子だぬきポッペとコッペ 十五夜のおだんご
kobito様主催の【ほっこり童話集】の作品です。
今宵の満月を見ながら読んでいただけると嬉しいです。
今夜は十五夜です。
子だぬきのポッペとコッペの兄弟は夜が来るのがまちどおしくてなりません。
なぜなら、とうちゃんとかあちゃんがこんなことを教えてくれたからです。
「ねえ、知ってる?ポッペ、コッペ、今晩はお月見なのよ」
「今夜、お月さまにお供えされたおだんごは、好きなだけだまってもらってもいいって言い伝えがあるんだ。とうちゃんとかあちゃんもだんごをシッケイしに、よく人里まで行ったもんだよ。今年はおまえたち、二人で行ってみるか?」
それを聞くなり、やったあととび上がった弟のコッペ。勢いあまって、あやうくしりもちをつきそうになりました。
「ほんと? ほんとにいいんだね。じゃあいっしょに行こう。兄ちゃん。ああ、早く夜が来ないかなあ」
さて、待ちに待った夜がやってきました。
もぎたての梨のようなお月さまが、空にぽっかりと浮かんでいます。
ポッペとコッペが、ある一軒の家の庭先にかくれていると、若いお母さんと小さな男の子が、すすきといっしょに、大きなお皿をえんがわに運んできました。お皿の中には、まんまるなおだんごが、山のように盛られています。
「しめ、しめ……」
ポッペとコッペがごくりとつばを飲み込んだときです。男の子の声が聞こえてきました。
「ねえ、ママ。このおだんご見たら、パパは何て言うかなあ」
「きっとびっくりするわよ。坊やがこんなにたくさん上手に作ってくれたんだもの」
「パパ、早く帰ってくるといいね」
「そうね。パパが帰ってきたらいっしょにいただきましょうね」
そして二人は、お月さまに向かって、静かに手をあわせました。
やがて、二人がえんがわからいなくなると、あとにはすすきとお皿に盛られただんごだけが残りました。
コッペが、まん丸なひとみでじっとポッペを見上げています。
ポッペはうなずき、二匹はそっと、だれもいないえんがわに近づきました。
ポッペは小さな黒い手をおそるおそる伸ばし、おだんごをひとつ取りました。
「これはとうちゃんの分」
つづいてコッペも小さな手をのばしました。
「これはかあちゃんの分」
そして今度はおたがいに、
「これはコッペの分」
「これは兄ちゃんの分」
ひとつずつおだんごを取ったのでした。
「よし、これでおしまい」
「うん。おしまい」
二匹は顔を見合わせにっこりすると、急いで、とうちゃんとかあちゃんの待つ山へともどっていきました。