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【第3章完結済】魔力ゼロの最底辺、ゴミ山で拾った「義眼」が規格外すぎた 〜魔法が絶対の世界ですが、俺には敵の動きと弱点が「線」で視えるので、当たらなければどうということはありません〜  作者: ちゃんつよ
虚無の研究所(ラボ・ゼロ)編 ~鋼鉄の理(ロジック)と、3000年の箱舟(アーク)~

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第41話:鉄壁の拒絶(アンカー)と、魔鏡の反射(リフレクション)。……貴方たちの魔法、僕が代わりに当ててあげます

【国境付近・断層ダンジョン入口】

「下がっててください」

 砂煙が舞う戦場の中心で、ヴァルは背を向けたまま言い放った。

 それは、この国のエリートである魔導騎士団に対する、明確な拒絶だった。

「……なっ、ふざけるな!」

 金色の鎧を纏った騎士団長が、顔を真っ赤にして激昂する。

 彼は怒りに任せて、ヴァルの肩を乱暴に掴んだ。

「貴様、何者だ! マギレス風情が、我々に指図をする気か!」

「……っ!」

 その一瞬の遅れが、命取りになりかけた。

「うるさいです。……前を見てください」

 ヴァルが騎士団長の手を冷たく振り払った、その時だった。

 ズゥゥン……。

 片腕を吹き飛ばされた『レムナント・ゴーレム』が、残った右腕を高く振り上げていたのだ。

 その腕は丸太のように太く、全身が対魔力金属ミスリルコーティングで覆われている。

 質量にして数トン。

 その標的は――魔力切れで座り込んでいた、一人の若い女騎士だった。

「あ……」

 彼女は震える手で折れた杖を握りしめ、頭上を見上げた。

 逃げられない。足が動かない。

 迫りくる死の影に、彼女はギュッと目を閉じた。

「ひっ……!」

 他の騎士たちが悲鳴を上げ、我先に逃げ惑う。

 だが、ヴァルは動かない。

 逃げない。

『衝撃予測。……負荷率80%』

「……分かってる。アンカー展開」

 ヴァルは足幅を広げ、女騎士を背に庇うように腰を落とした。

 ドゴォォォォォォォォン!!!

 轟音と共に、ゴーレムの拳がヴァルの頭上へ垂直に振り下ろされた。

 大地が揺れ、爆発したような土煙が視界を奪う。

「いやぁぁぁぁぁ……ッ!!」

 女騎士の絶叫が、土煙の中に消えた。

 潰された。

 あんな無防備な体勢で、数トンの質量を受け止められるはずがない。

 自分ごと、塵一つ残らずミンチになったはずだ。

 だが。

「……軽いな」

 煙の中から聞こえたのは、拍子抜けするほど平坦な声だった。

 風が吹き、砂煙が晴れていく。

 女騎士がおそるおそる目を開けると――そこには、信じられない光景があった。

「え……?」

 ヴァルは、生きていた。

 無傷で立っていた。

 彼の頭上には、背中の『戦術工廠パンドラ』から展開された上部二本のサブアームが掲げられ、ゴーレムの巨大な拳をガッチリと受け止めていたのだ。

 プシュゥゥゥッ!!

 受け止めたアームの排熱スリットが開き、真っ白な蒸気が勢いよく噴き出した。

 衝撃を熱エネルギーに変換し、外部へ放出する強制排熱機構。

 内部の油圧シリンダーがミシミシと軋みを上げるが、その黒い鉄の腕はピクリとも沈まない。

 それだけではない。

 ヴァルの背中から伸びた、残り二本の下部アーム。

 それらは鋭利な杭となり、ヴァルの足元の地面深くに突き刺さっていた。

 アンカー

 頭上で受け止めた数トンの衝撃エネルギーを、背骨のフレームを通して下部アームへと伝達し、すべて大地へと逃がしたのだ。

 その証拠に、ヴァルと女騎士を守るようにして、半径数メートルの地面が蜘蛛の巣状にひび割れ、陥没している。

「じ、地面が……割れた……?」

「あいつ、あの攻撃を身体一つで受け流したのか!?」

 遠巻きに見ていた騎士たちが戦慄する。

 防御魔法イージスですら防げない物理攻撃を、ただの機械の腕で完封したという事実。

 それは彼らの常識を根底から覆すものだった。

「……ふぅ。防ぐだけじゃない」

 ヴァルは涼しい顔で、左手に握っていた無骨な直剣――『ヒート・エッジ』の柄ではなく、赤熱した刀身そのものを持ち直した。

 ジュッ……!

 皮の手袋が焦げる音がするが、ヴァルの表情に痛みはない。

 彼の左腕は今や、高温にも耐えうる流体金属製の義手なのだ。

 パンドラとの接続により、刀身はすでに凶悪なオレンジ色に輝き、陽炎を立ち上らせている。

 彼はゴーレムの拳を受け止めたまま、その剣を背後へ差し出した。

 ノールックでのバトンパス。

「ララさん。……使ってください」

「了解ッ!」

 呼応する声と共に、金色の疾風が戦場を駆け始めた。

 ララだ。

 彼女は赤熱した剣を、残像と共に受け取る。

 そして、ヴァルが教えた「命令式コード」を展開した。

「……『A.F.Code...JUMP...道の加速ヴィア・アクセラ』!!」

 バァンッ!

 空気が破裂する音。

 ララの姿が消えた。

 いや、速すぎて常人の目には「光の線」にしか見えない。

 金色の髪が風になびき、赤熱した刀身が空中にオレンジ色の光跡トレースを描く。

 美しい、光の演舞。

 ヒュンッ!

