第2話「冷たい少年」
ルイレが起きてからはや1週間ー。
ルイレは両親と共に王都マルツヘイムに引っ越しすることになった。
ルイレの父の仕事の関係なのだが、ルイレにはもう一つ目的があった。
そう、「自分を眠らせた犯人を捜すため」である。
「ここが王都マルツヘイム・・・」
「ええ。ルイレ、ここでも頑張っていきましょう!」
「うん、お母さん!」
「ははは、元気だなぁ。ほら、ルイレ。あれが私たちの新しい家だ。」
そう言ってルイレの父が指したのは、庭付きで白い壁の2階建ての家。
ルイレの父によると、前の家主が引っ越すため格安で売っているという情報を秘密裏に掴み、
すぐに買ったそうだ。
「あなたは羨ましいくらい行動力がありますからね・・・」
「ま、まあいいじゃないか。広いし綺麗だし。」
「はぁー、これからどうなるのやら・・・」
ルイレが王都に引っ越して3日目。
その日ルイレは王都を散策していたのだが・・・
「あれ?」
いつもなら気にも留めない路地になぜか目がいく。
「何かあるのかな・・・?」
そう思い、ルイレが路地に入っていくと
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「!」
ルイレが目にしたのは、背中まで伸びた自分と同じ黒色の髪に灰色がかった黒い目の傷ついた少年だった。
「だ、誰?」
「お・・前・・こそ・・誰・・だ・・?追っ手・・か・・・?
なら・・・逃げ・・な・・きゃ・・・」
そういうと、少年はバタリと音を立てて倒れた。
「だ、だ、大丈夫!?い、今すぐ家に運ばなきゃ!」
「う、うーん・・・ここは?」
少年は目を覚ました時、一瞬ここがどこかわからなかった。
自分は硬い地面に座っていたはずなのに、なぜこんなに柔らかいものに横になっているのか
わからなかったからだ。よく見ると、自分が座っているのはベッドだった。
ふと横を見れば、自分と同じ黒色の髪の少女と、手紙が添えられたスープとパンがあった。
手紙には「お腹が空いていたら食べてください」と書かれており、スープからは湯気が上がっていた。
少年はそれを見ると、恐る恐るスープを口にした。
温かい。温かさが自分を包んでくれる。
まともな食事を取れたのは何日ぶりだろう。
少年はただ、目の前の少女に感謝しか無かった。
と、その時。
「ルイレー!ルーイーレー!」
「うーん、むにゃむにゃ・・・あ、起きたんですね。私の名前は・・・といきたいところですが、私は
呼ばれているようなので、また後で。どうぞ、ごゆっくりしていってください。」
そういうと、少女は部屋を出ていった。
「・・・早くここを出ないと、ここの人たちにも迷惑がかかってしまう。
あと少し体力が回復したら裏口を探して出るか・・・」
少年はそう呟くと、ベッドに横になった・・・
ルイレが下に降りると、母が桶を持っていた。
「ルイレ、井戸から水汲んできてくれる?」
「うん!」
ルイレは母から桶を渡されると、すぐに井戸へ走った。
ルイレは家に帰ってきて母に桶を渡すと、急いで階段を駆け上がり少年の元へ向かう。
「ごめんなさい!遅くなりましたか?」
「いや・・・べつに。」
「申し遅れました。私の名前はルイレーク・ライム。12歳です。あなたは?」
「アクラス。アクラス・ヒズマ。同じ12歳。」
「それじゃあ、アクラスって呼んでいい?」
「いや、俺はすぐにここを出るつもりだ。」
「え!?なんで?」
そう聞くと、彼、アクラスは冷たい目でこう言った。
「お前らに助けられる理由はないし、邪魔なんだよ。」
「うっ・・・」
ルイレは、アクラスの冷たい態度に悲しくなった。
彼、アクラス・ヒズマは一体何者なのか?
彼を引き止めることには成功したものの、その夜ルイレの頭の中では
その疑問がぐるぐる回っていた。