~辺境の王者~ -1. 行き成りの危機
「来んな、来んな、来んな!」
俺は、森の中を液体状の茶色の怪物から必死になって逃げ回っていた。
RPG定番のスライムって感じの奴だが、こんなに足が速いなんて聞いてねえ。
オマケに人の背丈ほどの大きさで見た目もヤバイ。
いや、速いっつても十分に振り切れる速度ではあるのだが、スタミナがとんでも無く、かれこれ30分以上は逃げ回っているんじゃないだろうか。
あっちは一定の速度を保ったまま全然疲れを見せている気配がない。
勿論、外からは疲れているかどうかなんて分かる相手では無いのだが、追いかける動作に全く乱れが無く、ずっと一定の速度を出し続けている。
一方でコッチは疲労困憊で、足元が怪しくなってきている。
このままじゃヤバイのだが、軽くパニクっているせいか解決策が全然思いつかない。
それでも俺は何か無いかと『アニーズ』と呼ばれる自分や相手の情報を見る能力を今一度使った。
すると、俺とモンスター、そして俺が持つ武器の情報が頭の中に展開される。
モンスターの名前は『グラッド・ラーナン』
強さは『デュラハンクラス第10位』危険度は『大型の野犬』とある。
このアニーズと言う能力、具体的な数字に乏しく感覚的な表現ばっかりでイマイチ役に立つ感が薄い。
モンスターなのに、モンスター名でクラス分けされる意味も分からないが、第10位と言う部分も最大と最低が説明されていないので憶測するしか無い。
ただ、色々な情報を総合すると、恐らく第10位のこれが最低とも考えられる。
少しばかりのヒントとしてクラスは予め表になっており、該当する字が明るく光る事でそうと分かる様になっている。
それらをざっと書くとこうだ。
玄武 - デュラハン - スレイプニル
白虎 - ケルベロス - マンティコア
朱雀 - ハーピー - ペガサス
青龍 - ワイバーン - キマイラ
この表の意味も良く分からない。
まんま、何かの謎ときのヒントっぽいが、クラスアップ、或いはダウンすると変化すると言う事なのか、それとも、これらは同等と言う意味なのか・・・・。
一応、レベル的な物も出ていて、それによるとコイツはレベル6らしい。
もっとも、その他に数字は出てこないので、これも目安でしか無いのだろう。
他にも情報はあるが、『分解』『同化』『分裂』『雄叫び』『自然治癒』とか、どう考えても俺側に不利な物しか無い。
オマケに『ドレップ』とかいう注釈で射撃とある魔法まで使えるらしく、遠距離攻撃にまで対応している。
解説によると『遥か昔に原生生物が魔法によって変化したモンスターとされ、物理攻撃が効き難くて対処方法を知らないと危険。捉えた獲物を、その掴みどころの無い体内に留め、ゆっくりと消化する』とある。
その対処方法を知りたいのだが、どこを探しても出てこない。
一方のコッチ側だが、俺の名前は『タナベ・ハルタ』とある。
自分の名前らしいのだが本人的にはピンとこない。
薄々感じている事なのだが、俺はコイツに追いかけられる以前の記憶がある時点から消えている。
もっとも今はそれどころじゃないので、無事生き延びてじっくり考えれば思い出せるかもしれない。
不穏なのは俺に関する情報だ。
強さに『百鬼夜行』影響力に『異物』とある。
強さの方は表の方を無視してでっかく何かの警告みたいに『百鬼夜行』の文字が点滅している。
更に、俺にはクラスとか第何位と言う表記が無い。
因みに影響力とは俺の危険度に代わる評価らしい。
ただしレベルは1なので、この評価自体、強さを現してはいないのかも知れない。
実際、それ以外の表記には怪しいのが並ぶ。
特殊技欄には何故か『放浪者』『厄介者』とあり、種別にはハテナマークが出ている。
因みに、さっきのグラッド・ラーナンには特殊技項目に『貪欲な追跡者』、種別に『モンスター・ラーナン亜種』と分かりやすい表示がされている。
だが、それだけじゃない。
他にも『転生者』『学習できない者』『役立たず』『世界の環から外れた者』『底抜けの器』『外道』等、どれもただの悪口じゃないのかと言う事が連なる。
更に説明によると『異世界から来たヒューマスの亜種と思われる生物。この世界の理に合致しない為、一切の恩恵が受けられない。不孝者にして厄介者』と、なっている。
・・・この世界、俺をディスるのに容赦ない。
