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魔力ゼロの最底辺、ゴミ山で拾った「義眼」が規格外すぎた 〜魔法が絶対の世界ですが、俺には敵の動きと弱点が「線」で視えるので、当たらなければどうということはありません〜  作者: ちゃんつよ
底辺からの反逆者 ~魔力なき『砂利運び』が得た機械の瞳~

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第10話:杭打ち盾(パイル・シールド)と、ランク降格。「マギレスを入れたせいで落ちたw」と笑われたが、俺たちの連携は『最強』です

 商業ギルド、地下試射場。

 コンクリートで覆われた冷たい空間に、破壊の音が轟いた。

 ドォォォォォン!!

 それは銃声というよりは、爆発音に近かった。

 右腕に装着された『試作型・パイルバンカー』の排気口から、猛烈な白煙と火花が噴き出す。

 撃ち出された鋼鉄の杭は、実験用のミスリル合金板を紙切れのように貫通し、さらに背後のコンクリート壁を粉々に粉砕した。

 凄まじい威力だ。

 だが――。

「ぐっ、あ……!?」

 ヴァルの身体は、杭の射出と同時に発生した強烈な反動によって、後方へと弾き飛ばされた。

 受け身を取る余裕もない。

 背中から壁に激突し、無様に床へと転がり落ちる。右肩に、焼けるような激痛が走った。

『警告:右肩関節および上腕骨への負荷、許容限界90%。軟骨組織に微細な損傷を確認。……連続使用不可』

 レティナの無感情な警告音が脳内に響く。

 煙が晴れる中、タルゴスが腹を抱えて笑い出した。

「がはは! こいつは傑作だ! 威力は最高だが、お前の身体がもたねえな! 今の一発でお前の肩はボロボロだぞ!」

「笑い事じゃ……ないですよ……ッ」

 ヴァルは脂汗を流しながら、痺れて感覚のない右腕を左手で支えた。

 確かに威力は化け物級だ。だが、これでは使い物にならない。

 一発撃てば自分が戦闘不能になる武器など、ただの自殺装置だ。

「これじゃ……外したら死にますね……」

 ヴァルが呻くと、タルゴスはニヤリと笑って鉄屑と化したターゲットを指差した。

「威力だけならAランク魔法並みだ。だが、反動を殺す強化魔法(アウグメンタ)もねえ生身じゃ、これが限界だな。……諦めるか?」

「…………」

 ヴァルは痛む肩をさすりながら、思考を加速させる。

 諦める? いや、この「牙」はどうしても必要だ。自分には魔力がない。この物理的な破壊力だけが、唯一の武器なのだ。

(レティナ。……解決策はあるか?)

『提案:射出機構の小型化による火薬量の削減。および、運動エネルギーを面で受け止める「反動吸収機構ショック・アブソーバー」付きの固定具への換装を推奨』

(固定具……か)

