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()な灰被り  作者: よづは
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1:王城ととある一軒家での会話


はい、前回(退会前)に一度投稿していた作品です。

けっこう進んでいますがまだ完結していません!

かなりノロイ進行ですがよろしくお願いします!


(ミスなど発見しましたら報告お願いします。)



 栄華を極め続ける大国を治める、城の玉座。

 其処での遣り取りは、逢瀬を重ねる他国の王子には見せられぬもの。



「姫様、この贈り物はいかがいたしましょう?」

 【姫】。そう呼ばれ、玉座に座るのは闇をも明るく思わせる黒髪の少女。その瞳は赤く燃え上がる太陽の様だった。

 その瞳に直に見詰められ、魅了されないで居られるのは彼女の横の立ち尽くす王族付召使だけだろう。

 姫は目線だけを調度品へ向け、そうして吐き捨てるように言う。


「燃やしてしまえ」


 唯、その言葉に忠実に従う王族付召使。城の敷地内から白き煙が立ち昇るのは何度目か、大国の姫へと逢瀬を重ねる王子たちも一体何人になったのだろうか。町の人々は城を見詰めそれだけを思う。




 そんな中、公布された知らせと手紙は国を震撼させる。




 街を見渡す事の出来る丘の上に、貧相だが普通の一軒やより少し大きいぐらいの家がある。

 そこでは静かに、公布された手紙を読み上げていた男が居た。



「姫様はつまらない事がお嫌いらしい。」

 そう口にするのは義父、最近の知らせにより玉の輿に躍起になっている。息子を使って自分は左団扇にウハウハを夢見ているそうで。


「はぁ、だから庶民から夫など取ろうと言う五月蠅いことになったのか。」

 その言葉を放つのはフェアール義兄さん

「わがまま姫様に振り回されるかわいそうな夫、と言うところなのかな」

 続けるのは二番目のアルフェール義兄さん、二人とも町で評判高い色男だ。が、

 『甘いマスクで女をメロメロにさせるのだぁ!!』

 などと豪語している所は、何故か噂には流れない。長男と

 『灰被り以外は興味ない』

 などとほざく危ない次男は、はっきり言うと女には余り興味が無い。

 実際、興味があるのは女が自分に落ちるまでで、今は一度振った私にべったりだった。


「うん、興味ない。」

「何!」

 何故かと言うかやはり即答するフェアール義兄さん、冷めた顔して綺麗な笑顔って、鬼畜ですね義兄さん。

「同じく、灰かぶり以外は」

 アルフェール義兄さんは特に興味のなさそうな顔をする。

 もともとそんな顔をしているけど……、義兄さん。最後の【灰被り】の部分だけは何故、頬を赤らめるんでしょうか。気のせいだと思いたいけれども見えて、尚且つ明らか過ぎだ!!(気のせいだと思わせてくれ!)

「お前ら、姫だぞ、玉の輿だぞ。お前らが姫を落とせば何も不自由は無いんだ!お前たちなら簡単だろう!!!!」

「だから、ね。障害が無かったら面白くない」

 それも如何なのかと思う言葉。それだけ言うと長男は窓の外から覗いていた私に目線を送る。

 途端、義父に向けていた表情を一変させる二人の義兄さん。毎度思いますが、何故そんなにもキラキラした目でこちらを見てくるのでしょうか。こちらとしてはとてもとても不快なんですが…。


 そしてほんの一瞬経って、



「シンデレラちゃぁぁぁん!!で~としよぉ?」


 


 長男が顔を緩ませ微笑みかける。

 その笑顔は無邪気すぎて、私が何も知らなかったら一発でフェアール義兄さんの虜だっただろう。

 窓の外で薪を割っていた私に駆け寄って来て、窓から身を乗り出してくる。思わず怪訝な顔をすると、その顔に太陽に輝く綺麗な長い金髪が掛かる。

「義兄さん、鬱陶しいその髪、ちょん切っちゃって良いでしょうか?」

 私の言葉にフェアール義兄さんは相も変わらない笑顔で手を伸ばす。


「シンデレラちゃん、敬語はやめてって言わなかった?」


 伸ばした手は何時の間にか腰に巻きつき、強く抱き寄せられていた。…………………窓越しに、(手ぇ長いな、おい)

「義兄さん、邪魔です。」

 抱きつくならせめて外しやすい窓の外に来て欲しいものだ。それともそれを知っていてわざわざ抱きつきにくい窓越しに抱きついているのだろうか。

「え~? シンデレラちゃんがこっちに来ればいいんじゃない?」

 そしてより一層私を抱き寄せる義兄さん。全く、


「鬱陶しい。」


 一瞬、心の声を出してしまったのかと思ったが違った。


「髪どころか首もちょん切っちゃて………いいかな?」


 何時から私の後ろに居たのか短い灰髪の次男、アルフェール義兄さんは物騒な事を言いながらフェア義兄さんから解放、してくれたのだが…。

「アル義兄さん、貴方も離してくれませんか?」

 何故か。アル義兄さんも後ろから腰と両腕を掴み、抱き寄せていた。しかもそのまま私の赤く長い髪に心地良さそうに顔を埋めてくる。


「貴方なんて、アル義兄さんだなんて、ポイント高いけれど、【アル】って呼んで?」


 囁くアル義兄さんの息が頭に掛かる。意味が分からない、本当に解らない。『ポイント高い』って何がだ?

