージでも負ったのか、それとも元々ノロマなのか、鈍い動きで立ち上がると、これまた足取り重く歩く。

見ているコッチがもどかしい。


と、急に座り込んで仰向けになり、手足を放り投げる。


「何してんだ、動けよ」


「主君ヨ、我ニ、死ニ場所ヲ。我、ココデ立派ニ討チ死ニ、ニテ、主君ノ為ニ・・」


「あーもー面倒臭い奴だな。俺は、お前を連れて行きたいんだよ。アッチを見ろ。イユキに無理を押して戦ってもらってるのは、お前を助ける為なんだよ。だから、さっさと歩け」


「オオ・・・・主君ノ忠臣ニ、コノ身ヲ案ジテモラウトハ、何トイウ、誉。主君ヨ、今一度、我ニ、力ヲ開放スル許可ヲ、願イタイ」


力の解放とか聞いて、一瞬期待したが、さっきの事を思い出し、直ぐに碌でもない事をしでかすと考え直した。


「力の開放は良いから、さっさと歩け」


「オオ、力の開放ヲ、許可シテ頂ケルカ」


そういうか早いか、ポンコツゴーレムの鎧の隙間から光が漏れ出し始める。


「ちょ、許可してないだろ。やめろ」


強くなる光と、また巻き込まれる事を恐れ、俺は両腕をクロスする様にして顔面を覆った。


光が弱まったのを待ってから、そーっと目を開けてみると、ポンコツゴーレムの胸部が開いているのを目にする。


「これは・・・」


「主君ヨ、我ニ乗リテ、ソノ力ヲ、存分ニ発揮シテ下サレ。イザ」


乗る?

コイツ、本来は誰かが乗って操る物なのか。これは、ちょっと期待できるか。


何と言うか、ちょっとヒーローロボみたいで、これは良いかもしれない。

俺は、胸が高まるのを抑えつつ、ゴーレムの開いた胸部に入ってみた。


俺が入ったのを確認するかの様に、胸部の装甲がゆっくりと閉まる。

中は、人一人が入れるくらいの大きさだ。隙間が殆どないのか、真っ暗で何も見えない。

これで、どうやって戦えと言うのか。



 イユキは焦り始めていた。


パワーと防御には自信があったのだが、このモンスターはその何れでも上回る。

もっとも、その部分だけを見れば、手に負えない程でもない。


問題は、そのスピードだ。


一撃には耐える事ができても、踏ん張った方向とは違う所から攻撃を食らうと、どうしても体勢を崩されてしまう。

それに対して、体をワザと曲げたり飛んだりする事で、何とか衝撃を殺した。


本来ならば、防御補正が全身に施されているので、盾で必ずしも受ける必要はないが、このモンスターの場合は別だ。

盾以外で受けると、少なからずダメージを食らう。

恐らく、自分が持ち主である我が君に聞いた上位体と言う存在で無かったら、とっくの昔にやられていたかも知れない。


とは言え、自分は囮に過ぎない。

主が逃げるスキさえ稼げれば、それで役目は果たせる。後は、逃げながら対応すれば何とでもなる。

そう考えていたのだが、だんだんと余裕が無くなってきた。


チラッと見た時、主がゴーレムを連れ立って移動を開始していたのが見えた。

だが、再度見ると、殆ど同じ場所でまごまごしている。


その後、モンスターの攻撃は更に加速し、受け流すので精一杯で、周囲を確認する暇さえ無くなった。

そして、敵のフェイントに引っかかってしまい、最悪な一撃を食らう。



背中から地面を擦って吹き飛ばされたイユキは、直ぐ様起き上がろうとしたが、体は言うことを聞かなかった。思っていた以上に、ダメージが蓄積されていた様だ。


そこへ、ドノロファルが跳躍し地響きと共に着地すると、両刃の斧を上段に構えた。

この一撃を喰らえば、イユキと言えども唯では済まないだろう。

盾で身を覆いながら、彼女は叫んでいた。


「我が君!」

「オッシャアアア!」



何かの塊が、凄まじい勢いで突っ込んで来ると共に、強力な一撃を繰り出し、ドノロファルを弾き飛ばした。

ドノロファルは、辛うじてその攻撃を武器で受け止め直撃こそ避けたが、そのまま地面を削りながら距離を取らされる。


「キタ!キタ!キ・・・・たあああああ!!」


全身から赤い煙とも光とも言える様な物を吹き出しながら、そこには、あのゴーレムが立っていた。


「これが、主君の力か!漲る。力が漲るぞお!!」


そう、一しきり叫んだ後、身を僅かに屈めると、再び凄まじいスピードでドノロファルに突進する。

そして、大槌を、まるで小枝でも振っているかの様に振り回し、連続で攻撃を繰り出す。


「ッシャアアア!おう、おう、おう、オッシャアアア!!」


掛け声はともかく、そのスピードに、今度はドノロファルが着いて行くのに精一杯となる。




外が全く見えないゴーレムの中で、俺は自分の姿勢を保つのに精一杯だった。

何が起きているのかは、全くわからない。突然揺さぶられたり、急激な加速で後ろに引っ張られる様な重力がかかったり、終いには、ゴーレムが何かを叫ぶ音だけが聞こえてきた。


