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魔力ゼロの最底辺、ゴミ山で拾った「義眼」が規格外すぎた 〜魔法が絶対の世界ですが、俺には敵の動きと弱点が「線」で視えるので、当たらなければどうということはありません〜  作者: ちゃんつよ
聖都潜入編 ~物理と演算で、聖都の夜を攻略せよ~

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第31話:老練の演舞(ダンス)と、音速の天誅。……格の違いってやつを教えてやるよ

【回想:数時間前】

 夕暮れの隠れ家。

 作戦会議の場で、ヴァルがチーム分けを発表した時、アビアは少し意外そうな顔をした。

「αチームの担当は、急進派筆頭のセタリア議員。……メンバーはアビアさんと、ルーナさんです」

「俺とルーナか。……戦力的には十分だが、なぜこの組み合わせなんだ?」

 アビアが問う。

 セタリア邸には、あの因縁のBランクパーティ『鉄の戦斧』が用心棒として雇われている。

 アビアは、ヴァルが私情や心配から自分たちを配置したのではないかと案じたのだ。

「心配だからではありません」

 ヴァルはきっぱりと否定した。

「相手は元冒険者。それも、手段を選ばない手合いです。騎士団のような規律ある相手とは違い、彼らは生き汚く、どんな卑怯な手でも使ってくるはずです」

 ヴァルの瞳が、信頼の色を帯びてアビアを見据える。

「だからこそ、アビアさんの『経験』と、ルーナさんの『野生の勘』。……何より、想定外の事態に対応できる『柔軟性』が必要なんです」

 ノアズ・アークでも一目置かれるBランク。それは幾多の修羅場を潜り抜けてきた、決して侮れない相手だ。

 彼らを抑えられるのは、百戦錬磨のこの二人しかいない。

 信頼を受けたアビアとルーナは、顔を見合わせ、力強く頷いた。

「任せな。……格の違いってやつを教えてやるさ」

【現在:セタリア邸・正門前】

 夜の闇に紛れ、二つの影が疾走する。

 セタリア議員の屋敷は、成金趣味の派手な外壁に囲まれていた。

 正門には、フルプレートの大盾持ち(タンク)。正面扉には、巨大な戦斧を担いだリーダー格の男が立っている。

〈……全チーム、配置につきましたね。作戦開始オペレーション・スタート

 イヤホンからヴァルの声が響く。

 その瞬間、アビアとルーナの姿がブレた。

「行くぞ!」

「うん!」

 「「A.F.Code:11……雷光の歩法ライトニング・ステップ」」

 脚部の筋電流を爆発させ、瞬時にトップスピードへ加速する突進。

 加速された二人は残像を残し、瞬きする間に距離を詰める。

 門番のタンクが反応し、盾を構えようとする――が、遅い。

「寝てな」

 ガァン!!

 アビアがすれ違いざま、剣の柄でタンクの首筋を強打した。

 金属音が響き、巨漢が白目を剥いて崩れ落ちる。

「魔法使いがいない。……中か? ルーナ、潜入しろ!」

「任せて!」

〈――αチーム、前方敵! ルーナさん、建物内の敵殲滅! アビアさんは正面のリーダーを引き付けて!〉

 アビアが正門で足を止め、仁王立ちして敵のリーダーと対峙する。

 その背後を、ルーナが疾風のようにすり抜け、屋敷の中へと消えていった。

「へっ……」

 残されたリーダーの男――『鉄の戦斧』の斧使いが、ニヤリと笑う。

 彼はルーナを追おうともしない。

「マギレスの野郎がいねえな……! 俺ぁ、あいつと戦いたかったんだがなぁ!」

「残念だったな。お前の相手は俺だ」

 アビアが大剣を構える。

 斧使いは首をコキコキと鳴らした。

「ま、いいさ。Aランクだろうが何だろうが……今の俺の敵じゃねえ!」

「……」

 アビアは斧使いから目を離すことはせず、様子を見る。この自信、普通じゃない。

「A.F.Code:03……風の道アーラ・ヴィア!」

 簡易術式による身体の強化魔法アウグメンタだ。斧使いの周囲の気流が変わり、加速して突っ込んでくる。

(こいつ……なんで、術式(コード)を知っているんだ)