 ヴァルの脳裏に閃きが走る。

 面で受け止める。敵の攻撃を防ぎつつ、カウンターを叩き込む。

 彼は顔を上げ、作業台に向かうタルゴスに声をかけた。

「……タルゴスさん。これを小型化して、左腕の『盾』に内蔵できませんか?」

『肯定:いい判断です』

「ああん?」

 タルゴスが足を止めた。

「パイルバンカーを盾の裏側に仕込むんです。盾の重量と面積で反動を殺せば、俺の腕でも耐えられるはずです。……それに、『盾』になっていれば攻撃も防げます」

 対人戦ならともかく、魔物相手なら盾としての機能も十分に果たせるはずだ。

「……ほう。パイルバンカーは奥の手にするってことか」

 タルゴスの目がギラリと光った。

 彼は作業台に戻ると、羊皮紙を広げて猛烈な勢いで図面を引き始めた。

「盾で反動を殺すか……面白いな! 右腕一本で支えるより遥かに理に適ってやがる! がははは! 若造に一杯食わされた気分だな!」

 数時間後。

 地下工房の熱気の中で、新たな相棒が産声を上げた。

「完成だ。持ってけ泥棒!」

 タルゴスが作業台にドンと置いたのは、一見すると無骨なだけの鉄の小盾(バックラー)だった。

 だが、その厚みは通常の倍はある。

 ヴァルが左腕を通すと、ずっしりとした重量感が骨に伝わってくる。

 盾の裏側には、小型化されたパイルバンカーの射出機構と、何層にも重ねられた衝撃吸収用のバネが密に詰め込まれていた。

「名付けて『杭打ち盾(パイル・シールド)』だ」

 タルゴスが解説する。

「火薬を減らした分、威力は落ちたが……それでも鎧ごと串刺しにはできる。普段は盾で受け流し、ここぞという時だけ引き金を引け」

「……十分です。これなら、今の俺でも戦えます」

 ヴァルは左腕を軽く振ってみる。重いが、振り回せないほどではない。

 そしてタルゴスは、もう一つの武器を放り投げた。

「そいつはオマケだ」

 ヴァルが右手で受け取ったのは、刀身が漆黒に塗られた片手剣だった。

 装飾は一切ない。ただ実用性だけを追求した形状をしている。

「『複合素材の片手剣』だ。魔力伝導率はゼロ。魔法剣としてはゴミ屑だが、その代わり象が踏んでも折れねえ強度と、骨まで断つ切れ味を持たせてある」

 右手に、折れない剣。

 左手に、必殺の牙を隠した盾。

 魔力なし(マギレス)のヴァルに最適化された、「物理特化」の装備一式だ。

 この重みこそが、これからの自分の命綱になる。

「……ありがとうございます。代金は――」

「いらねえよ」

 ヴァルが財布を取り出そうとすると、タルゴスは手を振って遮った。

「出世払いでいい。その代わり、澄ました顔の魔法使いたちに一泡吹かせてやれ。……お前がひっくり返す世界を、俺にも見せてくれや」

「……約束します」

 ヴァルは深く頭を下げ、新たな武器と共に工房を後にした。



 夕方、冒険者ギルド本部へ。

 広大なロビーは、依頼報告をする冒険者たちでごった返していた。

 その一角で、アビアたちが待っていた。

「遅かったな、ヴァル。装備は整ったか?」

「ええ、おかげさまで」

 ヴァルは左腕の盾を見せた。アビアは「ほう」と感心したように頷く。

 そのまま五人は、受付カウンターへと向かった。

 目的は、パーティメンバーの更新手続きだ。

「えっ……?」

 受付嬢が書類を受け取り、絶句した。

 彼女は信じられないものを見る目で、アビアとヴァルを交互に見比べる。

「あ、あの……アビアさん。本気ですか? Aランクパーティの『ユリシーズ・アトラス』に、ヴァルさんを正式加入させるというのは……」

「書類の通りだ。何か不備があるか?」

「い、いえ、不備ではありませんが……」

 受付嬢は困惑しながら、カウンターの魔導端末を操作した。

 ギルドのシステム上、パーティランクはメンバー個人のランクの平均値で再計算される。

 これまではAランク4人だったため、当然パーティもAランク。

 だが、そこに最低ランクであるDランクのヴァルが入ることで、計算式が変わる。

「……規定により、パーティランクは『B』への降格となりますが、よろしいですか?」

 その言葉は、ざわめくロビーの中でもよく通った。

