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【第3章完結済】魔力ゼロの最底辺、ゴミ山で拾った「義眼」が規格外すぎた 〜魔法が絶対の世界ですが、俺には敵の動きと弱点が「線」で視えるので、当たらなければどうということはありません〜  作者: ちゃんつよ
虚無の研究所(ラボ・ゼロ)編 ~鋼鉄の理(ロジック)と、3000年の箱舟(アーク)~

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第49話:深層の包囲網と、雷帝の支配(ケラウノス・ドメイン)。……その「天災」は、科学で作られる

【ラボ・ゼロ・深層入り口】

 中層の「粉塵爆発」による殲滅を抜け、一行はついに未踏エリア――『深層』へと足を踏み入れた。

 そこは、これまでの直線的な通路とは全く異なる異様な空間だった。

 天井は高く、巨大な鍾乳石が牙のように垂れ下がっている。

 通路は網目状に複雑に交差し、どこから敵が湧き出してくるか分からない、天然の迷宮となっていた。

 空気すら重く、湿ったカビと鉄錆の臭いが鼻をつく。

「……おい、変だぞ」

 先頭を歩いていたアビアが足を止め、ランタンを壁に近づけた。

 その顔色は、いつになく険しい。

「『野営印キャンプ・サイン』が一つもねえ」

 ダンジョン攻略の鉄則として、安全地帯を見つけたら後続のために印を刻むのが流儀だ。

 だが、ここにはそれがない。

 あるのは、壁に刻まれた無数の爪痕と、装備の残骸、そして風化した人骨だけ。

 つまり、ここに足を踏み入れた冒険者は全員、「休む暇もなく殺された(全滅した)」ことを意味している。

 カサカサ……。

 物陰で何かが蠢く音がする。

 休めば死ぬ。止まれば喰われる。

 そんな無言の圧力が、肌を刺すように漂っていた。

『警告:敵影散開。待ち伏せの可能性あり。……警戒レベルを最大に引き上げます』

 レティナの無機質な声が、ヴァルの左肩のスピーカーから響く。

「……了解」

 ヴァルは右耳のオラクル・サイトを最大出力で展開した。

 視界に赤いグリッドが表示され、ヴァルの持つ歯抜けの地図に、次々と赤い光点(敵性反応)が書き込まれていく。

 その光の数は、絶望的なほどに多い。

【作戦会議:タートル車内】

 安全を確保しつつ、タートルを一時停車させ、緊急会議が開かれた。

 ヴァルが地図に付け足した赤い点は、不気味な配置が描かれていた。

 深層全域には、敵がほとんどいない。

 その代わり、深層から最深部への入り口ゲート前に、「赤い海」が密集し、ピクリとも動かずに待機していたのだ。

「……妙だねぇ。籠城戦でもやろうってのかい?」

 マギーが煙草を噛み潰す。

「魔物ってのは本来、本能で人間を襲ってくるはずだ。これほど整然と此処ゲートを守ってるのは、何かが『指揮』をしている……って事だろうね」

 未踏ダンジョンだ、何が起こっても不思議ではない。一同は驚きもせず、息を呑む。

「真正面からぶつかれば、また『数の暴力』で磨り潰されます」

 ヴァルが冷静に分析する。

 敵の数は千を超えているだろう。まともに戦えば、こちらの弾薬と魔力が先に尽きる。

 だが、レティナが冷徹な戦術プランを提示した。

『提案:包囲殲滅戦キル・ボックス。敵を三方向から圧迫し、中央の一点に集めて消滅させます』

 ヴァルが頷く。

『配置はこうです。

  正面(押し込み):カイル、マスター。

  右舷(押し込み):ティア、ララ、ルーナ。

  左舷(主力):タートル (アビア、マギー、タルゴス)。

 ……敵を『肉の壁』ごと粉砕させます』

【最深部入り口前広場】

 そこは、巨大な鉄の扉が鎮座する広大なホールだった。

 その扉を守るように、千に近い重装甲の魔物たちが密集陣形を敷いている。

 『メック・ベア』、『アイアン・リザード』、『ギガ・ビートル』。

 どれも単体で中ボス級の強さを持つ怪物たちが、軍隊のように整列していた。

 グルルルル……!!

