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第十八話①『翌日』



 目を覚ますとそこは自宅のベッドの上だった。朝日がカーテンの隙間から差し込み、早朝であることを理解する。昨日はあれからずっと眠ってしまっていたようだ。


「どうやって帰ったんだろ」


 眠気はもうない。ぐっすりと眠ったせいか身体も軽く感じられる。しかし昨日の記憶はあの場で形南(あれな)の復讐を見届けたところで途絶えている。


 嶺歌(れか)は自分のスマホを探し始めると数秒して机の上に置かれている事に気が付いた。


『嶺歌、本日はお疲れ様でございますの。ゆっくりお休みになられたら、ご連絡してちょうだいね』


 そしてスマホの横に小さなメモ用紙が置かれており、そこには形南の手書きのメッセージが添えられていた。


「れかちゃん」


 すると突然部屋のドアがノックされ、嶺歌がいいよと声を返すと扉の向こうから嶺璃(れり)が入ってくる。そして妹の姿を見て今日は休日であることを思い出した。


「おはよ嶺璃」


 嶺歌が口元を緩め、そう挨拶の言葉を向けると嶺璃は途端に嬉しそうな顔をしてこちらに抱きついてきた。甘えん坊な妹だが、そんな彼女に癒やされているのも事実だ。


「れかちゃん~! 昨日キラキラした女の子がね! れかちゃんの友達だって言ってて、わたしが妹だって言ったらこれくれたの!」


「ん?」


 見て見て! と目をキラキラ輝かせながら嶺璃(れり)が見せてきたのはリボンがあしらわれた可愛らしいブレスレットだった。


 ちょうど嶺璃くらいの年頃の子どもが喜びそうなデザインである。キラキラした女の子と言うのは形南(あれな)の事で間違いないだろう。


 いつの間にこのようなものを入手したのだろうと思いながらも嶺歌(れか)は心底嬉しそうにブレスレットを手首につける嶺璃の姿を見て笑みをこぼした。


「良かったじゃん、ちゃんとお礼言った?」


「もっちろん! そしたらキラキラの女の子とでっかい優しい執事さんが笑顔でわたしの頭撫でてくれた!」


 その嶺璃の言葉を耳にして嶺歌はここまで運ばれた経緯を思考した。意識はなかったものの、なんとなく昨日自分が誰かによって運び込まれたという感覚を身体が覚えていた。


 がっしりと支えられ、心地良い運搬だったような気がする。今の嶺璃の発言も加えると、どう考えてもあれは兜悟朗(とうごろう)が運び込んでくれたという事に違いないだろう。ここまで彼に担がれてきたのかと思うと急激な羞恥心に駆られた。


 記憶にないとはいえ、兜悟朗に抱えられてきた自分を想像すると嶺歌の頭は爆発しそうだった。


「れかちゃんお顔赤いよ~?」


「……なんでもないよ! さ、ご飯食べに行こ」


 嶺歌は誤魔化すように嶺璃の背中を押しながら部屋の外に出る。とりあえず朝の支度をしてから形南へ連絡をしよう。


 そう思い嶺歌は手早く家事を済ませるのであった。




「おはよー! 昨日は色々してくれたみたいでほんとありがとう! 妹にもプレゼントしてくれたって聞いたけど」


 朝の支度が全て終わり、自室へ戻ると早速スマホから形南(あれな)へ電話をかける。形南は案の定、すぐに電話に出てくれていた。


『こちらこそ本当に感謝しかありませんの。嶺歌、急ですが本日のご予定は空いていまして? 妹様の事もお話ししたいですわ』


「空いてる空いてる! あたしも色々話したかったからタイミングめっちゃいい!」


 嶺歌(れか)は形南の誘いに乗るとそのままこの後会う約束を取り交わした。形南が自宅前まで迎えにきてくれるようだ。せっかくの厚意なのでお言葉に甘えることにした。




 形南と会う時間までは少々厄介ごとに巻き込まれていた。母に昨日は何があってあのような形で自宅に戻ってきたのか説明をしろとしつこく問われたのだ。


 確かに自分の娘が眠ったままの状態で一度しか会った事のない男性に担がれ、見知らぬ女性と共に自宅に運んできたら驚くのは分かる。


 ゆえにそう尋ねてくる母の気持ちは理解できるのだが、魔法少女の存在を隠している以上は説明を全て行うのは難しい。


 適当に誤魔化して何とか事なきを得ていた。


 数時間後になると嶺歌の家のインターホンが鳴り響く。


「嶺歌! 回復なさったようで安心ですの!」


「あれなも元気そうだね! あたしも安心だよ」


 急いでエントランスに向かった嶺歌は私服姿の形南と一日ぶりに再会した。


 形南も心なしか晴れ晴れとした表情をしており、それが昨日の一件と関連しているのだと思い付き納得する。


(うん、やっぱり良かった)


 自分が行った行動が独りよがりのものでなくて本当に良かった。魔法少女として、何より形南の友人として自分は役目を果たせたのだ。そう思えた事が嬉しい。


「嶺歌さん」


 するともう一人の声に気が付く。形南(あれな)の後ろに必ずいつも控えている執事の兜悟朗(とうごろう)だ。嶺歌(れか)は彼の方へ顔を向けると目が合い、すぐに会釈をした。


「兜悟朗さん、昨日は家まで運んでくれてありがとうございました。それに、色々……」


 昨日兜悟朗にしてもらった事は実は運んでもらった事だけではない。


 嶺歌が魔力切れで倒れかけた時、支えてくれた上に彼の膝に頭を乗せ、休ませてもらっていたのだ。


 あの時は意識が朦朧としておりそこに気を掛けられる余裕がなかったのだが、回復した今思い返すととてつもない事をしてもらっていたのだと自覚し、叫び出したい程の羞恥心が襲ってくる。


「あたしが倒れた時に、ご面倒おかけしてすみません!」


 嶺歌は顔が熱くなるのを感じながらも彼に頭を下げる。高校生にもなって、男性の膝の上で休んでしまうなど何たる事だろうか。


 しかしそんな嶺歌とは対照的にくすくすと笑う形南の声と、柔らかい言葉を返してくる兜悟朗の声が嶺歌に向けられる。




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