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Ragnarok of Lolita《ラグナロク オブ ロリータ》 合法ロリになったオレ

作者: ラノベ書くマン

「おぬしは死んだのじゃ。何で死んだのかは面倒なので語らぬのじゃ」


 真っ暗闇にスポットライトが二つ。

 一つはボクを、一つは「のじゃのじゃ」おっしゃるこの方を照らしている。

 この方の言葉は棒読みで、瞳を曇らせやる気の無い表情がとても気になる。

 何故、ボクが死に、何故ここにいて、何故この方が現れたのかは見当がついているし、語らぬと言うことは聞くなということだと思った。

 だから、まずはこの方の正体の方から伺った。


「ボクの死を告げる貴方は一体何者なのですか?」

「お察しの通り合法ロリなのじゃ」


 やはりが考えていた通りの正体だった。

 ボクの死については、ここに来る直前の記憶が無く思い返すことが出来ない。

 更には自分の名前も大切な人の名前も、そもそもそんな人がいたかすらも記憶にない。

 記憶に残るのは知識と経験で、そのどちらにも所々穴が開いていた。


 しかも、それにボクは動じる事もない。

 そして、いつもより格段に早く明解に思考が出来る。

 いつもであれば絶対に取り乱している。

 ボクはこんなに達観した人間じゃないし、こんなに頭も回らない。

 そもそも、この状況を落ち着いて受け入れられる人がいるのか疑問だ。

 それでもこの有り得ない状況についても受けいれている。


 記憶と感情を操作されているのだとボクにはわかる。

 最初の言葉は、ソウイウ事なのだろうと言う事も。

 でも、合法ロリという答えは完全な答えでは無い思うのでこの方にお伺いする。


「いえ、その、神様では?」

「あっ。そうそれ、そうなのじゃ、妾は神様なのじゃ」


 さもどうでも良い、と言わんばかりにこの方は、自信の正体を明かした。

 しかし、この神様自分からお話を進めて下さらない。

 であれば、次にこの方がどうしてご機嫌すぐれないのか尋ねるべきだろう。


「神様はどうしてそんなにお元気が無いのですか?」

「聞きたいか? そうかそうか聞きたいか? そなたは優しいのじゃ……。

 妾はのう。妾は……。すん……。あーん!」


 そういって、神様を子供の様に鼻をすすり、泣きじゃくる。

 記憶の欠損の為か、こういうことに慣れていないのか、ボクにはこういう時どうしたらいいのか分からない。

 だから、ただただ泣きじゃくる神様を見ている事しか出来ない。


「これを見るのじゃ!」


 神様はご乱心なされた。

 お召し物の裾を掴むとおもむろにそれを持ち上げ、ボクにその中を見ろとおっしゃる。

 しかし神様なのだ。

 ボクの様な者が、それを直視するわけにはいかない。

 でも逆らうことも許されないであろう。

 だから間をとって、くるぶしが視界の端に映るところに視線を置いた。

 すると。


 ドドドドドドドドドドド……!

 

 神様のお召し物から出てくる出てくる。

 どんどん出てくる薄い本。

 これは酷い。


「目をそらすではないぞ! しかとその目で見るのじゃ! そなた達人間の大罪を!」


 神様が見ろとおっしゃるので見てみれば、それら全てが合法ロリを主軸に置いたシロモノであった。


「神は死んだのじゃ! ロリコンが神を殺したのじゃ……!

 妾も最初はこんなカタチでも慕われておるのであればと考えたのじゃ。

 だが、限度と言うモノがあるじゃろうが!」


 文字通り山の様に積まれた薄い本を指差しながら神様は声を荒げた。

 なんとか心を静めて頂こうと思案し言葉を絞り出す。


「確かに神様のおっしゃる通りです。

 ですが、これはこれ、神様は神様ではありませんか」

「そうじゃの。割り切る事も大切なのじゃ。

 しかしな人間。妾は人間に創られたモノなのじゃ……」


 ボクは神様が世界を作り、人間を造ったものだと思っていた。

 だから、まさかの逆転説に思わず聞き返してしまった。


「神様が人間をお造りになったのではないのですか?」

「そなたが考えている様に人間を造る事も出来るし、どうこうする事もできる。

 じゃが、人間が妾を創ったというのは不動の事実なのじゃよ……」


 人と神の関係がその様なモノであったなんて意外だ。

 神様はこの本から産まれたのだろうか?

