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第二十四話③『誤解して先走り』



 嶺歌(れか)は小さく息を吐くと彼に説明を始めた。


 まず形南(あれな)にこれまでされてきた事は、全てプレゼントというものではなく、嶺歌が形南にしてきた事に対する御礼なのだと。


 そして豪華すぎるお返しを躊躇していた事も説明した。言い訳がましいかもしれないが、事実なのだから構いやしない。


 勝手に欲深い奴だと決めつけられるのはいいが、何も知らない平尾がそれを口にして嶺歌を形南から引き離そうとしてくる事だけは嫌だったのだ。


 どのような事をしてそのような豪華な御礼を貰ったのかまでは魔法少女の話が関与してくる為詳しく話せなかったが、話せる範囲の事は全て説明してみせた。


 平尾はただただ顔を青ざめさせたり眉根を下げたりとよく分からない反応を終始見せていた。


「だからあたしからあれなに物を要求した事はないし、あれなもそれを理解してる。でも断り切れないあたしがいたのも事実だから、それはあんたの意見が正しいと思うよ。だけどあたしは一度だってあれなを都合の良い相手として見た事はないからそこは勘違いしないで」


 そして「不快だから」と言葉を付け加える嶺歌の言葉に平尾は顔を歪める。申し訳ないと思っているのか途端に顔を下げて「ご、ごめん」と声を発した。


「まあいいよ、平尾君があれなを思って言ってるのは分かったし」


 嶺歌は自身のプライドの為に言ったまでだ。


 彼も彼の正義を貫きたかっただけなのだろう。和解ができるならそれに越した事はないし、嶺歌の言葉で平尾からの誤解も解けた筈だ。


 何となく平尾から向けられる視線が先程と変わった気がする。


「それにあたしも最初はあんたがあれなを逆玉で狙ってんのかと疑った時あったよ」


 以前疑惑として浮上した一つの可能性を嶺歌は思い出し口にする。


 今でならあの考えは非常に的を外れていると直ぐに分かるが、その事を話してみると平尾はひどく驚いた様子で肩を跳ね上がらせ、慌てた様子で言葉を発してきた。


「ええっ!? お、俺そんなことしないよ!!!」


「うんごめん。ちょっと思った時があっただけ。今は思ってないから」


 嶺歌はそう言って平尾に謝罪する。決めつけこそしてはいないが、疑ってしまったのは事実だ。


 嶺歌が頭を下げて謝ると平尾は尚も慌てた様子を見せながら「お、俺の方こそごめん。う、疑って。勝手に」と謝罪をしてくる。


 嶺歌はそのやり取りで自身の負の感情が次第に収まっていくのを感じていた。


「でもさ」


 互いに謝罪を終えると嶺歌(れか)は素朴な疑問を彼に投げ掛ける。


「平尾君もそういうのなかったの?」


 そういうのとは言わずもがな形南(あれな)からの高級なプレゼントやご馳走の類の事だ。


 形南の愛する平尾であれば、彼女は嶺歌以上におもてなしをしているに違いない。


 すると平尾は眉根を下げながら自身の頬を掻き始める。


「あ、あった……俺は肩身が狭くて何度も断ったらあれちゃんも引いてくれたんだ…この間のお出かけの時も断ったよ」


 その言葉を聞いて嶺歌は目を見開き、思うがままに言葉を述べた。


「それはそれで尊敬するわ。中々断れる雰囲気じゃなかったしな……」


 嶺歌は終始断り続けたという平尾に感心し、それと同時に平尾が形南の相手に相応しい男であるのだと、初めてそう感じる事が出来ていた。


「で、でも……それ聞いたら確かにって思ったよ。俺も、あれちゃんの押しの強さは知ってるから、和泉さんが断り切れなかったっていうのも……納得だよ」


 平尾はそう言って小さく頭を掻いた。誤解は完全に解けていた。


 嶺歌は互いの警戒心が一気に無くなるのを実感し、そのまま聞いてみたかった事を口にする。


「平尾君てあれなの事好きだよね?」


「えっええっ……!!?」


 平尾は再び肩を跳ねらせると今度は真っ赤な顔をして身体をのけ反らせた。分かりやすい反応である。


「う、うん……」


 しかし否定する事はなく彼は素直にそう頷く。


 その光景を見て嶺歌は確信していた。平尾の形南に対する感情は本物であるのだと。


(両片思いってやつ……? やったねあれな)


 そう思いながら嶺歌(れか)は口元が自然に緩んでいた。


 嬉しい情報を得た事で気分は先程と百八十度変わり、自分の事のように喜んでいる自分がいた。


「デートはどうだった?」


「でっデートじゃないよっ!?」


 嶺歌の二回目の質問に平尾は動揺を隠せていない。満更でもなさそうな顔をしているのに何故デートを否定するのだろう。


「何言ってんの? デート以外に何があんのさ。男と女が二人で出掛けてんだから歴としたデートでしょ」


 嶺歌は呆れて平尾を見やった。腿の上に肘を置いて頬杖をつくとそのまま「で? どうだったの?」と答えを催促する。


 平尾は嶺歌の言葉に反論したそうな顔をしながらも、縮こまった様子で言葉を返してきた。


「う、うん凄く楽しかった…電車乗るの初めてなんだって。でも凄く楽しんでくれてた」


 ボソボソと小さな声でそう答える。


 嶺歌は平尾のウジウジした姿に好感を持てずにいたが、それでも形南(あれな)への強い思いを持っていると分かった今は、彼に対する見方がまた少し変わっていた。


 本人の口から楽しかったと聞けて嶺歌は嬉しい気持ちになる。


「そっか良かった。告白はしないの?」


「いっ!? いや、そんなの……あり得ないでしょ」


 しかし平尾の意味不明な回答で嶺歌は瞬時に目の色を変えた。彼の否定する考えが分からないからだ。


 嶺歌は再び眉根を寄せてはあ? と声を出すと何故あり得ないのかを問い掛ける。平尾は頭を俯かせながらだってと声を上げた。


「あれちゃんは遠い存在の女の子だよ……俺なんかじゃ届かない」


「さっきも言ったけど、決めるのはあれなでしょ」


 嶺歌はそう言って平尾の背中をバシッと叩いた。


 突然のその衝撃に目を見開き驚愕した平尾は言葉にならない様子でこちらを見てくる。


 重たそうな瞳はいつもの倍ほど見開き、何が起こったか分からない様子だった。


「あれなの気持ちも知らないくせに勝手に決めつけんなっての。無理に告白しろとは言わないけどさ、これからもあれなと一緒に遊びに行けばいいじゃん。諦めるのは早いと思うけど」


 そう言って嶺歌は立ち上がる。そろそろ昼ごはんを食べておかないと午後の授業が持ちそうにない。


 嶺歌は平尾に「そういう事だから」と言葉を残し、立ち去ろうとすると「ま、待って」と呼び止められた。


「何?」


「あ、ありがとう」


「うん、頑張れ」


 平尾は表情が少し明るくなったような気がする。


 それは今の嶺歌の一言で、形南に対する向き合い方が彼の中で決まったからなのかもしれない。


 二人にとっていい方向に向かうのなら、それ程喜ばしいことはないだろう。


 嶺歌はそんな事を思いながら平尾を残して裏庭から立ち去るのであった。



第二十四話『誤解して先走り』終


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