夢日記02
私の国の城が建つ都市。
その1番外側より外。
城壁なんかなく、
家を出ればすぐそこに
野原が広がっている。
そんな場所で
私は母と2人で暮らしていた。
近くに、年下だけど、
3人の幼なじみが住んでいて、
いつも原っぱで
かけっこして遊んでいた。
直接聞いたことはないけれど、
彼らは幼いながら
私の事を守ってくれているようで、
それがとっても微笑ましかった。
私は一人っ子だから、
弟がいたら、きっとこんな感じだっただろう。
生活は貧しいけど、
笑顔の絶えない、そんな幸せな毎日は、
王国の使者がくることで、
すでに、遠い思い出に変わっている。
城下町の端の端に
王国の騎士が何人も来たものだから
周辺の住民のざわめきは
私に異変を知らせるのに十分だった。
その使者がいうには
なんでも国の偉い預言者が
私を聖騎士だと言ったらしい。
何もかもが現実離れしていて
気持ちがついてこない。
状況を理解する前に
場面が流れていく。
強く覚えているのは、
母が、涙していた事。
そしてぎゅっと抱き締めてくれた事。
王宮に上がれば
よりよい暮らしができると信じて、
兵に連れられていく私を
少し歪んだ笑顔で見送ってくれた事。
それからは私にとって、
まさに地獄の日々であった。
戦うための訓練を強いられ
体はボロボロ。
聖騎士という予言は、
私になんの加護も感じさせなかった。
体力は年相応の女性が持つものと同程度、
剣術や弓術など、あらゆる武芸は素人同然。
私はただ、
日々の訓練を言われるがままにこなし、
眠った。
訓練は、数ヶ月でなれたと思う。
だが、別の問題が
私の精神を少しづつ、摩耗していった。
それは、男の目である。
訓練は王宮の騎士団の訓練所で行っていた。
当然全員男である。
そんな中、女である私に向けられる
ぶしつけな目、値踏みする目、
軽蔑する目、嘲笑の目に、
精神が少しづつえぐり取られる。
いつも思い出したのは、幼なじみの弟達。
あぁ、私は本当に守られていたんだな。
あの幸せだった日々に
帰りたかった。
目線だけだった嫌がらせは、
年月と共に変化していった。
ひじや、肩への軽いボディタッチ。
太もも、しり、背中
もちろん胸。
下着を盗まれ、
部屋に侵入され、
体の色んな場所を
〇ナニーの道具にされた。
新しい嫌がらせをされる度に
抵抗したけど、どうにもならなくて、
ただ、泣いた。
ここへ来てから数年がすぎた。
実戦経験を積み、
心の殺し方もいくらか覚えた。
いつからか、泣けなくなった。
男のあしらい方も覚えた。
今は隣国との戦争中だ。
前線基地のキャンプ地で、
招集がかかるまで待機している。
聖騎士の肩書きは伊達ではなかったようで、
私が参加した戦いは負け無しだ。
それが、加護によるものなのか、
私自身、今でもわからない。
今日は月明かりが眩しいから、
見張りがしやすいなと思うと同時に、
もう明日には、
戦地へお呼びがかかるだろうとも思った。
やがて見張りの交代の時間となり、
就寝用のテントに向かう。
前線の野営地だ。
当然男女別などありえず、
雑魚寝状態だ。
男たちの寝息が聞こえる中、
一応、私の定位置になっている、
1番入口にちかい端っこに
ゴロッと横たわり目を閉じる。
数刻すると、
私の胸をまさぐる男の手にギョッとした。
尻の割れ目にこ擦り付けられる
アレの感覚。
服の上からとはいえ、
やはり不快だ。
いつもなら、我慢できる。
アイツらは1度出せば
大人しくなるのを知っている。
でも明日から戦うのだと覚悟を決めた今夜は
感覚が研ぎ澄まされ、嫌悪感が増していた。
しかたなく、隣の男を振り払い、
用足しと告げてテントを出た。
入口の見張りの男の
あからさまなニヤニヤ顔が
さらに腹立たしい。
あぁ、気持ち悪い。
慣れたはずの全ての事が
今日だけは許せない。
人知れず荒れた心をどうにかしたいと思った。
私の気持ちとは裏腹に静かな夜だった。
キャンプ地の近くに流れる
川の音が耳についてから、
水浴びを思いつくまでには
瞬刻だった。
何もかもを洗い流してしまいたかった。
過去の辛かった事が溢れてきた。
過去の幸せだった思い出が溢れてきた。
なんで私が。
なんで私なのか。
それを全部全部、川に流してしまいたかった。
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敵地偵察に
大将がきちゃだめだろう。と
腹心の部下の無言の圧力をサラッとながし、
俺はそれを見た。
敵地には女がいた。
あれが王国の聖騎士だと、部下に言われるまで
気づかないとは、
俺はどうやら呆けていたらしい。
「それにしても噂にたがわぬ
美しい体ですねぇ。」と、のたまう部下に
即刻目を閉じろと命令をした。
直感が
あれは俺のものだ、と告げたのだ。
服を全部脱いだ女の体が
月明かりにてらされ、
その滑らかな曲線が
くっきりと浮かんでみえた。
自然と目に力が入り、
決して狭くない川の対岸いる彼女の
胸の先っぽまでが
見えるようだった。
これじゃ変態だな…と
自分の性癖にあきれつつ、
決して彼女から目をはなせない。
彼女は川の浅い所に座り込むと
そのまましばらく動かなかった。
雪解けしたばかりで、
水はまだ冷たいだろうに。
やがて、パシャ、パシャ、と
水を叩きつけるような音が数度聞こえたあと、
女はその場を後にした。
あぁ、あれは俺の物だ。
絶対に手に入れる。
だが、開戦すれば、
両軍の兵は入り乱れ、
彼女を探し当てるのは
不可能だろう。
何か策が必要だな。
「大将、あんたまた余計な事考えてます?」
とため息混じりで目線をよこした部下に、
またとはなんだ、たまとは。と、
多少の心当たりと共に、ジト目をかえした。
その後、
手早く敵の情報を収集し終え、
帰路を急ぐのであった。