「オラァァァァァッ!!」

 男が戦斧を振り回す。

 アビアは後ろに飛び、斧をすんでの所で避ける。風圧が頬を撫でるが、着地と同時に踏み込み、カウンターの体勢に入る。

「A.F.Code:11……雷の剣サンダー・セイバー

 アビアは冷静に一閃繰り出すが、それは男の目前で弾かれた。

〈アビアさん、強力な防御魔法イージスあり! 時間を稼いでください! ……γチーム、カルドゥスの動きが変です、距離を取って!〉

「無駄だ! 『拒絶の壁リジェクション・ウォール』! あの御方から授かった絶対防御だ!」

 ヴァルの言う通りに距離を取るアビア。斧使いはポケットから魔鉱石を取りだし、魔力を補充して突っ込んでくる。

「……厄介だな」

 見えない壁。こちらの攻撃は弾かれ、あちらの攻撃だけが通る。

 男は斧を乱雑に振り回し、さらに少し距離を取ると炎魔法イグニスを乱射してくる。

 理不尽な暴力の嵐。

 だが、アビアは動じない。

 懐から投げナイフを取り出し、軽く投擲した。

 カィン!

 ナイフは男に触れる前に弾かれる。

 続けて、足元の石を蹴り飛ばす。

 パシュッ!

 それも弾かれる。

(……なるほど。物理、魔法問わず、害意のある接近物を自動で弾くのか)

 一見、無敵に見える。

 だが、アビアの古傷だらけの経験則が、即座に弱点を見抜いた。

(こいつ……魔鉱石で魔力を補充しすぎだな)

 自動オート。これが問題なのだ。

 石ころ一つ弾くのにも、同じだけの魔力を消費している。

 発動し続けていれば、魔力は湯水のように消えていく。

「オラオラどうしたAランクゥ! 逃げ回ってばかりかよォ!」

「……お前の動きは、大きいな」

 アビアは剣を下げ、脱力した。

 男が大ぶりの一撃を放つ。

 アビアはそれを紙一重で、本当に鼻先数センチの距離で躱した。

「なっ……!?」

「当たらない攻撃をどうするか、知ってるか?」

 アビアは自分に言い聞かせるように、そして相手を嘲笑うように呟いた。

 ひらり、ひらりと。

 アビアは蝶のように舞う。

 男の斧が空を切るたび、その勢いを利用して背後に回り込み、わざと殺気を放って攻撃を行い「壁」を無駄撃ちさせる。

 それは、力任せの暴力とは対極にある、老練なる「技」の演舞。

「クソッ! チョロチョロと……!」

「焦れば焦るほど、魔力は枯渇するぞ。……ほら、血管が切れそうだ」

 アビアの指摘通り、男の肌の血色はみるみる悪くなり、浮き出た黒い血管は今にも破裂しそうに脈打っていた。

 勝負は見えている。あとは、自滅を待つだけだ。

 一方、屋敷の最上階。

 ルーナは、怒りで視界が真っ赤に染まるのを感じていた。

「ひ、ひぃぃ……!?」

「静かにして」

 廊下の警備兵を一撃で気絶させ、豪華な扉を蹴破る。

 そこは、セタリア議員の寝室だった。

 甘ったるい香水の匂いと、鉄錆のような血の匂いが混ざり合っている。

「誰だ! この俺の楽しみを邪魔する奴は!」

 天蓋付きのベッドの上で、小太りのエルフ――セタリア議員が叫んだ。

 その周囲には、十数名のメイドたちがいた。

 だが、彼女たちはただ立っているのではない。

 手のひらに穴を開けられ、鎖を通され、天井から吊るされていた。

 まるで「肉の帳カーテン」。

 つま先がギリギリ付くように調整され、力なく揺れている。

 セタリアを守るためだけの、生きた盾として。

「……ッ!」

 ルーナの喉奥から、獣の唸り声が漏れた。

 この国は、膿んでいる。

 綺麗事で飾られた繁栄の裏で、弱者がモノのように扱われている。

「冒険者風情が! この国をここまで発展させたのは俺だぞ!」

 セタリアは怒号を上げ、威嚇する。

(許さない……絶対に!)

