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【第3章完結済】魔力ゼロの最底辺、ゴミ山で拾った「義眼」が規格外すぎた 〜魔法が絶対の世界ですが、俺には敵の動きと弱点が「線」で視えるので、当たらなければどうということはありません〜  作者: ちゃんつよ
虚無の研究所(ラボ・ゼロ)編 ~鋼鉄の理(ロジック)と、3000年の箱舟(アーク)~

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第48話:電子の歌姫(レティナ)と、爆炎のウィンク。……作戦通りに、敵は踊る

【移動中:タートル・車内】

 新生『ユリシーズ・アトラス』を乗せたタートルは、再び『ラボ・ゼロ』への道を爆走していた。

 車内では、最終的な装備チェックが行われている。

 御者台で手綱を握るマギーが、背後のヴァルに「ある物」を放り投げた。

「ほらよ、坊や。受け取りな」

「……これは?」

 ヴァルが受け取ったのは、革ベルトで固定されたレトロな真鍮製のスピーカーと、接続ケーブルだった。

「『侵食シリーズ』の欠点はね、所有者とAIだけの『閉じた世界』に依存しちまうことさ。……そいつを右耳の機械に繋ぎな。仲間外れは寂しいだろう?」

 マギーはニヤリと笑う。

 ヴァルは苦笑し、右耳のオラクルサイトにスピーカーから伸びる端子を接続しようとする。

『拒否:えっ、私が喋るんですか? お断りします。知能指数の低い有機生命体との会話など、リソースの無駄です』

 ヴァルの脳内に、レティナの冷ややかな拒絶音が響く。

「……拒否したそうですが……」

「ああん? 機械が恥ずかしがってどうする! ほら貸せ、俺が繋いでやる!」

 タルゴスが強引にスピーカーをヴァルの左肩に固定し、ケーブルを背中に回して配線を弄る。

『警告:マスター、止めてください!』

「よし、接続完了!」

 あれよあれよと言う間に接続が終わってしまう。

 アビア、カイル、ララ、ルーナ、ティア。全員が興味津々でヴァルの左肩を見つめる。

 沈黙するスピーカー。

「ほらレティナ。……みんな待ってるぞ。挨拶しないのか?」

『…………拒否します。恥ずかしいです』

 意外と乙女な理由だった。

 ヴァルは溜息をつき、懐から上質な魔鉱石ハイ・グリットを取り出してチラつかせる。

「……これ、帰ったらあげるつもりだったんだがなぁ。挨拶できないヤツには、あげられないな」

『……それは卑怯では?』

「じゃあ、答えはわかるな?」

 数秒の沈黙。

 カチリ、とスピーカーから通電音がした。

『…………わかりました。やります。……プライドより実利です』

 ザザッ。

 ノイズ混じりの、しかし透き通るような理知的な女性の声が、車内に響き渡った。

『……音声出力テスト。……私はレティナ。正式名称:Providence Retina。個体名レティナ。マスターのサポートAIです。……以後、お見知りおきを』

「おおっ! すげえ、本当に声がしたぞ!」

「ヴァル君、女の子を連れ歩いてたのね!」

 一同が盛り上がる。

 だが、ララだけは目を細めた。

(……やっぱり、女性の声だったのね)

