はじめに
はじめに
まず、この文章を読んでいるということは、これから始まるこの私のくだらない話に少し興味を持ったということだろうか。それともただの暇潰しか、あるいは偶然目にしただけか。いずれにしても読者となって下さった皆様には感謝の意を示したい。そして、皆様の時間をこの私のせいで無駄に過ごす恐れがあることもここであらかじめ伝えておく。
そもそも執筆のきっかけとなったのは、とある動画サイトでこんな動画を見つけたのが発端となる。
「ドラク○における矛盾を強引に解決していくスレ」
タイトルはこんなだっただろうか。要するにゲーム内でのおかしな出来事、疑問に感じたことを無理矢理解決しようというとあるサイトでのスレッドを動画として配信したものだ。これを初めて見たのは数年前。笑ったり、妙に納得したりと不思議な時間を味わった。その中でも私が特に感銘を受けたのが、この質問と答えだ。
……筆者はうろ覚えだったりするので、一部誤りがあるであろう事もここで述べておく。
Q 何でLV99の勇者や戦士がひのきのぼうで会心の一撃を出してもひのきのぼうは壊れないの?
A さすがLV99だな。武器の扱いを心得てるぜ。
その通りだ。全くその通りだ。LV99ともなれば激戦を掻い潜り、何度も死の淵に立たされ、数えきれぬ怒りと悲しみを受け止め、多くの犠牲を踏み越えた戦いのプロ。そんな戦いのプロでも武器がなければ(一部職業や人種を除いて)、屈強なモンスター達には絶対に敵わない!そう、彼らは理解しているのだ。戦いの最中に武器が壊れる=死であることを!
あ、すまない。つい熱くなってしまったようだ。いつの間にか膝の上に相棒が乗っている。もう、言いたいことは分かってるよ。マスターの使い魔になってかれこれ300年位経つけど、そこら辺はちっとも変わらないね、でしょ?
ちょうどいい。ここで筆者の自己紹介をしておこう。私の名前は『ヴァイサ・コーレイン』。現代を生きる魔法使いで、600年以上は生きている。600年以上生きているといっても外見や肉体年齢は20前後の人間の女性と変わらない。普通の人間ならとっくに寿命を迎えているが、私は魔法の修練を積んで不老の力を得ることができた。歴史の表舞台には絶対に出てこないであろう大いなる危機から世界を陰ながら守護するという『守護魔女』としての使命の元、現代社会に溶け込んで生活している。
育ちはヨーロッパの方だが、生まれは分からない。私は孤児院で育てられた。幼少期は周りからは距離を置かれ、孤独の日々を過ごした。なぜなら、他の子供達は金髪碧眼なのに私だけ黒髪黒眼で顔立ちも東洋系だったからだ。他の子供達が遊んでいる中、私は孤児院中の本をずっと読み漁る日々を送っていた。ある日のこと、私がもうすぐ10歳になる頃だっただろうか。戦乱が私を襲った。後の世に「百年戦争」と呼ばれる戦いに巻き込まれ、私は孤児院を焼け出された。全てを失って。孤児院の先生達も、一緒に生活していた子供達も、一瞬にして消えてしまった。私自身も致命傷を負い、このまま死んでしまうのか、そう思いながら意識を失った。しかし、私は再び目を覚ました。暖かなベッドの中で。
目を覚ました私の前にいたのは一人の魔女。私の師匠である。戦没者の霊を慰霊するために訪れたところ、虫の息だった私を見つけて保護したのだ。傷の治療を受けながら、私は次第に師匠に、魔女の世界に興味を持つようになり、弟子入りを志願した。最初は難色を示した師匠だったが、私の中にとてつもない魔力が秘められていることを知ると、私に魔法のいろはを授けてくれた。師匠の教えを一つ、また一つと修得し、(この頃に魔力で生命力を維持する不老の術法も身に付けた)およそ10年で私は師匠から免許皆伝の烙印を押された。それと同時に世界を陰ながら守護する、という師匠の使命を受け継いだ『守護魔女』となった。そして、師匠は私の元から去っていった。
そうして私は永い永い時を生きている。大いなる危機をもたらすモンスターや悪霊を退治し、陰ながら世界を守護してきた。ただ、それも頻繁に起きる訳ではない。10年に一回か二回、それくらいの頻度だ。その間は人々の社会に紛れて表向きは占い師や手品師等を名乗って生活している。
不老の命を得た私だが、その私に常に襲いかかる敵がいる。それは「退屈」だ。永い時を生きるということは永い退屈とも付き合わなければならないのだ。私の住まいには師匠が残した大量の蔵書がある。辞典から歴史書、果てはおとぎ話まで。そして私自身も読書家なので、世界中のあちこちから本を集めては暇を見つけては読み耽っているのだ。そしてそこに記される文章を読みながら、この登場人物はこの時どんな思いだったんだろう、この場面ではどんな風景が広がっているのだろうと、いつしか必要以上に空想に思いを委ねるようになった。
そう、今から私が執筆していくのは私自身の有り余る空想物語のようなものだ。一番最初に述べた「ドラク○」のスレに触発された私が、ゲームやアニメで抱いた疑問を私自身も解決してみたい、という欲望を満たしているだけに過ぎない。所謂自己満足だ。でも、先程のスレのように一行位で済ませるのはもったいない。その答えの背景も掘り下げていきたいと思う。もしかしたら既存の疑問がこれから出てきて、それがネットでもう綴られているかもしれない。だからここで伝えておく。筆者は最初に述べた「ドラク○」のスレの動画以外は見たこと無い、と。信じる信じないはお任せする。それでも構わない、という読者の皆様には少しだけ私の空想に付き合って欲しい。
それと、
日本のどこかにいるであろう、「ドラク○」のスレの名回答を残してくださった偉大なる偉人に心からの感謝を。
ヴァイサ・コーレイン