 それともこの本の影響を受けて反映された結果なのだろうか?

 しかし、そんな事を聞いて良いモノでは無いと考え口を開けなかった。

 だからそこでボクと神様の会話は途絶え、しばしの沈黙が訪れる。


 沈黙の最中ボクは失態を犯してしまう。

 沈黙と緊張で口が渇き、更には目の前に置かれた薄い本。

 湧き上がる生理現象を抑える事ができなかった。


 ゴクリっ……。


 その音は、はっきりと神様のお耳にも届いた事であろう。

 何せこの場にはボクと神様しかおらず、場は沈黙が支配していたのだ。


「そなたもか……」

「申し訳ございません」


 言い訳をせずに率直に謝罪をした。


「良い、そなたでもそうなるということは人間というのはそういうモノなのじゃろう」


 許しを得たが、神様の落胆した声色の言葉には胸が締め付けられる思いだった。


「もう時間も無いのじゃ。これからそなたを異世界に転生させる」

 

 死んで何も無い空間に呼び出され、神様が現れて異世界に転生する。

 やはりそう言う展開だったか。

 ボクはこうなるのを予期していた。

 こういう話の物語をボクはいくつか見たり読んだりしたことがあったから。


 どうして異世界なのかどうして転生なのか。

 疑問には思っても口には出さないし、出すべきではないと考えた。

 何もボクだけがこうやって転生を受けるわけではないであろう。

 幾度となく繰り返されてきたはずだ。

 神様の最初に言った面倒という言葉、記憶操作に感情操作の意味を察した。


 そして、時間が無いというのは恐らく嘘だ。

 神様は配慮してくださった。

 本当は失態によってボクに興味を失ったのだ。


「少しだけサービスしておくのじゃ。そなた達人間がいつしか道を正す事を切に祈らん」


 その言葉を最後にボクの意識は遠くなって行き、やがて完全に途絶えた。



 そして再び目覚めたボクはまた真っ暗闇の中にいて、スポットライトで照らされていた。

 でも、今度は神様のお姿は無い。

 代わりに目の前に白い文字が浮かび上がっている。

 

『アナタは神の力によって異世界からこの世界に転生した。アナタは合法ロリで、誰もが息を飲む容姿をしていて、全てのロリコンを魅了するだろう。アナタは合法ロリなので老いる事はなく、素早い身のこなしと高い耐久力、そして固い守りに優れている。ただし、その純潔が散らされるようなことがあったなら、神の怒りに触れ、Ragnarok of Lolita《ラグナロク オブ ロリータ》が発動し世界に終焉が訪れる』


 転生したボクの客観的な情報であろう。

 でも、真っ暗闇の中ということはユメの中とかそんな感じなのだろうか。

 しかし、合法ロリに転生。

 流石にこれは想定外の状況だった。

 いや、想定出来るわけがない。


 誰もが息を飲む、というのは流石にオーバーでは無いだろうか?

 自分の姿を見る術が無いから確認できないが……。

 と思ったら、すぐ脇に鏡が用意されていた。

 覗いてみると確かにボク自身でも息を飲むほど可愛いロリータの姿があった。

 鏡の中のボクと目が合うと鏡の中のボクはにっこりと微笑み掛けてくれた。


 きゅんっ。


 ボクは驚愕した。

 鏡の中のボクが微笑んだことにも驚いたけれど、ボクは鏡の中のボクにキュンとしてしまったのだ。


「ボっ、ボクは絶対に認めないゾっ!」


 きゅんっ。


 思わず声が出てしまったが、それよりもだ。

 な、なんだこれ、ボクはボクが意図した通りの言動行動とは違った行動をとる。まるで何者かの干渉を受けているかの様にしばし勝手に補正が掛かる。

 合法ロリだから?

 確かに、男だからそのままでは不自然で合法ロリと呼べたモノではないだろう。

 だから強制力が働くとか?