 交錯した瞬間。

 ゴーレムの太い膝関節と肘関節が、音もなくスライドした。

 熱伝導コイルによる超高温の斬撃。

 対魔力金属であろうと、物理的な熱量で溶断されれば形を保てない。

 切り口は瞬時に焼き塞がれ、再生すら許さない斬撃。

「グガァァァッ!?」

 支えを失った巨体が、バランスを崩して崩れ落ちる。

 ズシィィィン!!

 その目の前に、ヴァルが歩み寄った。

 ゴーレムの拳を離した上部サブアームを収納しながら、ヴァルは右脇から『スラグ・リボルバー』を抜く。

 銃口は、ゴーレムの眉間――その奥にあるコアへ、ゼロ距離で突きつけられた。

「硬いだけが取り柄か。……なら、砕くだけだ」

 躊躇いはない。

 ヴァルは撃鉄を起こしトリガーを引いた。

 ズドォォォォォン!!

 近距離での発砲音が、周囲の騎士たちの鼓膜を揺らす。

 50口径の徹甲弾が眉間の装甲を貫通し、内部の魔力核コアを粉砕した。

 ゴーレムの赤い眼光が明滅し、やがてフッと消える。

 完全なる沈黙。

 騎士団が数十人でかかり、傷一つつけられなかった怪物を、たった二人で。

 それも、一分とかからずに屠ったのだ。

 だが、戦いはまだ終わっていなかった。

「グギャァァァァッ!!」

「シャアアアアッ!!」

 ボスの消滅に呼応するかのように、周囲の森や地割れから、無数の雑魚魔物が溢れ出してきたのだ。

 統率を失った暴走状態の群れが、雪崩のように押し寄せる。

「く、来るぞ! 迎撃しろ!」

「撃て! 近寄らせるな!」

 騎士団長が裏返った声で叫ぶ。

 パニックに陥った騎士たちが、闇雲に魔法を放ち始めた。

 炎、氷、雷。

 それらは威力こそ高いが、狙いはバラバラで、このままでは魔力が尽きるのも時間の問題だ。

「……はぁ。最後まで世話が焼けるな」

 ヴァルは小さくため息をついた。

 左目の情報解析アナライズには、彼らの魔法の軌道と、魔物の侵攻ルートが表示されている。

 その効率は最悪だ。有効打率は30%以下。これでは無駄打ちで自滅するだけだ。

「レティナ。……射線計算」

『了解。反射角リフレクション、調整』

 ヴァルはサブアームを操作し、足元に転がっていた「物体」を持ち上げた。

 それは、先ほど倒したレムナント・ゴーレムの、巨大な胸部装甲板だ。

 磨き上げられたミスリル銀の表面は、あらゆる魔法を弾く「鏡」の性質を持っている。

 ヴァルはその鏡を盾のように構え、あろうことか騎士団が放った魔法の射線上に割り込んだ。

「なっ、何をする気だ!?」

 騎士の一人が叫ぶ。

 だが、ヴァルは構わず、戦場に響き渡る大声で叫んだ。

「死にたくなければ、自分が撃てる最大級の魔法を、僕に向けて撃ってください!」

「な……!?」

 正気か、という視線が集まる。

 だが、ヴァルの瞳に迷いはない。その絶対的な自信と、有無を言わせぬ圧力。

 パニック状態の騎士たちは、思考するよりも先に、半ば反射的に杖を向けた。

 放たれる最大火力の炎弾、雷撃。

 直撃すれば塵も残らないエネルギーの塊。

 カッッ!!

 魔法が装甲に直撃する。

 だが、弾かれない。

 ヴァルはサブアームの微細な角度調整により、装甲の曲面を利用して、魔法のベクトルを制御したのだ。

『反射角、固定。……拡散照射プリズム・レイです』

 一塊だった炎と雷が、装甲の表面で細かく分割され、無数のレーザーのように拡散した。

 その切っ先が向かうのは――押し寄せる魔物の群れ。

「ギャアアアッ!?」

「グギッ……!?」

 降り注ぐ魔法の雨。

 騎士団の高威力な魔法が、ヴァルという「レンズ」を通すことで、広範囲殲滅兵器へと変換された瞬間だった。

 周りにいた魔物の群れが、一瞬にして蜂の巣にされ、炭化して崩れ落ちる。

 静寂。

 今度こそ、戦場から動くものの気配が消えた。

「……清掃完了、ですかね」

 ヴァルは黒焦げになった装甲板を、その場で放り投げる。

 ガシャン、と乾いた音が響く。

 彼は呆然と立ち尽くす騎士団、そして顔面蒼白の騎士団長の方へゆっくりと振り返り、肩をすくめた。

「いい火力でしたよ。……使い方を知らないだけです」

 それは、魔力を持たざる者からの、痛烈な皮肉であり、勝利宣言だった。

 その背中を、命を救われた女騎士だけが、熱っぽい瞳で見つめていた。

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!


「地面しか割れませんでした」。

数トンのパンチを涼しい顔で受け流すヴァル、最高に硬いです。

(パンドラの排熱スチーム、ロマンですよね!)


そして後半の「魔法反射」。

無能な味方の火力を利用して、敵を一掃する。

これぞマギレス流の戦い方です。

騎士団長たちのプライドはズタズタですが、まあ自業自得ということで(笑)。


次回、騎士団との決別、そしてアビアたちとの合流です!

いよいよ「ラボ・ゼロ」攻略編が本格始動します!


(※ネトコン14参加中です! 「反射攻撃かっこいい!」「エリートざまぁ!」と思った方は、応援ブクマいただけると嬉しいです!)

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