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【第3章完結済】魔力ゼロの最底辺、ゴミ山で拾った「義眼」が規格外すぎた 〜魔法が絶対の世界ですが、俺には敵の動きと弱点が「線」で視えるので、当たらなければどうということはありません〜  作者: ちゃんつよ
虚無の研究所(ラボ・ゼロ)編 ~鋼鉄の理(ロジック)と、3000年の箱舟(アーク)~

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第44話(後編):魔法の解体新書(ソースコード)。……脳筋リーダーは、物理法則をハックする

【多種族国家テトラゴニア・郊外の貸家】

 政治、商業、軍事、魔力。

 四つの勢力が拮抗する混沌の都市『テトラゴニア』。

 この街では、ホテルで派手な訓練をすれば即座に憲兵が飛んでくるため、アビアたち『ユリシーズ・アトラス』の一行は、郊外にある「倉庫付きの貸家」を拠点として借りていた。

 夕刻。

 夕食の買い出しから戻ったティアとルーナが、重い荷物を抱えて玄関を開ける。

「ただいま戻りましたー……って、うわっ!?」

 ドゴォォン!!

 直後、裏手の倉庫から爆発音と怒号が聞こえてきた。

「くそっ、火力が足りねえ! 気合が足りないのか!?」

 倉庫の中で、アビアが汗だくになりながら大剣を振り回している。

 彼は焦っていた。

 ヴァルと別れてからの数週間、自分たちの実力不足を痛感し続けてきたからだ。

「……やれやれ。まだ『気合』や『根性』で魔法を使っているんですか、リーダー」

 そこへ、山のような羊皮紙を抱えたカイルが現れた。

 眼鏡の奥の瞳が、冷徹な光を放っている。

「ああん? なんだカイル、その大量の紙は。古新聞の回収か?」

「失敬な。これは出発時にセバスチャン様から渡された『暗号ヒント』……その解読結果ですよ」

 カイルは携帯用の木枠黒板を壁に掛けると、バァン! と手を叩きつけた。

 もう片方の手には、チョークが握られている。

「これより、『魔法術式コード最適化計画』を開始します。……いいですか、アビアさん。魔法とは『ファンタジー』ではなく『数式』なんです!」

 その剣幕に、ティアとルーナも「面白そう」と荷物を置いて席に着いた。

【倉庫・即席講義室】

 カイルは猛烈な勢いで黒板にチョークを走らせる。

 カッカッカッカッ!!

 白い粉が舞い、幾何学的な図形と文字が刻まれていく。

「魔法の正体は、以下の4つのコードの組み合わせで構成されています」


『起動コード(Arcanum Fātum)』+『IDコード(物理カテゴリ)』+『術式コード(現象)』+『Param(強度)』=『魔法』


「例えば、初級魔法の『ほのかな光ルメン・アウラ』。これを分解するとこうなります」


【Arcanum Fātum、Code:01、HEAT-α】

【起動、ID:01(イグニス)、術式 (ヒート)、強度 (アルファ) 】


「つまり、難しい詠唱やイメージなど不要。『熱(HEAT)』を『最小出力(α)』で励起させろ、という命令文を送っているだけなんです」

 アビアたちはポカーンと口を開けた。

「な、なんだその呪文みたいなのは……」

「呪文じゃなく、『ソースコード』です! 我々が学校で教わった長ったらしい詠唱などは、このコードをあやふやにイメージで包んで誤魔化した『劣化魔法』に過ぎません!」

「ソースコードねぇ。……ヴァルが言ってた『簡易術式』のことか?」

「そうです! イメージというフィルターを通さず、ソースコードを口頭で直接入力すれば、純度100%で魔法は発動できます。……ただし」

 カイルは真剣な顔になり、眼鏡を中指で押し上げた。

「100%の純粋コードは、魔力消費(燃費)が桁違いです」

 彼は黒板の端にグラフを描く。

「古代人は膨大な魔力を持っていましたが、混血が進んだ現代人は魔力保有量が少ない。そのため、あえて『不純物イメージ』を混ぜて威力を落とし、燃費を下げたものが現代魔法なんです」

 ティアが納得したように手を打つ。

「なるほど……。だからヴァル君の教えてくれたコードは、短くて強力だけど、すぐに疲れちゃってたのね」

 ルーナもハッとしたように自分の足を見ていた。先の戦いで、強度『Ωオメガ』を発動させ、反動で足が震え動かしにくくなったことを思い出したのだろう。

「その通りです。だからこそ、僕たちは魔鉱石グリットでコストを補う必要があるんです」

 カイルは手元の魔鉱石を空中に放り投げ、キャッチした。

「リスクはある。だが、構造を知れば制御ができる」

 彼は黒板にリストを追加していく。

 ID:01~ID:11までのカテゴリ。そしてその中に含まれる『44種の術式コード』。

「これを理解すれば、100%の威力でぶっ放すことも、あえて50%に抑えて連射することも自由自在です」

 カイルはさらに書き足す。

「そして強度。α(アルファ)からΩ(オメガ)まで。……さらにその上(Xエクストリーム)もあるようですが、セバスチャン様は『死ぬから教えん』と秘匿されました」

 一同はゴクリと喉を鳴らす。

 知れば知るほど、魔法というシステムが恐ろしく、精緻なものであると理解していく。

「理屈は分かった。……だがよぉ」

 アビアが腕を組み、眉をひそめる。

「本当にそんな呪文コードで、俺の『気合』以上の威力が出るのか?」

 脳筋リーダーは、やはり実物を見ないと納得しないようだ。

「ふっ……言うと思いましたよ」

 カイルは不敵に笑い、倉庫の壁際に積まれた石袋(訓練用の的)の前に立った。

 彼は右手をかざす。

 その指先には、小さな青魔鉱石が握られている。

強固な爆発エクスプローシオ・フォートをお見せしましょう。……中級魔法の発動です。見ていてください」

 カイルの口から紡がれたのは、無機質なシステムコマンド。

「……A.F. Code... 01:BLAST-M(アルカナム・ファトゥム、コードワン、ブラスト、メディア)!」

 ドォォォォォォン!!!