 ともあれ、この不思議な現象を「合法ロリ回路」は、語呂が悪いので「合ロリ回路」と名づけた。

 困惑するボクだったが、ふと浮かんだ文字のある部分が点滅しているのに気が付いた。


『全てのロリコンを魅了するだろう』

 

 愕然とした。

 先程鏡の中のボクが微笑んだことできゅんっとした。

 ボクはボクに魅了されたのだ。

 それすなわちボクがロリコンだという事実……。


 そこでふとおかしな事に気が付いた。

 いや、先程からおかしな事しかないのだけれど……。

 ボクは神様を見たはずだ。

 でも魅了されなかった。

 と言うよりそのお姿そのモノを思いだすことが出来ない。

 だが、チラリと薄い本がよぎりなんとなく理解した。

 ロリコンの業は深い。


 なんとなくそうやって、一つ一つに答えを見付けて心を落ち着けさせる。

 しかし、まだ大きな懸念材料が残っている。

 ボクは今、全裸なのだ。

 鏡で見ると、胸と股の部分にボカシが入って直視する事はできない。

 ふと思いたち直接鏡を使わず見てみるがやはりボカシが入っている。

 ボクがロリコンだから見られない様になっているのかな?

 更には触れて見ようと手を伸ばすが触れる事は叶わない。

 徹底されている。

 なるほど固い守りに優れている。

 これが合法ロリか。

 でも、ボクがボクを見られないだけで他人は見られるし、触れられるのだろうと言うのは浮かぶ文字で何となく理解出来た。


 さて、しかしそうなるとお風呂とかどうするんだろう?


 そんなことを考えると新たに文字が浮かび上がり追記される。


『合法ロリは決して汚れる事はなく、故に入浴を必要としない』


 それは残念だ。

 入浴を楽しめないのは少し辛い。

 ボクが少し落ち込んだ所で更に追記される。


『ただし入浴自体は可能である』


 つまり洗う必要はないけど入浴は楽しめるって事か。

 ならばトイレは……。


『合法ロリは決してトイレになど行かない!!!』


 これまでに無い強烈な否定が浮かび上がる。

 これ以上トイレについて考えると禁忌に触れるような予感がして考えるのをやめた。

 が、食事はどうするんだろうと思い浮かんでしまった。


『合法ロリが食事をとる様子は見る者を幸せにするだろう』


 左様で……。


 しかし、裸のままといのは落ち着かない。

 裸で転生するんだろうか?

 0歳スタートになるのかな?

 なんて考えると目の前にクローゼットとタンスが現れる。

 もうこのぐらいじゃ驚かない。

 まずは下着だ。

 恐らくタンスの方が下着だろう。

 ボクは取り合えず、タンスの一番上の引き出しを引っ張ってみる。

 丸く可愛く丸められたパンツ達が顔を出す。

 くまさん、かぼぱん、シマシマ、いちごにスタンダードな白いやつ。


 Oh my god of Lolita《我が愛しき人の業に悩める神よ》.


 ボクに選べとおっしゃるのか。

 しかし、これから毎日履き替える事になるのだ。

 このぐらいの試練で躓いてはならない。

 そして考え抜いた結果判断を天に仰いだ。

 なんのことはない「てーんーのーかーみーさーまーのーいーうーとーおーりー」で、なのなのなしたのだ。


『Nice Lolita!!《愛すべき幼女》』


 浮かび上がる文字に褒められた。

 なのなのなは好評らしい。


 ともあれ下着はかぼちゃぱんつに決まった。

 まあこれなら見えてもよさそうだし初心者の俺にはぴったりだ。

 しかし、履いてみるとボカシが入った。

 なるほど守りは固い。


 上はボカされてても分かるほどぺったんこだからいいかなとおもったが、用意されていたのでなのなのなして見たところ絆創膏に決まった。

 って、なんで絆創膏? なんでこんなモノがこんなところにあるのだろうと思い手にとるとぺったぺったとあの部分に勝手に張りついた。

 なるほど、神様の言う通り人間の業は深い。

 ボクにはついていけない世界だ。意味が分からない。


 その後もそんな感じで決めていく。

 最終的に黒いゴスロリドレスに、白い手袋、白いニーソ、黒い靴、そして、頭にはうさぎさんの髪どめをつけて、手にはクマさんのぬいぐるみ。

 うん。かわいい。

 でも死にたくなった。

 ボクは一体何をしているだろう。

 そして、自己嫌悪にくれるボクの意識は再び遠くなっていく。

 その時今まで見なかった事にして意図して考え無い様にしていた浮かび上がる文字の最後の一分が目に入る。


『ただし、その純潔が散らされるようなことがあったなら、神の怒りに触れ、Ragnarok of Lolita《ラグナロク オブ ロリータ》が発動し世界に終焉が訪れる』

 

 ボクは自分の行く末に心底不安を覚えた。



 しゅたっ……。


「ととととっ……」


 ボクは覚醒と同時に重力に引っ張られたのでタタラを踏んだ。

 暗いところから明るい所に突然出たのでボクの目は日の光に焼かれる。

 だが、そんなことに構っている場合ではなさそうだ。


 Oh my God of Lolita《我が愛しき人の業に悩める神よ》.


