我慢の果てに〜職場失禁編〜
2月に29歳となった彼女にとって、おしっこを我慢することは単なる生理的行為への抵抗ではなく、秘めた愉悦だった。
膀胱が膨張し、下腹部にずっしりとした重圧が広がるたび、全身が微かに震え、心の奥に疼きが生まれる。
限界に挑むその感覚は、日常の単調さを切り裂く刺激であり、綾香だけの密かな儀式だった。
オフィスでもそれは変わらない。デスクに座り、パソコンの画面を見つめる瞳が時折揺れ、スカートの下で太ももをぎゅっと締める。誰にも気づかれないよう表情は冷静を装うが、内側では尿意との戦いに心を奪われていた。
その日、綾香は営業先を訪れていた。普段なら水分を最小限に抑え、我慢のゲームを完璧に掌握している彼女だったが、クライアントの熱心な勧めに抗えず、ついコーヒーを受け取ってしまった。普段口にしないその飲み物は、綾香にとって危険な賭けだった。
カップを手に持つ彼女の指先がわずかに震え、黒い液体が揺れるのを見ながら内心で呟く。
「これはまずいかもしれない」
利尿作用が強いことは分かっていた。それでも、営業スマイルを崩さず、クライアントとの会話を続ける。コーヒーが喉を通るたび、温かさが胃に落ち、膀胱に新たな重圧を予告するようだった。
打ち合わせが進むにつれ、尿意は静かに、だが執拗に彼女を追い詰めていった。最初はかすかな違和感だったものが、次第に下腹部を締め付ける硬い塊へと変わる。椅子の上で姿勢を正し、太ももを擦り合わせるように力を込めるが、膀胱が膨らむたび、内腿に冷や汗が滲む。クライアントの話に頷きながら、頭の中では限界までの時間を計っていた。尿道のあたりで小さな痙攣が走り、背筋を伸ばして圧を逃がそうとする。だがそのたび、身体が訴える。「もう無理だ」と。
綾香は唇を噛み、我慢の果てに訪れる解放を想像して心を奮い立たせる。彼女にとって、この戦いは苦痛ではなく、むしろ自分を試す甘美な挑戦だった。
オフィスに戻った時、綾香の我慢は限界の淵に立っていた。鞄をデスクに投げるように置き、トイレへと向かおうとする。ストッキングに包まれた脚が震え、スカートの裾が揺れる。
だがその瞬間、上司の声が背中に突き刺さった。
「ちょっと待て。今日の報告を今まとめてくれ」
振り返った彼女の顔は一瞬凍りつき、唇が小さく震えた。
「はい、了解しました」
と答えた声は平静を装っていたが、内心では絶望と羞恥の予感が渦巻いていた。膀胱が悲鳴を上げ、一歩踏み出すたびに漏れそうな感覚が襲う。それでも綾香は、上司のデスクへと足を進めた。
報告を始める。言葉を紡ぐたび、尿意が鋭い波となって押し寄せる。膝を擦り合わせ、足先に力を込めて耐えるが、身体はもはや限界を超えていた。下腹部が熱く脈打ち、尿道のあたりで何かが切れそうな感覚が広がる。彼女は必死に呼吸を整え、声を震わせないよう努めるが、上司の質問に答えるたび、意識が下半身に引っ張られる。
「クライアントの反応はどうだった?」
「はい、とても好意的で…」
と返す声がかすかに上ずる。頭の中で警報が鳴り響く。太ももをぎゅっと締め、背筋を伸ばして圧を逃がそうとするが、もはや抑えきれなかった。
そして――。
「っ…!」
小さく漏れた声とともに、温かい液体が内腿を伝い落ちる。最初は一滴、二滴と静かに始まり、ストッキングを濡らし、スカートの裏地に染み込んでいく。
だが次の瞬間、抑えきれなくなったおしっこがパシャパシャと勢いよく漏れ出し、床に大きな水溜まりを作った。
カーペットを叩く音が、静寂に包まれたオフィスに響き渡る。綾香の顔が一瞬にして真っ赤に染まり、心臓が激しく鼓動する。羞恥が全身を包み、頭が真っ白になった。自分が今、何をしてしまったのか。その現実が彼女を突き刺す。
上司が怪訝な顔で
「どうした?」
と尋ねた瞬間、綾香の身体が硬直した。
