僕と兄貴の恋人
学生時代に課題で書いたシナリオです。だいぶ前に書いたものを改めて加筆修正しているので、深く考えずシナリオってこんなものなのかーという程度でお読みいただければ幸いです。
主な登場人物
○文屋 和仁(14歳)主人公。中学二年生。美花へ恋心に似た憧れを抱く。
○文屋 太一(17歳)和仁の兄。高校二年生。思い込みが激しく暴走する。
○宇野 美花(17歳)太一の恋人。和仁の兄と同級生。
あらすじ
文屋和仁(14)が家でゲームをしていると、兄の恋人が訪ねてきた。兄はまだ学校から帰ってきていない。
家に上がって待つ間、兄の恋人と一緒にゲームをすることになるが、つい熱中しゲーム機を落としそうになる。あわてて押さえようとするも、はずみでもつれ二人は床に倒れ込む。和仁が覆いかぶさる形だ。
そこへ兄が帰宅する。
○ 文屋家の居間
ドアを開けたまま固まる太一。
同じく固まる和仁と美花。
二人に詰め寄る太一。問いただす。
太一「だましていたのか!」
和仁「えっ、ちがっ」
太一「クソッ勝手にしろ!!」
と、翻ってドアを激しく叩きつけ出て行く。呆然とする二人。
○ 同・居間。
二人して座り込む。美花は太一が出て行ったドアを見つめた後俯く。
気まずい空気。耐え切れなくなり和仁が何かを言おうとした時、先に美花が声を出す。
美花「だからいやなのよね」
独り言にしては大きな声。
和仁は驚き、えっ?という顔で美花を見る。
美花、和仁に向き合う。
美花「ほら、ああやってすぐ勘違いして。人の話は聞かないし、自分勝手だし」
何の事かポカーンと呆ける和仁。
美花「思い込みが激しくって、支配欲も強いから私が何かしようとするとすぐ怒って」
和仁、察する。
和仁「僕もよく『お前食べただろ』って冤罪着せられてケンカしてる」
笑う二人。同じ様な話題で盛り上がる。
× × ×
美花「話し合いもしないでいっつも自己完結。自分が正しいと思っているのよね」
和仁「いつだってそうさ。兄貴の性格に苦労させられた事に関しては、語りつくせないよ」
美花「今日だって会いに行く約束してたのに、遅れるし連絡もくれないし」
和仁「そのくせ勝手に解釈して決め付けるっと」
美花「(ふふっと笑って)私たち気が合うわね」
和仁「そうかも」
急に膝立ちになり、顔を和仁に近づける美花。笑顔を見せながら囁く。
美花「いっそのこと付き合っちゃおっか」
返事を待たず隣に座り腕を絡めてくる美花。
和仁は恥ずかしがりながらも、慌てて離れる。
和仁「そんなっだめだって」
しかし若干、嬉しそうにしている。
騒ぎながら組んず解れつ。
ふざけているうちに押し倒される。
顔が近い。本当の恋人のようなムード。
美花「――してっ」
和仁「えっ何?」
美花「――――だから、もう少しだけ――て」
和仁、満更でもないためその気になっており、よく聞きもせず。
和仁「……本当に兄貴の事、嫌になったのなら僕が――」
文屋家の母「太一っそんな所で突っ立ってないで暇なら手伝いなさい!!」
怒声と共にドカッと、何かが激しくドアに当たる音。
我に返り慌てて離れる二人。
○ ドアの前
美花、すぐに立ち上がりドアを開ける。
○ ドアの内外
廊下。太一が変な体勢で転がっている。
太一ゆっくりと立ち上がり、美花から目を逸らしながら。
太一「なんでだよ……どうしてだ!?チクショウ」
逃げ出そうとする太一。
すかさず太一の手を捕まえる美花。
美花「ちゃんと話し聞いてよ……」
切実そうに。泣きながら太一を見つめる。
美花「誤解したまま出て行っちゃっていつも話を聞いてくれないじゃない」
太一「だったらさっきまでのは何なのさ」
美花「だから、外にいるの分かってたからっわざとっ」
太一「……」
美花「……」
太一「ごめん」
美花「私も騙すような事して、ごめんなさい」
掴まれた手を繋ぎなおす太一。そのまま太一の部屋へ向かう。
その場で固まる和仁。美花が振り返りウインクしながら口唇を動かす。
『ゴメンネ』の形に。
和仁「――利用されたぁ」
○ 太一の部屋
手を繋いだままベットに座る二人。見つめあいキスをし、それが徐々に激しくなる。
和仁のM「この日の事がきっかけで、僕の中学生活は兄貴の恋人『美花さん』に振り回されるはめになるのだった」
終