しかも、片言みたいな喋り方から一変し、流暢に何かを叫んでいる。

と、思ったらまたもや加速し、今度は金属同士が激しく打ち鳴らされる様な音と、ゴーレムが何かを叫んでいるのが聞こえる。


「お・・おい、止まれ。降ろせ」


何度も中から叫ぶのだが、全然聞こえていないのか、それとも聞く気がないのか、ポンコツゴーレムは一行に止まる気配がない。

俺は、手すりがない内部で、手足を踏ん張ることしかできなかった。





イユキは、突然の展開に呆然としていた。

今戦っているのは、恐らく先程の大鎧だろうが、その変貌ぶりはどうだ。

と、ここで主の存在を思い出して、慌てて周囲を見回す。だが、どこにも居ない。


最後に見た辺りに、重い体を引きずって行ってみたが、やはり居ない。


(まさか、あの変な大鎧に何かされた?)


そう思って振り返るが、今の自分にはどうしようもできない。


「イユキ」


呼ばれて振り返ると、そこにはユーカが居た。どうやら、回復した様だ。


「イユキ。何があったのです。あれは、一体・・・・」


「分からないですわ。でも、我が君と何かの関係がある事は確か・・・・。」


言っている内に、何故か涙が零れようとして、慌ててこらえる。何故、このタイミングで泣こうとするのか、自分でも分からない。自分の不甲斐なさか、それとも主を失ったかも知れない不安感からか。

泣きそうな事を悟られるのが嫌だったので、ユーカには顔を背け、これまでの経緯を説明する。


「・・・つまり、主様があの大鎧だと?」


「多分・・・何か、それっぽい事を叫んでいましたわ」


「分かった。貴方はここに居て。私は、周辺を念の為に探す」


そう言って、ユーカは行ってしまった。




「ふはははは!どうだ、我が渾身の一撃。連続したこの技。これこそ、我が力なりいいいいい!

もう、貴様に勝機はない。これで終いだ」


「おい!!」


俺の呼びかけも虚しく、再び急機動と金属音が響く。

駄目だ。調子にのってるか、自分に酔っているかしらないが、こっちの声は聞こえていないようだ。


「オ、オェ。気持ち悪い」


俺は、激しく揺さぶられたせいで、どんどん気分が悪くなっていった。コッチも別の意味で終わりそうだった。





 見た目では、ドノロファルは確実にダメージを負っていた。その証拠に、触手の幾つかはダラリと下がり、体のアチコチに打撃により損傷を受け、変色した跡が見える。

一方で、衰える気配だけは一行にない。


「むぅ・・・主君よ、聞こえるか。こやつ、通常の攻撃では倒せぬかもしれぬ。ブレンダン・バーズの使用許可を求める」


「お・・お前・・・いや、イイ。何でも良いから、早く終わらせろ。そして、俺を早く、ここから降ろせ・・・オェ」


「了解した。聞いたか、我が主君より、貴様を討伐する許可を頂いた。そして、見よ。我が必殺の武器を!」


そう言って、ゴーレムは鎧の一部を展開し、どこに収めてあったのか、砲口の様な物を展開する。

砲口から赤いエネルギーが漏れ出し、それは、ゴーレムの前で収束して、やがて巨大な光球を形成した。

更にエネルギーを注ぎ込まれた光球は、はち切れんばかりに膨れ上がり、漏れ出すエネルギーが周囲に稲妻状になびく。

限界まで来た所で、ゴーレムは、やや身を突き出し


「ブレンダン・バーズ!!」


雄叫びと共に、凄まじい熱量を持った閃光が一直線に解き放たれ、ドノロファルはそれに一瞬で飲み込まれた。



光が収束して行き、ブレンダン・バーズの痕跡が消えると、後には直線上に抉れた大地と、やはり丸く削られた木々の跡だけが残る。

そして、ドノロファルも、跡形もなく消し飛んでいた。

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