「呼びません。」

 薪割りの邪魔ですからと言う私に、フェア義兄さんは溜息をつく。

「…麗しい乙女がそんな事しちゃあ、駄目だよ…。」

 その言葉を聞いているうちに、アル義兄さんは腕を離すと同時に何かを何処からか取り出して私の前に見せる。

「もし、するんだったらこれを着て。」

 その取り出された服を見てフェア義兄さんは感嘆をもらす。

 膝より少し高いところまでの短めのスカートと言うかドレス。しかも裾に純白レースがふんだんに使われた基礎的なカラーは黒、所謂【黒ゴス】と言ったものだった。


「【黒ゴス】。 ゴシック・ロリータと呼ばれる、幼い印象を抱く衣装の事。主にフリルがふんだんに使われた人形が着るような衣装を指すことが多い。【黒ゴス】の「黒」とは黒を基調にしたものをさす。詰まり、正式名称は「黒ゴシック・ロリータ」である。」


「いえ、解説は結構です。フェア義兄さん。」

 何故か何時も絶妙なタイミングで解説を入れるフェア義兄さんは、マニアックな事に詳しい。そんなフェア義兄さんの解説にアル義兄さんが付け足す。

「袖は一応【萌え袖】、手が微妙に出ないやつ。」

 余計作業がしにくいです。と言い切るとフェア義兄さんが残念そうな声を出す。

「そんなぁ一回ぐらい着ても良いじゃない。こっちでその様子見てるからさ~」

 そんな義兄さんにアル義兄さんは同意したように激しく首を縦に振る。だけど私の心は変わらない。理由は幾つか、その一つが。


「その丈、下着がギリギリ見えるような長さにしてるでしょう。」


 途端、二人は目を逸らす。

 知ってんだよ、『シンデレラちゃんの足丈の四分の一ぐらいに調節すると【パンチラ萌え】な状態になるよ。』とフェア義兄さんが言ってた事ぐらい。

「……変態シスコン野郎共が、」

「ちょっ、今【シスコン】って言った?」

「【シスコン】、一線越えると、禁断の愛。…いいっ……!」

「【義兄さん】、いや、【お兄様】って、よんでぇぇ!」

 貶したはずなのだが二人はむしろ『シスコン上等!』といった具合に絡んでくる。この二人には「自尊心」とやらはないのか。

(…シスコンの解説はないんだ…。)


「どうしよう」

 二人には聞こえないぐらいの声で溜息をつく。だが、



「てめぇ!麗しのお兄様どもに絡まれて『どうしよう』ったあ、どういう了見だあああああああああぁぁぁぁぁぁ」



 予想駄もしないところからの罵倒を喰らって驚いて上を見上げる。見えたのは恍惚とした表情、じゃなくてこれは窓から降りてきたフェア義兄さんの顔。その向こう、二階の窓から覗く赤毛の絶世の美女。


「母さん」

 その怒りを浮かべた顔に少し慄く、だが其処で引くとまた怒声が響く事になる。

「おや、お母上様。今日は少しだけまともな様で、」

 あれ?と首を傾げてフェア義兄さんの発言と母さんの聴覚を疑う。確か、母さんは二階の窓際に居て今の声は兄さんたちには聞こえてないはず……。そんな事を思っている間にアル義兄さんが話し出す。

「邪魔しないでいただけますか、今、シンデレラを食そうとしておりますので、貴方が口を挟むと、逃げられてしまいます。」

 今度は明らかに母さんを貶していた。それを罵倒しようとするが、その前に。


「誰が食されるかあああああああ!!!」


 口を開くと自然でた言葉だった。

 嗚呼、母さん。私は確かに貴方の血です。先程の母さんそっくりの罵声があたりに響き、兄さん達に放って置かれ寂しそうにしていた義父さんが脅えている。

 アル義兄さんの鳩尾に肘打ちをクリーンヒットさせた後、シンデレラちゃん俺が代わりに食してあげるよ。なんてほざくフェア義兄さんを無視して、母さんの方を見る。

 窓際に居る母さんは、


 ………飛んでいた。


「いやあん、フェアちゃん達、冷たいわ。でも良い!冷たすぎて火傷しちゃいそう、腐腐腐腐腐腐腐腐。禁断の兄弟愛かしらぁぁぁん、」

 いや、肉体的にはそこに居たのだが、意識は何処か遠くへと飛び去っていた。

 前言撤回、やはり貴方と同じ血は流れてなさそうです。

「シンデレラちゃあん、無視しないでよ。お母上様なんてみてくれ だけ(・・)なんだから、シンデレラちゃんが羨ましいんだよ」

 何時の間にか目の前にまで顔を寄せていたフェア義兄さんに一瞥を投げかけると再び母さんへ目をやる。今度は意識もちゃんとあった。が、


「誰がみてくれだけだって!?シンデレラ!あんたなんて暖炉に入り込んで灰被ってたじゃないのお!やっぱりあんたは【 灰被り(シンデレラ)】よ!」


 言っても無い事を私に言ってくる母さん。(それを言ったのはフェア義兄さんです。)