 侵入者を見つけた魔物たちが、一斉に咆哮を上げる。

 大気を震わす殺意の波動。

「作戦開始!」

 ヴァルの号令と共に、右舷からティアたちが動いた。

「A.F. Code... 04:GRAV-M【重力の檻(グラヴィタス・プリズマ)】!!」

 ズンッ!!

 右側の敵集団に重力が掛かり、強制的に中央へ押し込まれる。

「そっちには行かせないわよ!」

 ララがヒート・スピアで牽制し、ルーナが風魔法で退路を断つ。

 敵の注意が右に向いた瞬間、正面のカイルが杖を振るった。

「道を開けなさい! A.F. Code:02高圧水柱イグニス・ジェッタ!!」

 シュパァァァンッ!!

 音速の水流カッターが水平に走り、最前列の魔物たちを装甲ごと両断した。

 鮮血と鉄屑が舞う。

 だが、敵は怯まない。

 あろうことか、切断された仲間の死体を盾にして、後ろから重なるように突っ込んできたのだ。

 ドガガガッ!

 肉の壁が、水流の威力を吸収していく。

「なっ……!?」

 カイルが驚愕に目を見開く。

 水流カッターは鋭利だが、質量のある物体を貫通する力は弱い。何層にも重なった筋肉と装甲の「厚み」が、最強の刃を止めたのだ。

「くっ、数が多すぎる! 肉の厚みで水圧が減衰する……! 切れ味が出ない!」

 カイルが焦りの声を上げる。

 『面』での制圧には限界がある。敵は死を恐れず、死体ごと押し寄せてくる狂気の軍団だ。

「カイルさんは『面』を維持してください。フルコードで打ち込み……残った敵は『点』です。僕が抜きます」

 隣に立ったヴァルが、静かにアサルトライフルを構えた。

 敵との距離、約50メートル。

「A.F.Code02:PRESS-M【高圧水柱イグニス・ジェッタ】」

 シュパァァァァァッ!!!

 先ほどより強いフルコードでの水流カッターが敵を襲う。

 カイルの水流を耐え抜いた上位種が、猛スピードで突っ込んでくる。

 カチリ。

 ヴァルは親指でセレクターを「セミオート(単発)」へ切り替えた。

 タン、タン、タンッ。

 乾いた発砲音が、正確なリズムで刻まれる。

 一発必中。

 突出してくる敵の、装甲の隙間――目、口、関節。

 弱点だけをピンポイントで貫いていく。

 ギャッ……!

 先頭の敵が崩れ落ち、後続の進路を塞ぐ。

 だが、さらに奥から、盾を持った重装甲の『シールド・ウルフ』が迫る。

 分厚いミスリルの盾は、単発の弾丸では弾かれる。

 ヴァルは瞬時に判断し、指先でセレクターを弾いた。

 「3点バースト(3発制限点射)」へ。

 呼吸を止め、トリガーを絞る。

 タタタン! タタタン!

 一度のトリガーで3発の弾丸が吐き出され、ほぼ同じ着弾点に吸い込まれる。

 1発目が盾の表面を砕き。

 2発目が亀裂を広げ。

 3発目が、その奥にある肉体を深々と抉る。

 ドォォォンッ!!