気を取り直して武器の方に意識を移す。
グラッド・ラーナンに遭遇した時、何故か俺の側に落ちていた武器だ。
名称は、『マガツノミホロ』と言うらしく、種別には『魔法武器』とある。
強さは『青龍クラス第1位』とあり、これはまだ良い。
しかし、危険度に『邪悪な悪魔すら避けて通る存在』とあって色々と怪しさ全開だが、これ以外にも不穏な表記が他にもされている。
特殊技みたいな項目には『破滅の妖刀』とか『全防御喰い破り』とか、『生命力や魔力の吸血』『神魔絶刀』とか、ヤバ気な表記が並ぶ。
更にヤバイのは『使用者取込』とか『精神汚染』とか、パッと見だけでも使う奴を殺る気満々な能力まで持ってらっしゃる。
説明も物騒な言葉が並び、それによると伝説の鍛冶師が作ったとされる魔法武器で、一説によると異界の鍛冶師から知識を得て作ったとも言われており、その能力は神々の武器すら超えると言われているらしい。
一方で使用制限が高く使い熟すのは至難の業とされ、更には、例え使用制限に達していたとしても使う者を尽く取り込んでもしまう為、精神的に耐えられない者はたった一振りでその身体を乗っ取られてしまうらしく、また、耐えられた者であっても振るう度にその精神や肉体を蝕まれ、最終的にはこの武器に取り込まれて命を落として意のままに操られるとか。
使いこなせば世界を屠る事もできるとあって、もはや妖刀とかのレベルじゃない。
チート級の最終兵器だろ、これ。
ただ、その危険性からとある国の魔法使い達によって処分されたとも書かれている。
何でそんな物がここら辺に転がってたんだ?
使用制限なる説明によるとレベル30以上とあり、現在、ロック中というアラート表示がされている。
これのお陰なのか、俺が振るっても幸いと言って良いのか、身体を乗っ取られるとか精神に悪影響が出るとかはない。
その変わり攻撃修正は『木の枝よりマシ』とあって、本来の力を出せない状態の様だ。
他にも独自の魔法や特殊技まで持っている様なのだが、どの道、使用制限に引っかかって俺には使う事ができない。
正直、これを見るだけでも放り出したい気持ちになるのだが、これ以外に武器が無い為、不安の方が勝って捨てる事ができないのだ。
何度かこれらの表記を見比べてみたが、やはり打開策が見つからない。
特に今の俺だと有効な打撃を与える術が何も無い。
一応、最初の遭遇の時に切りつけてやったのだが、手応えが無くてダメージを負っている気配は全く無かった。
ただ、逃げ回って観察している内に、一つだけ打開策になりそうな事を発見はしていた。
あのグラッド・ラーナンとか言うモンスターの中心には、よく見ると赤味がかった核の様な物が見える。
全体的に茶色なので気付くのが遅れたが、アレに攻撃を当てれば何とかなるんじゃないだろうか。
とは言え、実行するにはコッチから近づかなければ行けないので、相当な危険を覚悟する必要がある。
幸いなのは奴は速度こそ速いのだが、咄嗟の対応力は鈍いかもしれないと言う事だ。
最初に遭遇した時、奴は悲鳴を上げる俺とは全く見当違いの所に攻撃を仕掛けていた。
近くに転がっていたこの物騒な武器を手に取って俺も暫く切りつけていたのだが、その間も奴は俺が居る場所とは違う所を攻撃していたので、それを考えると近くの物は大体の位置しか把握できていない可能性が高い。
直線速度が速いと言う事を考えると、本来は体ごと体当たりをして獲物を仕留めるのが得意なので、細かい動作は苦手なのかもしれない。
走りながら覚悟を決めた俺は、徐々に速度を落として奴との距離をワザと詰めさせてやった。
何度も後ろを振り返り、頃合いを見計らって俺は急ターンをかける。
すると奴はそれに気が付かないのか、速度を保って前進するので、今度は俺が慌てて追いかける形になった。
しかし、十数メートル進んだ所でようやく獲物を見失った事に気がついたのか、停止する。
そこへすかさず俺は深々と武器を突き刺し、当たりを付けて薙いでみた。
殆ど手応えは無い。
強いて言えば、ゼリー状の物を箸で割っている感覚だ。
核にダメージを当てたかも分からない。
だが、モタモタはしていられない。
万が一に備えて俺は直ぐ様走り出す。
後ろを振り返ると、暫し静止していた奴が一瞬身体を震わせた。
効果があったのか!?
