第三話 動きの読めない外の人
結論から言おう。
俺は徳川幕府を認めねぇ。
と言うか、せっかくの夢なのに史実通りに進めても面白くないよね?
そんな俺が思うことは二つ。
1.関ヶ原合戦で、毛利が本気で西軍として参戦してたらどうなるか。
2.関ヶ原合戦で、毛利が本気で独自に動いていたらどうなるか。
史実において毛利輝元は大阪城に居座っり続けた。
そして毛利勢は九州や四国に触手を伸ばしつつ、畿内と関ヶ原に其々兵を派遣していた。
結果。
関ヶ原で広家は動かず、秀元も動けず。
畿内に派遣された元康や秀包も大した影響を齎せず。
四国はまあまあ動いたものの、九州では黒田如水に良いようにやられ仕舞い。
そして輝元は大阪城を退去。
遂には長門・周防の二ヶ国に押し込められてしまった。
こんな事、全く以て認められない。
全力で拒否るよね!
だったらどうするか。
九州は基本的に黒田に任せてしまおう。
その上で大友とか派遣して、良い塩梅で席巻させればいい。
出来れば豊前と豊後は抑えたいけどね。
播磨とかを餌に懐柔、出来たら良いなあ。
関ヶ原で息子を捕えることが出来れば道は開けそうだけど。
四国は長宗我部と分割する。
史実で大損したのは長宗我部も同じ。
毛利のせいでな!
別に贖罪とかじゃないけどね。
四国に迄手を伸ばしてられないってのが一つ。
長宗我部の兵は強く、味方にしときたいってのが一つだ。
西軍に与するならば、俺は全力で徳川を潰しに掛る。
独自に動くなら、やはり全力で徳川を潰す。
どっちにしても徳川は潰す。
だったら西軍に与しつつ、西軍自体を毛利主体に変えてしまえば良いんじゃね?
そんな結論。
動乱が長引けば戦乱の世に逆戻り。
その危険性もあるっちゃあるが……。
正直そこまで考えてらんねー。
だって、夢ならしっかり楽しまないと損だろ!
てことで、方針が定まったならば具体的な動きをば。
大坂に居ると家康と対面することも多い。
仕事の話から雑談まで。
時折試すような気配を感じることもあるが、まあ何とか切り抜けてる。
特に敵対を醸し出すようなこともなく、何かを悟られることもなく無難にやれてると思う。
それはそれとして、豊臣嫌いで有名な広家。
彼を史実通り徳川家臣や徳川寄りの大名衆に接近させた。
史実通りと言えば、元は毛利の使僧だったのに何時の間にやら大名に。
安国寺恵瓊はやっぱり石田寄り。
毛利に影響力を残しつつ、豊臣の直臣になるとは片腹痛い。
直臣になるのは構わんから、速やかに毛利から出て行けやー。
なんて思ったりするのは狭量かねぇ。
ま、それも含めて上手く使ってやろうさ。
黒田如水と大友吉統、長宗我部盛親に話を付けてー。
安国寺が張り切って石田に与する様働きかけてきたのを利用してー。
表立っては徳川と敵対する素振りを見せないでー。
裏でコソコソやっていたら、あっという間に時間は過ぎる。
関東より届く速報。
上杉景勝に謀反の兆しあり!
時代は順調に、そして着実に進んでいるようです。
家康を主体とした上杉討伐軍が出立。
俺は畿内の留守を、預かって伏見城。
徳川の家臣らが武張って守りたがったけど、どうにか宥め賺して追い出した。
伏見攻めで躓くなんて、やってらんないからね。
躓くと言えば大津もあったな。
早めにどうにかしとこう。
因みに、まだ石田三成に担がれてはいない。
今は淡々と大老として職務に邁進してるだけだ。
伏見城を接収したりするのが本当にそうか?
