第4話 食料と水と武器 - 毒にご用心
少し歩くと、20m先にウサギがいた。角が生えている。視力が良くなったというより[遠見]のスキルだろうか、ハッキリと見える。詳しい情報を求め[鑑定3]を使った。
[種別 (ホーンラビット)、ランク(G)、出生地(ビギンの森)、スキル(角攻撃)]
ラージフォレストウルフより、2ランク下だ。ウサギだし、角さえ注意したら楽勝かな。手裏剣の練習も兼ねて、様子見てみるか。そう思って、軽いノリで手裏剣を投げた。
「あれっ!当たった!」手裏剣は、ホーンラビットの頭に突き刺さっていた。近寄って鑑定してみる。
[名称(ホーンラビットの死体)、用途(緑魔石小、角は下級武器の素材、肉は食用、毛皮は一般的防寒用素材)]
[収納1]に取り込み、解体した。肉は「食用可」ではなく「食用」にになっているから普通に食えるのだろう。とりあえず、食料ゲット。手裏剣も忘れずに収納した。
あとは、「水が欲しいな」と思っていたら、水が流れ落ちる音と、水の匂いがしてきた。音の出る方向へ近づくと、崖の中ほどから勢いよく水が吹き出しており、小さな流れが出来ている。水を鑑定すると
[名称(清水)、用途(飲用、森の魔素を取り込んでおり、若干の魔力を回復する。ポーション作成に最適)]
そうか、[魔素]か。魔素の世界なんだな。しみじみと異世界に来たことを感じる。
しかし、あっさりと飲み水が見つかるとは。ゲームでいうと、ここまでイージーモードで来ている。まさか、夢でしたということはないよな。オオカミに削られた足は相当痛かった。あんな痛さが夢だったら泣けてくる。
清水は、飲み水、ポーション作りと何かと役にたちそうなので、[収納1]に取り込むことにした。1辺が3メートルの立方体の箱をイメージして、湧いてくる水を直接取り込むことにした。容器が要らず、水のままで取り込めるとは、優秀な[収納]スキルだ。時間がかかるようなので、その間に、辺りに転がっている1m程の木を[収納]し、高さ10cmくらいを[解体]して取り出した。それを、手で持てるサイズの円柱形に加工し、手裏剣の刃で中をくりぬき、コップをつくった。[収納1]からその中へ水を注ぎ込むイメージを浮かべたら、ちゃんとコップが水で満たされた。
その水をゴクゴクと飲んだ。その途端、胸が焼けるように痛み出した。痛さで地面を転がりながら胸へ向けて[ヒール]をかけた。しかし、痛みは治まらない。それならと、[ハイヒール]をかけた。痛みは少しも変わらない。転移1日目にして、早くも死ぬのかと諦めかけた時、ふと、思い出した。
[ハイキュア]。胸の痛みがスッと引いた。状態異常の場合は、[キュア]を使うのを忘れていた。危ないところだった。しかし、何故、「状態異常」なんだ。
今一度、水を鑑定したが、「飲用」に変わりは無い。コップに少しだけ残った水を鑑定したところ、「猛毒を含んだ水」と出た。どうして?[収納]からコップに入れただけじゃないか。ん、コップ?慌ててコップを鑑定した。
[名称(ブースの木から作ったコップ)、用途(水溶性で無味無臭の猛毒を持つ、暗殺等に有効)]
油断していた。上手くいきすぎて、「イージーモード」と浮かれていた。僕のバカヤロー。ここは異世界だ、慎重に行動しないと、命がいくつあっても足りない。だいたい、恋人ができて、クリスマスだの、バレンタインデーだのと浮かれていたから、あんな裏切りに気が付かなかったんだ。忘れようとしていた失恋のショックが、フラッシュバックしてきた。ひと月前と同じように頭を抱えてじっと蹲っていたが、しばらくすると声が聞こえてきた。
「指定された容量の清水を収納しました」
忘れていた。僕が落ち込んでいた時間も、スキルはコツコツと仕事をしていたのだ。しかし、30分程もかかったのは、何故だ。大容量の収納は時間が掛かるのか?