 あなたは何をお考えになられてボクをこの様な場所に転移させたのですか?

 転生と同時に訪れた世界の終焉の危機にボクは絶望した。


 ボクの小さな背丈の倍はあり、手足はボクのお腹よりも太い。凄まじい嫌悪感を覚える程の醜悪な顔をした豚のような顔をした人間がボクの回りを取り囲んでいた。

 更に目の前には、ボクの未来の姿を想像させる酷い姿をした少女が膝をついて、突如現れたボクのすがたをみて呆然としている。

 目鼻の整った顔立ちに長い耳そんな彼女は布の服……。服であったであろうモノは辛うじて彼女の人には見せてはいけない部分を隠せている。


「き、君は一体どうやってここに現れた? 新しい魔法? 姿を消していた?

 まさか私を助ける為に現れたのか? いや、どう見ても戦える様には見えない。

 この最低な状況に不測の自体で巻き込まれた? くっ、剣さえあればオークなど……。

 大事な場面で剣がすっぽぬければ……。

 こんな小さな女の子を守る事が出来ないなどエルフの末代までの面汚しだ……」


 あまりにも多くの質問と情報を一息でぶつけられたためボクの頭はそれを処理できない。

 えーとつまり、この豚人間がオークで、この子がエルフ。ファンタジーだね。大丈夫予想通りだ。そして、ボクはこの世界の人と言葉が通じると。この情報はあり難いけど今必要なものじゃあないよね。

 

「君! 後ろだ!」


 言われてボクは振り返る。


「わわわっ」


 振り返ったボクの眼前にボクの頭より大きなオークの手のひらが差し迫っていた。

 決して避ける事が出来ないと思われたそれを大きく一歩横にずれるだけで躱し、二度三度と打ち込まれるオークの手を躱して見せた。

 速い! そして軽い!

 幾度となく伸ばされるオークの魔の手を悉く躱すとボクは反撃を決意する。

 ボクはただの女の子じゃなかったんだ!

 だから、このエルフの少女を救い出す為にこの場所に転生したに違いない。

 そうであるならボクにはそれだけの力があるはずだ。

 ボクは小さな拳をギュッと握り締める。


「えいっ!(うおおおおおおお!)」


 こんなときにも合ロリ回路がボクの言葉を置きかえる。

 ボクは拳に回転を加えられたそれは目で捉えられない早さで打ち出され、オークの腹へと達する。


 へっち……。


 意を決して打ち出したボクの拳が成したのはそんなマヌケな音を立てただけだった。

 そのあまりにも非力な自分の力に驚き手を引くのが遅れたボクはその手をオークにつかまれてしまう。


 がしっ。


「きゃあああああ!」


 そしてオークは、ボクの両腕をまとめて片手で持ち上げるとボクを宙吊りにした。


「わわわわっ」


 ボクはジタバタとあばれるが、オークの手は痛いほど強く握られていてボクがオークから逃れる事はなかった。

 こんなに力をいれたら普通の女の子だったら手の骨がばらばらになってるよ。

 なるほど高い耐久力と守りが固いというのはこういうことか。


「くっ、オークめ! その子を放せ!」


 エルフの少女が、武器もなしにボクを助けようと近づくが直ぐに他のオークに割って入られ彼女は逃げ回るだけで手一杯になる。

 だからオークは誰にも邪魔をされず、汚い顔をボクに近づけ、見ただけで孕みそうな笑みを浮かべてボクの体を嗅ぎ回る。


「ひっ」


 今だ感じだ事の無い嫌悪感と悪寒を感じて小さく声をあげてしまった。

 気持ち悪い、怖い……。

 ボクのカラダは小刻みに震え、目には涙が浮かび上がるのがわかった。

 そして。


 ビリビリっ!