 一瞬、ヴァルの相棒の座を奪われたような嫉妬を覚えるが、魔鉱石グリットに釣られて不貞腐れている様子を感じ取り、クスクスと笑った。

「ふふ。なんだか、手のかかる子供みたいで可愛いわね」

『訂正:私に年齢はありません。高度な演算能力を持つ……』

「ほら、魔鉱石だ」

 左目の義眼から半透明の細い管のようなものが伸び、魔鉱石を刺し、シュゴォ……と吸引を開始した。

 和やかな空気が流れる中、一同は作戦会議を開始した。

 ーー数時間後、タートルは目的地へ到着する。

 眼前に広がるのは、前回敗走した『ラボ・ゼロ』の入り口。

 巨大な洞窟型ダンジョンである。それは入るものを飲み込まんとするように大きな口を開け続けている。

 深呼吸をしたアビアが新しい籠手を打ち鳴らし、号令をかけた。

「よし、お喋りはここまでだ! 作戦開始! ……皆、ヴァルの『プラン』通りに動けよ!」

【Phase 1:遊撃戦スカーミッシュ

【作戦会議:タートル車内】

 ヴァルが作戦内容の説明を開始する。

「まずは上層から中層。ここは『踏破済み』の入り口です。メイン通路から無数に枝分かれした道があり、そこから魔物が湧き出して背後を取られる危険地帯です」

 ヴァルはマギーが持っているラボ・ゼロの踏破済みマップを指差す。

「ここでは、俺がレティナを使って『全方位索敵』と『中長距離攻撃』を担当します。ララさんは『近・中距離』での迎撃をお願いします」

 ララが少し不安げに眉を寄せた。

「任せて。……でもヴァル、私の槍じゃリーチが足りないわ。四方八方から囲まれたら、あなたを守りきれないかもしれない」

 ヴァルは首を振った。

「大丈夫です。僕が貴女の『眼』になります。ララさんは僕の手足となって、近づく敵だけを狩ってください。……背中は、僕が守ります」

「……ふふ。生意気ね。わかったわ!」

【現在:ラボ・ゼロ上層】

 暗闇に赤い目が光る。

 天井の鍾乳石の影から、無数の『メック・バット』と『アイアン・リザード』が襲いかかってきた。

『警告:敵性反応多数。右前方、距離15。上空、距離8。……死角より接近中』

 レティナの声が、スピーカーを通じて全員に共有される。

「右30度、跳躍!」

 ヴァルの指示が飛ぶ。ララは疑うことなく、見えない敵に向かって跳んだ。

「はぁぁぁッ!」

 ガチンッ!

 石突を叩きつけ、赤熱した『ヒート・スピア』を振るう。

 暗闇から飛び出してきたリザードが、反応する間もなく溶断された。

 その直後だ。ララが作った隙を狙い、別のコウモリがヴァルへ急降下する。

 ヴァルは動じない。流れるような動作で、アサルトライフルのレシーバー左側にあるセレクターレバーを親指で弾いた。

 「Sセーフティ」から「1セミオート」へ。

 カチリ、という小さな金属音が、戦闘開始の合図だ。

 ストックを肩に食い込ませ、アイアンサイト越しに迫りくる影を捉える。呼吸を止め、トリガーを絞る。

 タン、タン、タンッ!

 乾いた破裂音が、リズミカルに響く。マズルフラッシュが暗闇を切り裂き、排莢口から熱い薬莢が弾け飛ぶ。

『残り207発』

 レティナが冷静に弾数をカウントしながら、ヴァルが次の標的へ銃口を向ける。ララの頭上スレスレを通過した5.56mm弾が、コウモリの眉間を正確に撃ち抜いた。

 ギャッ……!

 魔物たちは悲鳴を上げる間もなく絶命し、ボトボトと落ちていく。

「ナイス、ララさん」

 ヴァルは歩みを止めず、流れるような動作でクリアリングを行う。

 パンドラによって拡張された情報処理能力は、360度の戦場を「データ」として捉えている。

「この槍いい感じよ、ヴァル。軽くて鋭い!」

 ララが嬉しそうに槍を回す。

『当然です。私が設計・生成したのですから。感謝してください』

 レティナが得意げに言うと、ララは微笑んだ。

「ふふ、ありがとうレティナちゃん。やっぱり可愛いわね」

『……むぅ。子供扱いしないでください』

 言葉以上の連携。

 ララは大人の余裕を見せつけながらヴァルの死角を埋め、ヴァルはララが作った隙を確実に仕留める。

 その無駄のない行軍に、後方のアビアたちも舌を巻いた。

「ほぅ……大した連携だ。ありゃ俺たちの出る幕はねえな」

 一行は魔力消費を抑えつつ、中層まで辿りつく。ヴァルたちが倒した魔物はアビア達の後続が回収していく。

『マガジン3つを使用済み。残り180発です』

「よし、ここまでは順調だ」

【Phase 2:殲滅戦ワイプアウト

【作戦会議:タートル車内】

 ヴァルが地図の中層エリアを指す。

「問題はここからです。中層から深層手前。前回、僕らが『数の暴力』で敗北したエリアです」

 全員の顔が引き締まる。

「ここからは枝分かれした道は狭いですが、メインの道は広いです。……なので、そこを主戦場とし、一気に殲滅を計ります」

 アビアが腕を組む。

「どうやって? また囲まれるぞ?」

「いえ。まずは俺たちで先行し、敵を引きつけます。メインルートにおびき寄せるんです」

 カイルが杖を握りしめる。

「囮、ですか」

「はい。敵がメインルートに出た瞬間、ティアさんの魔法でタートル前に固定し、ルーナさんの上級風魔法で入り口に向かって『空気を抜いて』ください」

「えっ、窒息させるってこと?」

「いえ。……元に戻る空気を利用し、粉塵(小麦粉)を撒くんです」

【現在:ラボ・ゼロ中層】

 ズゴゴゴゴゴ……!!