 短い詠唱と共に、赤い閃光が走った。

 石袋が消滅する。

 いや、それどころではない。

 倉庫の頑丈な石壁がごっそりと吹き飛び、とんでもなく大きな風穴が空いて、外の荒野の景色が見えた。

「……なっ!?」

 アビアが腰を抜かす。

 従来の魔法であれば、脳内で詠唱イメージを作ってから発動と時間が掛かる。

 しかも、石袋だけが吹き飛ぶはずだった。それが、あんな短時間で壁ごと消し飛ばす威力。

「……どうです。これで納得出来るでしょう?」

 カイルは右手の、魔力を吸い尽くされ透明になった魔鉱石を放り投げながら、ドヤ顔で振り返る。

 だが、アビアたちの顔は引きつっていた。

「……やべえな」

「カイル、あんた……」

 ティアが震える指で、壁の大穴を指差す。

「壁の修理費、誰が払うと思ってるのよォォォッ!!」

「あ」

 カイルの顔が凍りついた。

 威力の証明に夢中で、予算のことを完全に忘れていた。

 その時だ。

「アビアさんッ!! 大丈夫ですか!?」

 爆音を聞きつけた人影が、土煙を上げて半壊した倉庫へ飛び込んできた。

 黒いバックパックを背負い、焼色テンパーカラーの義手を構えた青年――ヴァルだ。

 その後ろから、ララ、マギー、そしてのんびりと歩くタルゴスが続く。

「ヴァル!!」

 アビアが破顔し、男泣きしそうな勢いで駆け寄る。

「お前ぇ! 待たせやがって! 無事だったか!」

「アビアさん! ……って、なんですかこの穴?」

 再会を喜び合う一同。

 ヴァルは、壁の風穴と、カイルが書いた黒板の数式を見て、状況を瞬時に理解した。

「……すごい。カイルさんの理論……完璧です」

 ヴァルが感嘆の声を上げる。

 セバスチャンから教わったヒントとヴァルの簡易術式を、カイルは独自に解読し、実用化していたのだ。

「それを僕の『眼』で補正すれば、さらに安定させられます」

 ヴァルが左目のレティナを展開する。

 視界に走る緑色のグリッドライン。

 彼はアビアに向き直り、ニヤリと笑った。

「アビアさん。剣を構えてください。……僕が『補助ガイド』します」

「おう! 任せろ!」

「目標は、あの外に生える大木にしましょう」

 アビアが大剣を構える。

 ヴァルの解析データが、アビアの動きとリンクする。

 二人の声が重なった。

「「A.F. Code... 11:FLASH-M(雷光の歩法ライトニング・ステップ)!!」」

 バチバチッ!

 アビアの全身から紫電が迸る。

 視界から遅れが消え、世界が止まって見える。

「体が、軽い……!」

「次、11:BLADE-Mです!」

 アビアが一歩踏み出すと、それは瞬きする間もなく十メートル先へと移動し、大木の目の前に現れた。

「A.F. Code... 11:BLADE-M(雷の剣サンダー・セイバー)!!」

 振り抜かれた一撃。まさに紫電一閃だった。

 紫電を纏った大剣が、抵抗を感じさせることなく大木を切り裂いた。

 遅れて響く雷鳴と共に、巨木がズレて倒れ落ちる。

 理論カイル解析ヴァル、そして直感アビアが噛み合った瞬間。

 『ユリシーズ・アトラス』は、ただの冒険者パーティから、物理法則を操る「戦術部隊タクティカル・ユニット」へと進化したのだ。

「……へえ。悪くないねぇ」

 その様子を見ていたマギーが、満足げに煙草の煙を吐き出した。

「(……あの木も、どうするんだろう)」

 歓喜する男たちの中で、ティアだけが青ざめた顔で壁と木を見比べていた。

 だが、役者は揃った。

 準備は整った。

 次なる舞台は、最難関の未踏ダンジョン『ラボ・ゼロ』。

 彼らの本当の冒険が、ここから始まる。

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!


ついにアビアたちと合流しました!

カイル君、ただ待っていたわけじゃありません。

魔法を「ソースコード」として解読し、理論化していました。


これにより、アビアさんの直感任せだった魔法が、

「物理法則を書き換えるシステムコマンド」へと進化。

(倉庫の壁と木は犠牲になりましたが……修理費は誰が出すんでしょうね?)


ヴァルの「解析」とカイルの「理論」。

そしてアビアの「膂力」。

最強のパーティ『ユリシーズ・アトラス』の完成です!


次回、いよいよ未踏ダンジョン『ラボ・ゼロ』へ突入します!

ここから物語のスケールがさらに広がります。お楽しみに!


(※ネトコン14参加中です! 「ソースコード設定燃える!」「合流おめでとう!」と思った方は、応援ブクマいただけると嬉しいです!)

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