いざ学園
誤字がありましたらコメントで教えていただけると幸いです。
魔法を使い空を飛んでいると、多くの目を集める。そこらの魔法使いは普通に歩いていくだろうが、私は特別な魔法使い。大陸で十数人しか使えない飛行魔法だって使える。だが今目の前にあるのは大陸で1つしかないグイニス魔法学園だ。
なぜグイニス魔法学園に着いたのにも関わらず、移動用である飛行魔法を使っているのかというと……
「なんでこんな広いんだよぉ」
私は独り言をつい呟いてしまった。あまりに広かったからだ。元からこの国が大きいのもあるが、何がなんでも大きい。今日行われるはずの試験の会場を見つけられない人だっているのではないだろうか。
シーナは少し疲れたので、飛行魔法を使うのをやめ、グイニス魔法学園の門の前にゆっくりと着陸した。シーナは「神童」であるため、入学に至っては試験など受けなくても合格となっていた。だからこそゆっくりしていたのだ。
グイニス学園は入試の日に入学式もある。普通は入学式を行う会場に行かなければならないのだが、入試試験が終わるまで待機というのは、いささかつまらない。だから試験会場に行って暇つぶしをしつつ、私と比べて生徒がどれだけの実力を持っているのか見ようと心の中で決める。
私は再び飛び上がり試験会場を探そうとした。その時、「ゴォー」と強い風が吹いた。周りの人はなんとも思っていないようだが、私はその風が魔力を持った「風」であることにすぐ気づいた。そしてその「風」は自然に吹いたものでは無く、誰かが通り過ぎて生まれたものであることも。
「うそ…飛行魔法?」
あまりに速すぎる。あの速さは…まさか。
シーナはすぐに飛行魔法を使って飛び上がり、最高速度でその「風」を追いかける。
「くっ…追いつけない」
10秒もしないうちにシーナはその「風」を見失ってしまった。シーナは辺りを見渡すが特に魔力探知に引っ掛からない。ふと魔力を下の方から感じ、シーナは下を見た。そこにあったのは試験会場だった。
あの「風」を見失ってしまったのは癪だが、試験会場を偶然見つけられたのはラッキーだ。私はすぐに飛行魔法の出力を下げ、試験会場に降りた。しかし、私は他の人の魔法を見たいだけなのに私の方に注目が集まっている。私が何かやらかしたかと考えを巡らせるが、何も出てこない。
「シーナさん、速く飛びすぎですよ」
ここで出てきたのは、この学園の学園長グイニスだ。真っ白のケープに覆われた彼は魔法使十聖のうちの一人であり、その序列は5位という学園長にふさわしい実力者だ。
魔法使十聖――この世界に稀に産まれる魔法使の素質を持った人たちの中で、一番目から十番目に強い人たちのことで、たった一人で一つの国家を滅ぼせるレベルと言われている。そのほとんどは謎に包まれており、唯一分かることは白のケープを着て、特徴的な杖を持っていることだけ。今は私の格上の存在であり、そのうちに私が実力で抜かす人達だ。そんなすごい人達のうちの一人が私に優しい声で注意をした。
「先生。今年の人達は強いですか?」
だが、いくら凄かろうがお構い無しだ。私は私のしたいことをする。
「ええ、とても強い者が」
また優しい声で私に語りかける。魔法使十聖が言うのだからそれなりの実力はあるのだろう。だが私の相手になるほど強いかどうかは別だが。
突然、耳の鼓膜を破りそうな勢いで、地面を揺らしながら大きな音が聞こえた。そしてグイニス学園長は、待っていたと言わんばかりに、私に音のした方向を見るように促す。後ろに振り向くと、私の足元には石のような破片が散らばっていた。少し見上げると、試験で使われていたはずの的が破壊されていた。
ありえない。そもそもこの的は、魔法で破壊できるわけがないのだ。この的はかつて魔法使十聖の内の一人である賢者が作ったとされる魔法によるダメージをほぼ打ち消すという代物。これを破壊するには魔法ではなく、物理が有効とまで言われている。だが今は魔法の試験中だ。物理で破壊するのはないだろう。
もし魔法だったとしても気にかかる点がある。私の魔力探知に引っかからなかったのだ。つまりは、私が魔力を感じる隙もなく、恐ろしいスピードで魔法を撃ち、破壊したということだろう。
ますますありえない話になってきた。そもそも魔法をそんなパッと打てるものなのか?そうだ、この魔法を撃った人を見ればヒントになるかもしれない。
私は魔法を撃ち、的を破壊した人を探すため視線を走らせた。その正体は目立っていたのですぐわかった。
私より少し高い背で、その背に似合わぬ杖を持ち、白いケープを着ている男の子。その焦りの表情と体格からは考えられない魔法の威力と瞬発性。先程の「風」の正体もおそらくこの子だろう。
「まったく…ほんとに私より強いじゃんか」
そういえば入学したらすぐにクラス分けをするためにトーナメント式の模擬戦をするらしい。私の楽しみがまた増えたようだ。
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