あぁ、そうか。時間が掛かったのは、湧き水の方か。3m×3m×3mの容量だと27立方mになるのか。重量にして27tだ。そんな量を、湧き水から直接取り込んでいたら時間はかかるな。文句言わずに働くスキルに感謝。そして、27tの水を持ち歩く自分を想像したら、なんか可笑しくなって、少しは心も軽くなった。
気が紛れたところで、ブースの木で作ったコップは収納し、今度は慎重に木を選んで、ちゃんとしたコップを作ることにした。辺りの木に鑑定をかけていたら、
[名称(鉄の木)、用途(細工は困難であるが、非常に硬く、武器等の素材となる。)、形状(黒色、直径15cm、高さ18m)]
良さそうな木なので、とりあえず丸1本収納し、幹から根や枝葉を取り払った。
次に、幹を取り出し、[錬金術]の[分離]で樹皮を剥ぎ、[変性]で乾燥させ、[変形]で2m毎に切り分けた丸太を作った。硬さなど問題とせず、イメージするだけでサクサク進む。
次は、コップの作成だ。取っ手のついたマグカップを作ろう。先ほどの丸太から10cm程の輪切りを取った。ブースのコップを作った時は手裏剣で削ったが、[錬金術]の[変形]を試した。なんなくマグカップができた。鑑定すると、
[名称(鉄の木で作った取っ手付きコップ)、用途(硬くて軽く、非常に良質なコップ)]
これなら、水を飲んでも大丈夫だ。[収納1]の水をマグカップに移し、飲もうとしたが、この水がどのくらいの魔力回復効果があるか確かめるため、先に自分に[鑑定2]をかけた。
名前[ひかる・てらだ]、種族[人間]、年齢[19歳]
称号[転移者]、職業[忍者]、レベル[1]
HP[ 90/100]、MP[ 70/100]
スキル:ポイント[9200]
収 納(中級)[100] →
鑑 定(中級)[100] →
回 復(中級)[100] →
錬金術(中級)[100] →
忍 術(上忍)[100] →
ステータス:ポイント[9000]
STR(筋力)[200]
VIT(体力)[200]
DEX(器用)[200]
INT(知力)[200]
AGI(敏捷)[200]
HPが5ポイント減ったのは、毒のせいだ。MPが25ポイント減ったのは、ヒールとキュアを使ったからだ。普通の回復は5ポイント減、ハイが付くと10ポイント減になるようだ。現状は分かったので、早速、カップ1杯の水を飲んだ。MPが73になった。100にするには、あと9杯も水を飲まなければならない。ちょっとキツいな。できるだけ早めに、MP回復ポーションを作ろう。
次に、収納している鉄の木を使って、石槍と薙刀の柄を作り交換した。もちろん圧縮強化済みである。同様に棒状手裏剣10本、苦無も3本作った。最後に150cmの金剛杖を作った。かなり圧縮をかけたので、非常に硬い。杖や雑草払い、咄嗟の防御にも使えそうだ。
水を飲んで一息ついたが、再び歩き出す前に、持ち物をチェックした。
上着は、トレーナーに緑のネルシャツ、ポケットの多いフィッシングベスト、フライトジャケット、全体的に緑色だ。下は、パンツにストレートのブルージーンズ、靴下にスニーカータイプのワークブーツだ。
持ち物は、スマホ(当然圏外)、S30Vステンレス鋼製サバイバルカード(高かった、常に持ち歩いている)、多機能型腕時計(ソーラ電池10年保証)、キーホルダー型ライトには鍵型多機能ツールと家の鍵が付いている。そしてライフジャケットのポケットに280mlのお茶のペットボトル、特大あんパン。これって、お金払っていない、万引き状態?
腕時計以外は、[収納1]に入れた。あんパン食べたかったけど、この世界には絶対に無いと思い、大事に取って置くことにした。
つたない作品を読んでいただきありがとうございます。
次回の投稿は、2月24日を予定しています。