 地鳴りと共に、無数の『メック・ベア』と『ソルジャー・アント』の大群が押し寄せてくる。

 その数、数百。赤い津波の再来だ。

「来たぞォォォッ!!」

 囮役のアビアたちが叫びながら、メインルートの広場へバックステップで戻る。

 敵は密集し、我先にと獲物に群がる。

 好機チャンス

「今よ! A.F.Code04:GRAV-M 【重力の檻グラヴィタス・プリズマ】!!」

 ティアが杖を掲げる。

 ズンッ!!

 空間が歪み、数倍の重力場が発生。覆いかぶさろうとした魔物の群れが、見えないプレス機に押し潰されるように一箇所に圧縮されていく。

「ナイス、ティア! ……さあ、この前のお返しだよ!」

 ルーナが前に飛び出し、両手を広げる。

「A.F.Code03:VACUUM-S【大気の吸尽アトモス・ドレイン】!!」

 ヒュオォォォォォッ!!

 一瞬にして、魔物が群がる広場の空気が強制的に排気された。

 真空状態。音すら消えた世界で、魔物たちが苦悶にもがく。

 だが、本番はここからだ。

「そこっ!」

 ルーナが、足元に用意していた「小麦粉の樽」を蹴り飛ばした。

 真空が戻ろうとする強烈なバックドラフト(逆流)に乗り、白い粉が舞い上がる。

 それは瞬く間に敵集団の隙間に入り込み、広場全体を白い霧で満たした。

 敵は密集し、空気と可燃性微粒子が最適に混合された状態。

 お膳立ては整った。

 ルーナはニヤリと笑い、右手を銃の形にして突き出した。

最小の脈動プッスルス・ミニマ

 指先に、小さな火種を灯す。

BANGバン

 パチンッ!

 ドォォォォォォォォォォンッ!!!!

 閃光。そして、轟音。

 粉塵爆発の連鎖が、閉鎖空間の奥まで紅蓮の地獄へと変えた。

 衝撃波が洞窟内を駆け抜け、一列になっていた敵の群れが一瞬にして消し飛ぶ。

 残ったのは、黒焦げの肉片と、鉄屑だけ。

 もうもうと立ち込める硝煙の中。

 ルーナは煤けた顔で振り返り、バチコンとウィンクを決めた。

「へへん、いっちょ上がり!」

 完璧な作戦遂行。圧倒的な火力。

 ドヤ顔全開のルーナに対し、アビアは真顔で通り過ぎた。

「おい」

「えっ?」

「何痛々しいことしてる。まだ先は長いんだ、早く行くぞ」

「なっ……!?」

 ルーナの顔が、爆発よりも赤くなる。

「う、うるさいうるさいうるさい! カッコつけたかったのよリーダーのバカぁ!」

 ポカポカとアビアの背中を殴るルーナ。

「痛ぇよ! ちょっ、髪が! 俺の前髪が爆発でチリチリになってるじゃねえか!」

「知るか! 禿げちまえ!」

 さらに後方からは、マギーの怒鳴り声が飛んでくる。

「アンタたちぃ! タートルが煤だらけじゃないか! 掃除するのは誰だと思ってるんだいッ!」

「グゥゥ…」

 タートルも悲しげに鳴いた。

 緊張と緩和。

 ヴァルとレティナは、その騒がしい様子を後方から見つめていた。

『……有機生命体特有の、非効率なコミュニケーションですね』

「あはは、そう言うなよ。……いいチームだろ?」

『……理解不能です。ですが、悪くはありません』

 新生ユリシーズ・アトラス。

 圧倒的な実力と、科学と魔法の融合。

 彼らはついに、前回撤退を余儀なくされた地点を突破し、『ラボ・ゼロ』の深層へと足を踏み入れる。

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!


今回は「科学的無双」の前半戦!

ヴァルの銃撃と、ララの槍。

そしてルーナのバックドラフトと粉塵爆発。

物理法則と魔法のコンボが決まりまくりました。


レティナもついに(魔鉱石に釣られて)喋りましたね。

ララさんとの「お姉さんと生意気な妹」みたいな関係、可愛くないですか?

(そしてドヤ顔をスルーされるルーナ……ドンマイ!)


次回は後半戦。

アビアの「避雷針戦車」とカイルの「水流カッター」が火を噴きます。

そして深層で待つものとは……?

いよいよ『ラボ・ゼロ』攻略も大詰めです!


(※ネトコン14参加中です! 「レティナ可愛い!」「ルーナのウィンク最高!」と思った方は、応援ブクマいただけると嬉しいです!)

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