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()な灰被り  作者: よづは
16/20

16:訪れた混沌に見つけた姿



 「暗殺者だ!!!」

 私が参列者の方々に結果をつけようとしたその時。まるでそれを言わせまいとでも言うようにそんな叫びが上がった。

 私は咄嗟に王座の横へ下がる。この状況でなら銃を使っての暗殺だろう。ならば、今まで狙っていた場所から移動してしまえばいい。

 そして会場を見渡すが、私の居る居場所以外は完全な暗闇になっているためその人影すらも見つけ出せない。先程の叫び声は後ろから聞こえた。ならば【暗殺者】も後ろに居るのだろう。私は必死で目を凝らして群集の後ろ。舞踏会場の入口付近を見た。

 誰かが走っている。


 花道や、入口から使用人や兵がやってくる。素早く爺は私の側に付いた。

「暗殺者を捕まえた!!」

 素早く兵達が会場内の灯りをつける。会場の後方で、誰かが倒れるのが見えた。

「…姫様。お下がり下さい。この場は危険です。」

「……この状況で逃げる方が危険ではないの? 逃げれば、あの状況を振り切ってこちらに近づく機会ができると言うものではありません?」

 どれだけの汚名を被っても私を殺そうとするのであれば、この会場から退場する為に花道を通るところを狙ったほうが得策である。今、逃げてしまえば機会を与えるようなものだ。


「違う! ………さ……で……い!!」

「よく……! こ……もの………む………!!」

 群集のざわめきを裂く様に【暗殺者】とそれを捕らえたという男が言い争っているようだが、人ごみと喧騒からまともに聞こえない。

 明るくなった会場の中、黒光りする物体が宙を飛ぶ。それは何処か危険なものに見えた。


カシャン!

 磨かれた会場の床に金属が落ちる音がする。重く、鈍い音だった。

 何時の間にやら出来た群集の空間にそれは落ちているようだ。それを取り囲む人間は興味とそして畏怖の目でその物体を見詰めている。

 そんな中、一人の灰髪の男がその空間の中心に進み出る。暫くその物体を手に取り、値踏みするように眺めると何かを呟く。その言葉に兵士が男に近付き、それを受け取った。群衆の中心に進み出た男が下がると、今度は後方で押えられた男に近づく男が居た。

 何故か、その男もまた投げ出された物体を拾い上げた灰髪の男だった。その事に気付いた人間が数人いたようだが、それでも【暗殺者】が誰なのか気になるようでそちらの方ばかり見ている。

 私は灰髪の男が近づいたとき、反対に【暗殺者】から離れた人物に気付いた。恐らく、彼が【暗殺者】を捕らえたという人物なのだろう。だが、何故その場を離れているのだろうか。まるで逃げるように【暗殺者】から背を向け、人ごみに入り込んでいる。

 髪は長く、後ろで一つにまとめているその髪色は黒。その仮面は赤い色だけのシンプルなものだった。


(…まさか、)

 髪は黒いが、それでもその雰囲気が彼に似ていた。似ているだけかもしれない、その仮面の色彩から錯覚しているだけなのかも。それでも、私はその人物を目で追っていた。

「姫様。」

 私は爺に手をつかまれ、引き寄せられていた。

 気付けば、何時の間にやら王座の前の段差から足を踏み外しかけていた。それに気付かないほど私は彼だけを見ていたようだ。

 爺が何かを言うが私は彼を見ていた。彼は【暗殺者】の方に必死で身体を伸ばす群衆の一人を灰髪の男の前に押し出した。何時の間にか【暗殺者】の仮面は外されていた。


「ナイリーニ卿!!」


 先程までのざわめきはまだ自嘲されていたらしく、その一言から会場内はより一層混乱する。

 隣に居る人間を捕まえ、自分の持っているナイリーニ卿についての情報を話し出す。

 「権力者」「事情経済の支配者」色々な言葉が出たが、最終的に出てきたのは「独占の魔王」「物欲の化身」と言う言葉だった。何処からかナイリーニ卿が市場を支配し、そして私がそれを切り崩そうとしていると言う言葉があちこちから聞こえてきた。

(何故…)

 その情報はまだはっきりと確定はしていない為公表はしていない。知っているのはほんの一握りの人間だけだと言うのに…。

 私は何かおかしいと思いながら会場を見回す。【暗殺者】がナイリーニ卿だと確定しているのならば、彼は逃げられない。だが、【彼】は何処に居る…?


 ざわめく人ごみの中を掻き分け、必死に抜け出そうとする彼の姿が合った。だが、会場は明るく、下手に動くと怪しまれると思っているのか中々思うようには進めないようだ。

 私は手首を握る爺の手を振り払った。爺は多少驚いたような顔をしたが直ぐにまた私の手首を掴み、逃げないように用心している。

「痛いから放して欲しいだけだわ!」

「痛くとも、貴方の命には変えられません。」

 我慢してください。という爺は私の手首を掴み、会場の様子を窺っている。

 私は彼の方をみた。こんなにも近くにいて見ることが出来ているのに、確かめる事すら出来ない事を唯悔しく思っていた。




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