 …元来なら、継母がいびるのだろうが、残念ならが病(『得腐腐腐腐腐腐腐腐、ホントに可愛らしいねぇ』なんて言いながら娘に『お父様、もっとかわいがってほしいですぅ』なんて危ない事言わせる奴が病んでいないとは言えない。)で、亡くなったのは父で(『もう、ロマンは人には理解されない!』なんて言い捨てて地平線の彼方へ走り去ったのはもう父としては死亡扱い)義父がいびると言う可能性は始めの二人の義兄さんの反応で皆無となった。否、もともと義父はヘタレなのだが。


 このままでは埒が明かない、そう思ってもう一度母さんを見据える。

 母さんは、ああん?何ガン飛ばしてんじゃとでも言うように折角の美貌を極限まで醜く崩していた。

 その母さんから受け継いだのは見事な赤毛と強気な根性だけではなかった。そう、母さんの最上級にして唯一の武器。

 

 【美】だ。


 頬の筋肉を綻ばせてから、そっと上げる。鋭いのではなくフェア義兄さんのように甘い、甘い笑顔を―――、

 私には母さんだけではなく病気の父の血も入っている。父は精悍な顔立ちだったそうで私はそれを色濃く受け継いでるため、私自身がそう振舞ってしまえば誰も私と解らない。

 そして浮かべた顔は母さんの頬を緩ませる。

(シンデレラちゃん、【あれ】で(みてくれだけの女のハート)打ち落として、)

 フェア義兄さんがそう耳に囁く。言われるまでも無く私は既に行動に移していた。




「すみません、美しい方。どうやら私は貴方様のご機嫌を損ねてしまいましたか。」




 口から出るのは静かな男の声。途端、母さんは顔を真っ赤にする。


「あら、何時いらっしゃったのかしら【月下の君】。先程の言葉は 召使(・・)に言った事ですの。すみませんね、どうぞ上がって下さいません事?お話したいわ。」


 母さんは病だ(【腐】ではあるがそれではない)、私を私と気付かない。何時からか、一人芝居にも気付かなくなった。その上、もう私を可愛がる事は無い。

 母さんにとって、私は【父さん】で。父さんは死んだ事になっているから……。


(【腐】。正式名称【腐女子】稀に【貴腐人】と呼ばれるが、年齢に関係なく【腐女子】と呼ぶ。マニアックな世界に詳しく、またそれらを好む女の人の事。俗に【同性愛】や【特殊プレイ】と言ったものを好む人と限定される事があるが、公にいえない卑猥なものを好む女の人を指す。)

(だから解説はいいです。)

 本当に何故こんな絶妙のタイミングで解説を入れるのだろうか、感傷すらも何処かに吹っ飛んでしまった。


「いえ、【紅の姫君】、(わたくし)は立ち寄っただけですから、そんな厚かましい事、折角のお誘いですがお断りいたします。」

「あら、残念、では、このままでも良いでしょうか?お話だけでも…」「姫、」

「私はこちらのフェアール殿にも私用が御座いまして………」


「いやん、(禁断の同性愛!?しかも逢引、人妻とその息子で二股!?)それじゃあ、お邪魔でしたわ、またお会いできますかしらあ?」


 なんだか、また飛びかかっているが私は止めを刺すつもりで最上級の笑顔を浮かべる。



「ええ、麗しの姫、時と運命が私たちを引き裂こうとも、必ず。その瞳に私の姿を映して見せましょう。」



 ずきゅーん!まさにそんな効果音が似合うように、母さんは窓枠から消え去る。その後ドサッ、と言う音が聞こえたのだからベッドに倒れたのだろう。そんな破壊力があったらしい。


「さっすが、シンデレラちゃああああああああああああん…!」

 フェア義兄さんは何故か大絶賛、ちなみにアル義兄さんは未だに地面で気絶している。(そんなに強くやったかな?)

 と、言うよりも、【あれ】の何が良いのだろうか。あんなに窓が真っ赤になるぐらい鼻血を吹くなんて……


「持ってないモノを理解する事なんて、出来るはず無いかな?」


 本当に解らない事ばかりでこれからのことも、分かるはず無いけど一つだけ知っている。



“これからも、大変だ”





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