 シールド・ウルフが、盾ごと胸を吹き飛ばされて仰向けに倒れた。

 ヴァルの足元には、熱い真鍮の薬莢がチャリン、チャリンと音を立てて積み上がっていく。

「リロード(再装填)!」

 残弾がゼロになる前に、ヴァルは素早くマガジンを叩き落とし、新しい弾倉を叩き込んだ。

 タクティカル・リロード。

 コンマ数秒の隙すら見せない、洗練された動作。

 鼻をつく硝煙の匂いが、彼の集中力を極限まで高めていた。

「道は僕が作ります。カイルさんは振ってください!」

「了解です! ……すごい、魔法よりも速い……!」

 ヴァルが穴を空け、カイルが薙ぎ払う。

 科学と魔法の連撃が、敵の鉄壁の防衛線を食い破っていく。

【決着:雷帝の支配】

『今です! 敵が中央に固まりました!』

 レティナの声が響く。

 ティアたちの押し込みと、カイルたちの足止めにより、敵集団はタートルの射線上に密集した。

 広場の中央は、行き場を失った魔物たちで黒い山となっていた。

 ヴァルが合図し、カイルが上空へ照明魔法「小さな火花ミナス・スパークル」を撃ち上げる。

 パァァァッ……!

 白い閃光が合図だ。

「兄貴、お願いします!」

 タートルの荷台で、アビアがニヤリと笑う。

 全身からバチバチと紫電が迸っている。

 周囲の空気がイオン化し、髪の毛が逆立つほどの静電気が発生していた。

「へっ、待ちくたびれたぜ……!」

 運転席のタルゴスが、赤いスイッチを叩いた。

「喰らえぇぇッ!!」

 ドシュシュシュシュッ!!!

 タートルの側面から、無数のワイヤー付きパイル(避雷針)が射出された。

 それらは放物線を描き、敵集団の中へ、あるいは周囲の地面へと突き刺さる。

 ガキン! ガキン!

 鋼鉄の杭が、敵の群れの中に「電極の森」を作り出した。

 準備完了。

 アビアは両手を広げ、溜め込んだ全身の魔力を解放する。

 それは剣技ではない。天災だ。

「消し飛びな! A.F. Code... 11:AURA-Ω(オメガ)……【雷帝の支配ケラウノス・ドメイン】!!」

 カッッッ!!!!

 視界が白一色に染まった。

 聴覚を奪うほどの轟音と共に、パイルのネットワークを通じて、超高電圧の電流が広場全体を駆け巡る。

 バリバリバリバリバリッ!!!

 落雷ではない。地面そのものが帯電し、空間全体がプラズマの檻と化したのだ。

 数千度の熱量と、神経を焼き切る電気ショック。

 数百の魔物が、断末魔を上げる暇もなく蒸発し、炭化した。

 装甲が溶け、肉が灰になり、骨すら残さない。

 圧倒的な、純粋なエネルギーの奔流。

 やがて、光が収まる。

 もうもうと立ち込める白煙と、オゾンの臭い。

 静寂。

 そこにはもう、動くものは何もなかった。

 ただ、黒い炭の山が風に崩れていくだけ。

「……へっ。ざまぁみろ」

 アビアが拳を握りしめ、荒い息を吐く。

 魔力は空っぽだが、心地よい疲労感だった。

 ついに、彼らは「数」の暴力を、「質」と「戦術」でねじ伏せたのだ。

 そして、煙の向こうに、最深部の巨大な扉が姿を現した。

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!


「科学的無双」後半戦!

カイルの水流カッター(面)と、ヴァルの精密射撃(点)の連携。

そして、アビアの広域殲滅魔法「雷帝の支配ケラウノス・ドメイン」。

(パイルを打ち込んで電極にする戦法、絵面が派手で大好きです)


「剣技ではない。天災だ」

この一行が書きたくて、ここまで準備してきました。

数百の魔物が蒸発するカタルシス、楽しんでいただけましたでしょうか?


次回、ついに最深部の扉が開きます。

待ち受けるのは、「指揮官」か、それとも……?

第3章クライマックス、突入です!


(※ネトコン14参加中です! 「アビア兄貴かっこいい!」「雷魔法最高!」と思った方は、応援ブクマいただけると嬉しいです!)

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