そう思った瞬間、奴はまた猛然と俺に向かって走り出してきた。
やっぱり駄目か。
一つだけ収穫があったとしたら、やっぱり奴は直線以外は苦手と言う事だ。
危ない時は変則的な動きをすれば逃げられる可能性は十分にあるだろう。
ただし、それをやる時は自分が危機的状況になっているって事だ。
実は、この森のモンスターは奴だけではない。
走る先々に別のモンスターを時々見かけるのだが、そいつらは一瞬だけ立ち止まってヤル気満々で俺を睨む物の、背後から迫る茶色の物体を見て一目散に逃げ出していた。
この森の中では、奴は結構な高ランクモンスターに当たるらしい。
いや、レベルだけを見れば他にも高い奴が居るので、有効な攻撃手段を持たないと相手にしたくないらしい。
しかし、奴への有効な攻撃手段とは何だ?
スライムっぽいので、もしかしたら火に弱い可能性もあるが、道具も何も無いので簡単に用意できない。
更に言えば奴は相撲取り二人分位の大きさなので、ちょっとやそっとの火程度ではあまり意味が無いだろう。
木に登ってやり過ごすか?
駄目だ。
奴が木に登れる可能性だってあるし、何より奴の特性にある分裂が気になる。
もし、獲物を追い詰めて分裂で小型の奴を木に登らせてきたら、それこそ逃げ場が無くなる。
どうしたら良いんだ。
そもそも、何で俺がこんな目に合わなければならないんだ。
俺は、ここに来る以前の僅かな記憶を振り絞る様に思い返した。
確か、俺は何かの災害に巻き込まれたはずだ。
地震だったのか、大洪水だったのかは分からないが、とにかく酷い濁流の中で崩壊する建物や土地を見ていた。
そこで俺は流される建物の屋根に乗っていた。
そこまでは覚えている。
その後、何か強烈な衝撃の様な物が俺を貫いた。
そして気が付くと森の中に居た。
当たりを見回した時、俺の側には刀が転がっており、拾って抜いて見たその直後に背後で蠢く気配を感じて振り返り、奴を見て悲鳴を上げたのだ。
モンスターが彷徨いている時点で、ここは俺の知っている世界じゃない。
しかし、その確信もグラついて来ている。
俺の記憶は災害に遭った所以外は完全に消えており、自分の名前もステータス画面の様なもので確認できたから知っているだけで、全く自覚が無いのだ。
最初は異世界に転生したのだと単純に考えたのだが、それ以外の記憶があやふやなので、どうにも肯定できない。
いや、悪い夢を見ているのだと、半ば現実逃避がしたいだけの言い訳でもある。
実際、俺の背後には今でも例の怪物が迫り、身体は溜まる疲労と足りない酸素に喘いで、否が応でもこれが現実である事を突き付けてくる。
そして、アニーズと呼ばれる能力でハッキリと転生者とされていた。
間違いなく、俺は別の世界に飛ばされたのだろう。
「何かヒントをくれよ!能力表示以外に!」
そう叫びながら俺は又もアニーズを使ってみた。
だが、結果はさっきと何も変わらない。
・・・いや、ちょっとだけ変化を発見した。
経験値の数値が上昇している。それも武器の方にだ。
敵を切りつけたからか?