「何…?」と呟く上司の視線が足元に落ち、彼女は反射的にスカートを握り潰す。
だが、濡れたストッキングが冷たく脚に張り付き、隠しきれない現実がそこにあった。羞恥が熱い波となって顔を覆い、耳まで火照る。
「大丈夫か?顔が真っ赤だぞ」
上司が立ち上がり、心配そうに近づいてくる。だがその一歩が、綾香の心をさらに締め付けた。
「い、いえ、大丈夫です!」
と慌てて手を振るが、声は震え、視線が泳ぐ。床に広がる水溜まりが、上司の目に映った瞬間を想像し、彼女は息を呑んだ。
「何かこぼしたのか?」
上司が首をかしげ、綾香の足元に目をやる。
「コーヒーでも落としたのか?」
と続けるその声に、彼女の心はさらに混乱する。言い訳を探すが、言葉が喉に詰まる。
「違います、ただ…!」
と声を絞り出すが、そこで力尽きた。羞恥が彼女を支配し、頭の中では「見られた」「知られた」という恐怖が膨らむ。
「すみません、トイレに…!」
と呟き駆け出す。逃げるように廊下を走りながら、濡れたストッキングが太ももにまとわりつく感触に、羞恥が再び込み上げる。
トイレに辿り着き、個室に飛び込んだ時、綾香はドアに背を預け、荒い息を吐いた。スカートをめくり、濡れたストッキングとパンティを脱ぎ捨てる。冷たい空気が脚に触れ、ようやく解放された感覚が全身を包む。だがその瞬間、羞恥の波が再び押し寄せた。
自分がオフィスで、しかも上司の前でお漏らししてしまったという事実が、彼女の心を締め付ける。膝が震え、鏡に映る自分の顔を見る勇気すら出ない。
「どうして我慢できなかったの…?」
と自問するが、答えはない。羞恥が彼女を飲み込み、涙がこぼれそうになる。だが同時に、心の奥底で奇妙な解放感が芽生えていた。
オフィスに戻ると、綾香はなんとか平静を装い、デスクに腰を下ろした。スカートを替え、ストッキングを新品に履き替えたことで、見た目は元通りだった。だが、心の中はまだ乱れたままだった。
上司が近づいてきて、さりげなく声をかけてくる。
「気分が悪かったのか?さっきは顔色が悪かったぞ」
「少しお腹を壊してしまって…」
と誤魔化そうとしたが、上司が笑いながら続ける。
「そういえば、さっき床が濡れてたな。あれ、お前…お漏らししたんじゃないか?」
その言葉に、綾香の心臓が止まりそうになった。顔が再び熱くなり、耳まで真っ赤に染まる。
「ま、まさかそんなこと…!」
と否定しようとしたが、上司の冗談めかした視線に耐えきれず、彼女は意を決した。羞恥に震える声で、かすかに呟く。
「実は…その…我慢できなくて、少し…漏らしてしまいました」
言葉を口にした瞬間、綾香の心は崩れ落ちそうになった。自分で認めたことで、羞恥が一気に現実となり、彼女を飲み込む。上司が一瞬驚いた顔をした後、
「お、お前、マジかよ」
と笑いながら肩を叩く。
「まぁ、そういう日もあるさ。気にすんな」
と気遣うように言うが、綾香にはその優しさが逆に刃のように突き刺さった。
顔を上げられず、デスクに俯く。自分で告白したことで、隠していた秘密が暴かれ、羞恥が全身を支配する。「上司に知られた」「笑いものになった」と頭の中で繰り返し、自分を責める。
同僚たちの視線が背中に突き刺さるような錯覚に襲われ、実際には誰も気づいていないのに、彼女は自分が晒し者にされた気分だった。上司が去った後も、綾香の手は震え、心臓の鼓動が収まらない。さっきの瞬間がフラッシュバックする。上司の前で漏らしたこと、床に広がった水溜まり、そして自分で認めたその言葉。羞恥は彼女を際限なく追い詰めた。
だが、心の奥底では、我慢の果てに得た解放感が静かに息づいていた。
綾香はその日を忘れることはないだろう。羞恥に苛まれながらも、次の「ゲーム」が始まる時、彼女は再び自分を試すのだろう。その羞恥さえも、彼女の一部として。