プロローグ 突然の死
「お前は声が小さくて、何を言っているのか全然分からん!」
「あなたって全然人と喋らないよね〜。」
嫌な事ばかり思い出す。なるほど、これが走馬灯なのか。自分から人と関わることをしてこなかった俺に、楽しい思い出なんてないよな、なんて事を自虐的に考える。しかし自分が生きてきた人生に嫌気がさすものの、この苦しい世界で生き続けなくていいんだという安堵もある。
しかし痛い。段々と身体が動かなくなる。そりゃそうだ、コンビニに行く途中でトラックに轢かれてるからこの状況だ。周りに赤い光と人だかりが見える。何を言っているのかよく分からないが、確実に俺の事だろう。人生で初めて注目を集めてしまった、なんてくだらない考えがよぎる。
事故にあったのに随分冷静だなぁ・・・なんて頭で考えていたら、不意に意識が飛びかけた。
「そろそろなのか。」
誰にも聞こえていないであろう声の大きさで呟く。若干の未練はあるものの、特に目標もなく生きてきた自分には、ある種の救いである死が近いことを悟る。救急隊員らしき人が色々と声をかけてくれるが、それもお構い無し。まあおやすみってところだ。そう思いながら深く目を閉じると、意識が暗闇の中へと落ちていった。