 衰弱したメイドたちは虚ろな目で涙を流している。

 人質を傷つけずに制圧するには、一撃必殺しかない。

 ヴァルから教わった「最適化」の先にある、究極オメガの領域。

 だが、それは諸刃の剣だ。

 究極オメガに数えられる魔法の一つ。簡易術式で無理やり引き出された力は、使用者の筋肉と骨を軋ませ、破壊しかねない。

 それでも。

 彼女たちの涙を止めるためなら、足の一本や二本、くれてやる。

「スゥ……ハァ……A.F.Code:11……音速の閃光ソニック・フラッシュ

 ルーナが深く腰を落とす。

 体内の魔力を循環させ、脚部のバネに限界まで圧縮していく。

 ミシミシと、自分の骨が悲鳴を上げる音が聞こえる。

 キィィィィィン……。

 空気が振動し、やがて――世界から音が消えた。

 ドンッ!!

 衝撃波が壁紙を引き裂き、床板をめくり上げる。

 セタリアが瞬きをした、その一瞬の間。

 ルーナの姿は消失し――次の瞬間には、セタリアの背後に出現していた。

「なっ……!?」

「キモエルフ! 天誅!!!」

 ルーナの右足が、音速を超えて跳ね上げられた。

 狙うは一点。

 この下衆な男の、急所中の急所。

 ドゴォォォォォォンッ!!

 重く、鈍く、そして何かが二つ砕ける音が響いた。

 セタリア議員の目玉が限界まで見開かれ、飛び出る。

 声にならない絶叫と共に、彼の身体は垂直に打ち上げられた。

 ズボッ!!

 勢い余って、天井に頭から突き刺さる。

 ブラブラと揺れる足。白目を剥いて泡を吹く顔。

 完全なる沈黙。

「ふん! 女の敵め!!」

 ルーナは荒い息を吐きながら、吊るされたメイドたちの鎖を断ち切った。

 足の震えを隠すように、彼女は気丈に笑ってみせた。

 同時刻、屋外。

 アビアもまた、敵の限界を見極めていた。

 斧使いの男は、過剰な魔力摂取により全身が土気色になり、膝をついている。

「ハァ……ハァ……なんでだ……なんで当たらねえ……!」

「終わりだ。お前の身体はもう限界だ」

 アビアが剣を振り上げ、トドメを刺そうとした。

 勝利を確信した瞬間だった。

「……見つけたぞ、ドブネズミめ! 時計台だ!!」

「あとは任せろ……!」

 屋上から、冷徹な声が響いた。

 姿を消していた二名の魔導師だ。

 彼らは、眼下の戦闘など見ていなかった。最初から、味方である斧使いすら囮にして、もっと重要な「標的」を探していたのだ。

 彼らの杖が向いている先は、ここではない。

 遥か遠く、街の中心。

「しまっ……!?」

 アビアが叫ぶよりも早く、屋上の杖から極太の閃光が放たれた。

 対物破壊魔法『強固な打撃ペルクッシオ・フォート』。

 強力な空気の塊を弾丸のように放ち、物理的な破壊力を与える中級魔法。

 ドォォォォォォン!!

 空気の弾丸が夜空を切り裂き、一直線に飛んでいく。

 ――その時、時計塔の上で。

 ヴァルは左眼の警告表示アラートに気づいていた。

『警告:高エネルギー反応を感知。距離2.5キロメートル』

「……ッ!?」

 熱源感知サーモグラフィーが、遠くの屋上から放たれる殺意を捉える。

 だが、遅い。

 指揮に集中するあまり、自身の安全確保が一瞬遅れた。

 回避行動を取る時間はない。

 迫りくる魔法が、視界を赤く染め上げる。

〈……ッ!?〉

 アビアのイヤホンから、ノイズと衝撃音が響いた。

 次の瞬間。

 遠景の時計塔が、爆発によって吹き飛んだ。

 ザザッ……、ザー…。

「ヴァルーーッ!!」

 アビアの絶叫が、夜空に虚しく響き渡った。

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!


αチームも制圧完了……と思いきや。

敵は味方ごと囮にして、司令塔を狙撃してきました。

アビアやルーナの強さは流石でしたが、この展開は想定外です。


これで全チームの視点で「爆発」が確認されました。

ヴァルからの通信は途絶え、各個撃破されかねない絶体絶命のピンチ。


次回、煙の中から現れるのは……?

ヴァルの生死と、ここからの逆転劇にご期待ください!


(※ネトコン14参加中です! 「ルーナの蹴り最高!」「ヴァル無事でいてくれ!」と思った方は、ポチッと応援ブクマいただけると嬉しいです!)

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