 周囲の冒険者たちが、一斉にこちらを振り返る。

 好奇と、嘲笑の混じった視線。

「おい聞いたか? ユリシーズの奴ら、ランク落ちだってよ」

荷物持ち(マギレス)を入れてBランク転落とか笑えるぜ」

「アビアも焼きが回ったな。あんなのを入れてどうすんだ?」

 ヒソヒソという陰口が、ヴァルの耳に痛いほど刺さる。

 Bランクに落ちれば、受けられる依頼の質も報酬も下がる。

 自分のせいで、彼らのキャリアに泥を塗ってしまった。

 ヴァルは唇を噛み、俯きかけた。

「気にするな。言わせておけ」

 だが、アビアの声は堂々としていた。

 彼は嘲笑する周囲を一瞥もしないまま、受付嬢に告げた。

「構わない、そのまま登録してくれ」

「畏まりました」

 手続きが完了し、アビアはバツの悪そうな顔をしていたヴァルに向かって笑顔で呟く。

「Bランクになれば、無駄な注目をされずに動きやすくなる。……それに」

 アビアは大きな手で、ヴァルの背中をバンと叩いた。

「お前はすぐに俺たちに追いつくさ。Aランクなんざ、時間の問題だ」

「リーダー……」

「行くぞ。手続きは完了だ」

 アビアは笑って歩き出す。

 カイル、ティア、ルーナも、誰一人としてランクダウンを気にしている様子はない。

 彼らの笑顔を受け止めながら、ヴァルは拳を握りしめた。

 この信頼に応えなければならない。

 馬鹿にした奴らには『結果』で、黙らせるしかないのだ。



 新生『ユリシーズ・アトラス』の初陣。

 場所は市街地に近いCランクダンジョン『腐水の地下空洞(ロット・ホロウ)』。

 連携(フォーメーション)の確認にはうってつけの場所だが、足場が悪く、腐った水の臭いが立ち込める劣悪な環境だ。

 薄暗い洞窟の奥から、キィキィという不快な鳴き声が響いてくる。

「配置につけ! ヴァル、指示を頼む!」

「はいっ!」

 アビアが最前線へ走り出る。

 ティアは最後列へ。

 そしてヴァルは、パーティの中心である中衛の位置についた。

 彼は深呼吸をし、左眼の眼帯に手をかける。

『戦闘モード起動。陣形から最適な行動を選択します』

 眼帯をずらすと、隠されていた義眼が暗闇の中で蒼く明滅した。

 世界が変わる。

 ただの暗闇が、青いグリッドラインで構築された情報の海へと変貌する。

『スキャン開始。敵性反応6体。ジャイアント・バット……右翼死角より接近中。距離30メートル』

 見えた。

 天井の鍾乳石の陰に隠れている蝙蝠たちの熱源反応が、はっきりと捉えられている。

 まだ誰も気づいていない敵の動き。

 ヴァルは声を張り上げた。

「右、上空から6体来ます! カイルさん、牽制を! その3秒後にアビアさん突入!」

 指示と同時に、カイルが杖を構え、呪文を詠唱する。

「『水滴の振動(プルッスス・ドロップ)』!」

 まだ敵が見えていないはずなのに、彼は迷わずに打ち込んだ。

 ドパンッ!

 杖先から放たれた高圧の水弾が、闇の中に潜んでいた蝙蝠の一匹を撃ち落とす。

「ギャッ!?」

「本当にいましたね! 正確無比な『眼』だ!」

「アビアさん、今です! 11時の方向へ切り込んでください!」

 敵が混乱した瞬間を、ヴァルは見逃さない。

 アビアが疾風のように駆け抜け、背負っていた大剣を軽々と振るう。

 ズバッ!

 重量級の一撃が、二匹、三匹とまとめて切り裂いていく。

 かつてない速度。

 淀みない連携。

 左腕の盾の重みを感じながら、ヴァルは確信した。

 自分はもう「お荷物」ではない。

 この眼と、この牙で、彼らを導く「歯車」になれる。

「次、左から3体来ます! ルーナさん、迎撃用意!」

 ヴァルの指示が、暗い地下空洞に力強く響き渡った。



ランクは落ちましたが、チームの絆は最強です。

そして左腕には、タルゴス特製の「パイル・シールド」が……!

(いつ火を噴くのか、お楽しみに!)


次回、ダンジョン攻略本番。

ヴァルの指揮で、格上の魔物すら圧倒します!


「パイルシールドかっこいい!」「見返してやれ!」と思ったら、

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