あと僅かでレベルが上がるらしい。
因みに、マガツノミホロの現在のレベルは、項目除外を意味するらしい一本線で埋まっている。
あれだけ狂った様な能力や称号を持つのに、レベル無しと言うのには違和感がある。
そもそも、武器のレベルが上がったところで俺に何の恩恵があるのだろうか。
ただでさえ使用制限のある武器がレベルアップしたら余計に使う条件が厳しくなったり、下手したら最悪な部分の効果発動条件だけが広がる可能性も出てくる。
だが、打開策が無い以上、他に選択肢は無い。
もしかしたら、レベルアップする事で多少の攻撃力アップが図れる可能性だってあるのだ。
俺は再び急ターンすると、すれ違いざまに一撃を食らわせ、更に反応の鈍さを見越して予測しながら追い打ちをかける。
相変わらずダメージが与えられている様子はない。
しかし、武器のレベルは上がったはずだ。
「アニーズ!」
体力が限界に近づきつつあった俺は、溜まった二酸化炭素の吐き出しと同時に、ストレスの発散も兼ねて叫んだ。
レベルは1になっていた。
が、その他には一切の変化が見られない。
攻撃力も相変わらず『木の枝よりマシ』となっており、何かしらの要素が付け加えられた様子はなかった。
「クソ!」
俺は片腹を押さえながら、いい加減、走ることに嫌気を訴え始めた身体を無理矢理に動かす。
そして、終わりは突然にやってきた。
ガムシャラに走った先に、深い谷が現れたのだ。
意識までもが朦朧とし始めていたので、危うく発見が遅れる所だった。
しかし、問題は別にあった。
止まってしまった途端、身体が走ることの一切を拒否したのだ。
どんなに命じても、もはやその場から動こうとしなかった。
荒い息遣いだけが俺の世界の全てとなった。
谷の裂け目を挟んで向こうには別の大地が見える。
あそこまで飛べたら、もしかしたら助かるかもしれない。
距離はかなり離れている。
だが、全速力で走って飛べば、着地はできなくともどこかに引っかかるかも知れない。
色々と思考だけは巡ったが、身体はそれに応える様な事はしなかった。
時間的にどの位だったのか。
荒い息の中で俺は数時間もその場に留まっていた様な感覚に襲われていた。
その中で、もしかしたら敵は諦めてどこかに行ったのではないかと、都合の良いことも考えていたが、突然襲った生暖かい感覚がそれが間違いだという事を教えてくれた。
首だけで振り返ると、背中から茶色の液体状の奴が覆いかぶさる様にくっついて来た。
激しく打ちのめされるのかと思ったが、案外ゆっくりと優しく覆ってくるので案外悪く無いかもと考えてしまう。
特に痛みも無い。
苦しさの方が勝ってそんな事を考えていたのかも知れないが、茶色の液状の物が顔の近くに来た時、俺は悲鳴を上げて漸くもがき出した。
だが、全ては遅かった。
身体の一部を捻ってどうにか顔だけは引き離したが、左半身は奴にガッチリと捉えられ、全く抜け出せない。
持っていた武器を杖代わりに地面に突き立てそれで抜け出そうとしたのだが、単に奴を引きずるだけで全く状況は変わらなかった。
それどころか奴は左半身を中心にしてジリジリと俺を取込始めている。
体を捻り悲鳴の様な声を上げながら、俺は武器を抜くとガムシャラに振り回した。
相変わらず奴の身体には全くダメージは通らない。
と、触手の様に伸びた奴の身体の一部が、遂に俺の自由になっていた右腕も武器ごと捉える。
そして、正面から奴の身体が俺に迫ってくる。
それでも首を捻って俺は最後の抵抗を試みたが、全て無駄だった。
「た、助けて、助けてくれえ!」
半狂乱になりながら、誰も居ないであろう深い森の中で俺は最後の叫びを上げる。
と、右手が急に熱くなる。
見ると、手の一部分が赤くなっているのが見えた。
(消化され始めている!?)
