表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/56

夜に更ける

 前回のあらすじ。専用装備が馬鹿みたいに強かった。以上。


『いや、要約しすぎだって。もうちょっと詳しい説明をプリーズヘルプミー』


「むしろ助けて欲しいのはこっちの方なんだが……」


 現実世界。スマホのスピーカーから聞こえてくる声に私は思わず頭を抱えた。

 電話の相手はもちろん悠真だ。あのあと私は一旦ゲームからログアウトし、パソコンで『ブレス・オブ・オリジン』について調べていた。理由は単純に、私と似たジョブや武器を持っているプレイヤーがいるのかどうか知りたかったからだが、その途中で彼から連絡が来たのである。

 なんでも、フレンド登録の完了を知って早速念話をしようとしたが、こちらが既にログアウトしていることに気付き、止む無くあちらもログアウトしてきたらしい。


『耐久値無限に状態異常耐性、聖属性耐性、即死判定時の食いしばり効果……これは多分HP減少じゃなくそういう魔法とか呪いを受けた時のやつだな。その他、悪魔や霊体(アストラル)に対する攻撃優位……ふむふむ』


 悠真はこちらが伝えた内容を反芻すると、電話口でなるほどと頷いた。

 これでも彼は、サービス開始時からBOO(ブレス・オブ・オリジンの略)を続けている古参勢だ。まだ学生の身分故に長時間のログインはできないが、休日はもっぱらゲームをしているため知識は廃ゲーマーと遜色ない。


『確かに、初心者の持つ武器としては規格外にも程があるな。けど、その代わりに七弥は一切防具を付けられないわけだろ。それならメリットとデメリットの釣り合いは取れてるんじゃないか?』


「そういうものか……?」


『少なくともさっき言った武器効果はバランスブレイカーな性能じゃないな。耐久値無限は珍しいけど似た効果のスキルだってあるし、状態異常や属性耐性、食いしばりも唯一無二の効果ってわけでもない』


 彼曰く、武器は一定以上の等級のモノになると、強奪や破損状態にならなくなるらしい。エムからは、耐久値が無くなった物は消失するから気を付けてと言われていたのだが、あれはあくまで基本的な話に留まっていたようだ。


『ただ、もう一つの効果……ウェッポンスロットだったか? そっちは使い方次第でかなり化けるぞ。なんてったって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わけだからな』


 恐らくこちらが聖刀〈無窮合一〉の真価なのだろう。若干興奮気味な声音のまま彼は続けた。


『ジョブ特性と相性の良い武器をセットできれば、上位ランカーになるのも夢じゃない。今はまだ色々と制限が多いかもしれないが、これからレベルを上げていけばすぐ追い付けるぞ!』


「そ、そうか……それは凄いな」


『そうだ! せっかくチュートリアルも終わったことだし、これから一緒にレベル上げしに行かないか? 来週のイベントについても話しておきたいし』


「いや、流石に今日はもう寝る。チュートリアルクエストの精神的疲労で眠いからな。せめて明日の昼間にしてくれ」


『オッケー! じゃあ、明日の朝九時にアインツトーンの噴水広場前集合でいいか?』


「ああ。今日もそこでログアウトしたからな。リュウナって名前で白黒の和服を着ている女がいたら私だ。ちなみにお前は何て名前でどんな格好をしてるんだ?」


 そう尋ねたところで、悠真は何故か唐突に不気味な笑い声を出した。


『ふっふっふ、それは当日のお楽しみってやつだ。きっと驚くぞ』


「……そうか」


 一欠片も期待しないでおくとしよう。互いに「おやすみ」と告げてから電話を切った。

 ふと壁に掛かっていた時計を見やると、時刻は既に九時半を回っていた。開きっぱなしだったパソコン画面のタブを消そうとし……少し気になることがあったのを思い出す。キーボードを叩いて開いたのはBOOの公式サイトだ。


「イベント……イベント……これか」


 そこにはポップな字体で『初心者大歓迎』と大きく書かれていた。詳細を確認すると、どうやらここ一ヶ月以内にBOOを始めたプレイヤーと組むと、イベントで獲得できるアイテムやお金の量が増えるらしい。先日の悠真のメールにあった通りだ。

 開催は来週の日曜日午後一時からとある。専用フィールドでより強い魔物をより多く倒したパーティーがランキングに入れるとのこと。二人一組のペア制なのは、片方が戦闘不能になってももう片方が生存していれば、その場での復活が可能という仕様から。全滅した場合はスタート地点からやり直しである。


 これはもしや、フィールドの先に進むほど難易度が高くなるのか……?


 なるほど。初心者ならスタート地点に近いエリアで、上級者ならスタート地点からより遠いエリアで魔物と戦えばいい。どうせ初心者がランキング上位を目指すことも無いし、ランキングに入らなくとも報酬はゲットできる。初心者と上級者のどちらにも利のあるイベントというわけか。


「ふぅん……」


 一通り目を通した後にタブを閉じ、パソコンの電源を落とす。フッと暗くなった画面には相も変わらず不機嫌そうな私の顔が映っていた。それから目を背けるようにして、私は自室を後にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