「い、いや、いやぁああ!」


 オークはボクのドレスに手をかけてそれを引きちぎった。

 しかし、不思議なことに派手な音の割には殆ど服は破れず、全くはだけたりしない。

 それでもオークはびりびりと何度もドレスを破りつづけるが殆ど肌は露出せず、とうとう業をにやしたオークは近くにいた他のオークにエルフのものであっただろう剣を放る様に指示をだした。

 剣を受けとる為にそれたオークの視線と意識。それで出来た隙。ボクはこの隙を最後のチャンスかも知れないと考えて行動に出た。

 手に力をいれて振り子の様に体を振り勢いをつけてオークの股に金的を放つ。


 ざくっ!


 ざくっ?


「ふごぉぉあああああああああああああああ!」

「おっとっと」


 大音量で叫び転げまわるオークと、放り出されてころびそうになるボク。

 想像したより、ずっと効果のあった金的に驚きオークの股を見れば血で塗れていた。

 ふと足元をみると靴の先から刃渡り15センチ幅4センチの刃が飛び出していた。

 ただの靴だとおもっていたこの靴は暗器だったのだ。

 

 ともあれこの会心の一撃ともいえる金的は事態の流れを大きく変えた。

 受け取り手を失って転がったエルフの剣。

 エルフの少女は、それを拾い上げてオークに斬りかかる。


「よくも好きかってしてくれたな!

 剣さえ戻ればもうお前たちの好きにはさせないっ!」


 剣が剣がと終始嘆いていた彼女。

 その剣の腕は納得の行くものだった。

 一方的な剣閃を幾ばか打ち出すとオークはあっというまに地に突っ伏す。

 だが、いかんせん数が多い。

 このままでは押し返されてしまうだろう。


 だからボクは……。

 先程の恐怖と悪寒がが震えとして残るボクの体に鞭を振るい意を決して声を上げる。


「オークさん! こっちだよ! ボクが君たちの相手をしてあげる!」


 ぐるん! ぐるん! ぐるん! ぐるん! ぐるん……!


「ひぃっ!」


 全てのオークがボクの方を振り返ったものだから思わず声をあげてしまった。

 しかし、それでもボクはスカートの裾をギリギリまで持ち上げて振り振りして見せる。


『全てのロリコンを魅了するだろう』


 ボクはボクの特性を利用したのだ。

 オークもロリコンなのだ。いや、もうちょっと酷いアレの気もするけれど。

 ボクの笑顔は全てのオークを欲情させ、全てのオークがボクに向かって走り出す。



 ドドドドドドドドドドドドドドっ。


 ボクは駆けた。

 土煙を上げ音を立ててくるオークから逃れる為に。

 とはいえボクには彼らから逃れるだけの自信があった。

 オークの魔の手を悉く躱し切った身のこなし。

 オークに強く握られても砕けない耐久力の高さと守りの固さ。

 そうであるなら、オークに掴まる事はない。


 実際それはそう考えた通りだった。

 右へ左へ北へ南へ5分10分30分と逃げ回ってもボクは汗一つかかずに息も切らさない。

 対して一匹また一匹と脱落していくオーク。

 そしてそれを駆逐していくエルフの少女。

 まだ相当の数が残るオークだがボクは確信した。

 ボクたちはこのオークの群れに勝てるのだと。

 どれだけ仲間がやられてもオークは足を止めずにボクしか見てい無いのだから。


 だが、その時生まれた油断がボクを窮地に追い込む。

 ボクは何もないと頃でつまずき結構な早さで走っていたモノだからそれは派手に転がってしまう。


「わわわ、いったぁ……」


 いくら守りが固いといっても全力で走って転げまわれば痛いし怪我をする。

 手を擦りむきあろうことか利き足を挫いてしまった。

 それでもボクは足を止めるわけにはいかない。

 右足をかばうようにして少しでも前へ前へとボクはゆっくりと足を進める。

 だが、そんなボクをオークは見逃してくれるはずもなく……。

 とうとう追いつかれたボクは足を掴まれ、ボクを手繰り寄せたオークは片手でボクの足を掴むと宙吊りにした。

 先程の失敗を見ていたのであろう。

 今度は手では無くて足だ。

 そして足をつかめば自然とスカートが捲れる。


「ひぁぁぁぁ!」

 