なんて疑問もあろうが、気にしちゃダメだ。
これでも本気の本気で西軍を形作るのに必死なんだよ。
黒田如水と密約を結び、大友を援軍として放流。
豊前は毛利が欲しいんで、こっそり隠蔽将兵を配置してみたり。
それ以外の九州は一旦預け置く。
長宗我部は土佐からゆるりと出立させて阿波と讃岐を狙わせることに。
伊予は毛利が頂くが、場合によっては共闘もありだな。
河野の遺臣を、叔父の天野元政に預けて頑張って貰う。
以上の方針から、西国の憂いなく毛利一族は畿内への出兵が可能となった。
全部、裏で密かに進めてきた。
全部綺麗に整って、漸く旗幟を鮮明に出来るってもんだ。
準備は大事。
超大事。
てーなわけでー。
揃ったネ。
家康が上杉景勝に詰問状を送り、返って来た直江状で大激怒。
上杉討伐に出発進行!
敢えて大坂城からは手を引いて、伏見城には抑えの兵を残したりして。
そんなところに俺、参上。
大老として伏見城を接収云々以下同文。
史実と異なり、今回は早々に家中の意思を統一してる。
安国寺?
アイツは異物だから知らん。
敵対しないなら除きはしない、程度だ。
まあ広家が良いように対処してくれるだろ。
さて。
やるってんなら徹底的に、だな。
俺は表立って堂々と、西軍の主将に就任することを発表した。
毛利家はその下で全力投球に備える。
大毛利が西軍となるってのは、確かに予測風聞は常にあった。
でも、それが現実になるとまた効果は違う。
俺が前面に立った檄文を作成し、奉行衆や大老の一人である秀家の添文を発給。
効果は抜群だ!
その結果、概ね史実通りの面子を取り揃えることが出来た。
宇喜多秀家、小早川秀秋、石田三成、増田長盛、長束正家、大谷吉継、
小西行長、安国寺恵瓊、丹羽長重、織田秀信、立花宗茂、高橋直次、
鍋島勝茂、龍造寺高房、島津義弘、島津豊久、脇坂安治、朽木元綱、
相良頼房、赤座直保、小川祐忠、木下重堅、戸田勝成、新庄直頼などなど。
そして、知っているという武器を全開発動。
早速大津に将兵を派遣し、京極の裏切りを防ぐ。
その他、獅子身中の虫を事前に対処。
秀秋のとこにいた奥平とか、あと脇坂安治とか。
うろちょろしてた伊賀者っぽい奴らもな。
嫌な……事件だったね。
そして畿内一円、丹波に越前、伊勢に美濃。
まずは周辺地域の地固めに勤しむ。
やろうと思えば、濃尾から三遠までサクッと進出するのも不可能じゃないけどね。
やっぱさ。
出来れば関ヶ原合戦で、ガッツリやっつけたいよねー。
その為に広家にお願いしてある訳だし。
秀秋のとこの、平岡とかにもね。
これで舞台は整ったかな?
それでは戦国祭り、最終ラウンドを始めよう!
バタフライ効果もなんのその。
ご都合主義万歳で概ね史実通りの関ヶ原布陣を完成させた。
多少補強したけど。
カギとなるのは南宮山に松尾山、あと伊勢街道。
南宮山は史実通りで、長宗我部の代わりに立花宗茂と小早川秀包を。
松尾山には小早川秀秋、追加で伊勢街道には叔父の末次元康が率いる軍勢を置いてみた。
そして。
伏見から伊勢街道を経由して南宮山を裏回り。
中山道を臨む位置に、俺が率いる毛利の主力。
これはもう、毛利家一同以外は味方も含めて徹底的に隠蔽した。
どこから漏れるか判らんからね。
正に敵を騙すにはまず味方から、だぜ。
ちなみに、秀秋と安国寺は毛利家一同に含めない。
それで、重要なのはどのタイミングで食らい付くかだが……。
感覚でいいよ、そんなん。
勝負勘とかと同じで、後から付いてくるはずさ。
多分。
色んな突っ込み所は気にしない方針で。
それじゃ、そろそろいいかなー……?
レッツパーリィィィーーッッ
沢山の評価を頂き感謝の極み。
ご期待に添えられると良いのですが。
2016/9/18 誤字修正&ルビ追加