ヒリヒリする痛みに俺は身体や腕を懸命に捻るが一切無駄だった。
疲れと恐怖と諦めと絶望が同時に俺を襲い、やがて抵抗する事すら一切やめた。
いや、力が抜けたのだろうか。
やめた中で、何で右側から消化するんだろう?
と、先に捕らわれていた左半身に痛みが無いことに疑問を抱いていたら、朦朧とする意識の中で自分が刀の刃の部分を握っている事に気がついた。
藻掻いている内に誤ってそっちの方を持ってしまったのだろう。
痛みは、それによって手が切れた為か。
そう言えば解説の中に、このモンスターは、ゆっくり消化すると書かれていたな。
・・・・等と他人事の様に考えていたら、誰かが何かを言った気がした。
『おお、私に身体が!』
瞬間、連続した風圧の様な物が俺の回りに吹き荒れる。
同時に、茶色の液体が飛び散り、びちゃびちゃと音を立てて周囲にばら撒かれた。
何が起こったのか?
必死になって意識を保ってよく見ると、俺の右手には赤色の髪の毛が握られており、その先には侍風の鎧と兜を身につけた・・・・女性?
どこから現れたのか。
しかし、その女性は俺を一瞥すると、自然な動作で刀―マガツノミホロを上段に構えると、一気に振り下ろした。
すると、見えない斬撃の様な物がグラッド・ラーナンを切り刻みながら吹き飛ばす。
「ふむ、まだ熟れてないのか?」
そう零しながら、彼女は自分の掌をマジマジと見た。
さっきから気になっていたが、口調などとは裏腹にチラッと見える顔はかなり幼く見える。見た目で言えば中学生くらいだ。
その中学生くらいの子が一歩踏み出そうとした時、グラッド・ラーナンから太い何かの音の様な物が鳴り響く。
音圧とでも言うのか、それとも別の効果か、周囲にビリビリとした振動が伝わる。
俺もその圧倒的な何かに押され、その場に這いつくばる。
「ふん、気圧しか。くだらん」
だが、その突然現れた女性だけは、その効果を真正面から受け止め仁王立ちで耐えて見せた。
すると、グラッド・ラーナンが何かを飛ばす。ドレップとか言う魔法か!?
しかし、それすらも彼女は無造作に叩き落とす。
これを見て不利だとでも悟ったのか、グラッド・ラーナンが一目散に逃げ出した。
「待て!」
そう言って走り出そうとした彼女だったが、俺が髪の毛を掴んでいたせいで頭を引っ張られる形となって、俺の方によろめいて尻もちを付いた。
「身体もこの調子か!?」
そう言いながらグラッド・ラーナンが逃げた方向を忌々しそうに睨む。
そしてそのまま、その視線は俺に向けられた。
「何時まで人の髪を握っておるか!」
そう言って乱暴に俺の手を振り払うと勢いよく立ち上がる。
だが、俺の手が離れた瞬間、彼女の手足の色が途端に変化して行き、ブリキの様な物へと変わった。
「き、キサマ!待て、ちょ、や、キャ」
そのままぎこちない動きと共に、勢いの余った彼女は刀と共に崖の下へと落ちて行ってしまう。
その前に、一瞬、姿が消えた気もしたが。
「な、何だったんだ」
俺は手放しで喜べない安堵感と何が何だか分からない展開に、その場にヘタり込んだまま暫く動くことができなかった。