 しかし、ここで奇跡が訪れる。

 ボクのぱんつは眩い光を放ちオークの目を焼いたのだ。


「ふごぉぉあああああああ!」


 ボクを追いかけていたオークたちは、突然の事態に対応出来ず、足を取られてごろごろと転げまわる。

 しかし、ボクを捕まえているオークはそれでも耐えた。

 光で潰され目を焼かれたオークからは吐き気さえ覚える程の異臭が漂う。

 そんなオークは、さっさと事をなさんとすべく、ボクのへそ下をまさぐるとかぼちゃパンツに手をかけ、そして力の限り引っ張った。


「ちょ、それはマズい本当にまずい。やめろ! やめて……。きゃああああああ!」


 だが、かぼちゃぱんつの防御力は卓越していた。オークが渾身の力を込めて引っ張っているであろうにも関わらず、10秒でようやく1ミリといった程度しかずり落ちない。

 オークはそれでも、諦める事なく尋常ならざる執念でボクのぱんつに固執する。

 そして、ボクの目にとうとうボカシが見え始めたのが映る。


「ダメダメダメダメダメ! これ以上は世界が滅びちゃう! らめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 ボクは取り乱して叫び散らすが、オークは全くいにかえさない。

 もう本当にだめなのか、ボクは全てを諦めてギュッと目をつむる。


 ズブリっ。


「貴様で最後だくたばれ糞オーク!」


 助かった。

 世界もボクの純潔も守られた。

 息も絶え絶えに駆けつけたエルフの少女の剣がボクを掴んでいたオークを貫き地に叩きつけたのだ。


「遅くなってすまない。もう全てのオークは倒した。君のお陰でたすかったよ」


 助けられたのは結局ボクの方だ。

 緊張のとけたボクの心はゆるみ、押し寄せてくる激情を抑える事ができなかった。


「うっ。えぐっ。すん……。あーん!」

 

 そう、ボクは泣いてしまった。

 声を出して泣いてしまった。


「怖い想いをさせて本当にすまない」


 そういって、エルフの少女はボクの顔を胸へと押し付けぎゅっと抱きしめてくれた。

 そのままボクはエルフの少女の胸のなかで暫く泣きつづけた。


 

 その後。

 倒したと言っても殺したわけではないオーク。

 エルフの少女の提案により全てのオークの一部をチョッキンした。

 彼女はサディスティックな笑みを浮かべてチョッキンチョッキンしたのだ。

 ボクは全く気が進まなかったし、事の最中オークの住居を見たり調べたりして暇を潰したので詳しくは知らない。


「これで、彼らも健全で建設的で文明的な生活を送るはずだ。

 殺さないとは甘いと思うかもしれないが、私は彼らの可能性を信じて見たいのだ」


 可能性もなにもこれは彼女の趣味では無いだろうか?

 殺した方がよっぽど優しいのでは無いだろうか?

 健全で建設的で文明的な生活も何もチョッキンしたら滅びるよね?

 そんな事を考えたが、しかし事はすんだのだ。

 いくらオークでも、一度チョッキンしてしまったらもう生えて来ないしくっつかないだろう。

 だからボクは彼女に頷いた。


「う、うん」


 是を受けた彼女も満足げに頷きそして思いついた様にボクにいった。


「そうだ。まだ名乗ってい無かったな。

 私の名はエリスリス、見て分かるとおりエルフだ。

 人間の前には滅多に顔を出さないから、私と知り合えた事は人に自慢出来るぞ?」

「はは、それはいいね。ボクは……。ボクは合法ロリ、名前はまだないんだ。

 取り合えずロリィとでも呼んでほしい」

「合法ロリ? 私の知らない種族だな。私より希少種なのか?

 だとすれば、でしゃばった事をいってしまったかな?」


 そういって、彼女は微笑みかけてくれる。

 そんな種族がまかり通っている世界は嫌だ。


「まあ、名前については追々みつければいいさ。今はロリィと呼ばせてもらうよ。

 改めて、ロリィ助けてくれてありがとう」

「そんな、ボクはオークから逃げまわっただけだし、2度も掴まっちゃうし……」

「謙遜するな。

 君が私の剣を取り返し、オークの注意を惹きつけてくれなければヤられていたさ。

 くくっ、全てのオークの注意を惹きつけるなんて普通は出来ないぞ?」


 笑いながらからかうようにそんな事をいう。


「は、恥ずかしいからあれは忘れてよ……」


 ボクもあれは早く忘れたい。

 そうやってボクたちは長い間おしゃべりを続けた。

 そしていつしか、ボクたちの心からオークたちの事は離れ、ボクたちは心にようやく平穏が訪れたのだーー。 

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