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生徒会に入り、会計の補佐やらいろいろな補佐、つまりは雑用をこなす。この雑用が結構多い。
紅茶を一度淹れさせてもらったが、うちにある茶葉とは違いすぎて……。蒸らし時間長くしないと味がほぼしない粗悪な茶葉しかいつも買えないので……。しかも二番どころか三番煎じ上等!な飲み方しかしていないので……。
紅茶を淹れるのだけは他の人にやって貰っている。私がやるとイイ茶葉が台無しだからね!
勉強はなぜか王子から教えてもらっている。意外にも王子はどの科目でも教え方がうまかった。この王子……ただのボンボンではない。
家庭教師に習っているなら成績が良いのは、まぁ頷ける。王族なら有能な教師を目玉が飛び出るほどのお金を払って雇えるだろう。ただ、この王子、教え方までうまいのだ。むかつく。なぜ天はボンボンにさらなる才能を与えるのか。王族加点か。教師にならないのに何で教え方までうまいんだ、むかつく。
テストの山勘はアーロン様が一番当たるらしく、得意げに今回の予想を教えてくれる。その横でユージーン様や眼鏡の令息、ネメック侯爵令嬢はふざけることなく淡々と仕事をこなす。
女子生徒から「なんであなたみたいなのが生徒会に」って偶に嫌味を言われるくらいで、他は至れり尽くせりである。あ、あとは女子生徒に王子の好きなものを聞かれるとかかな。お菓子を「渡しといて」って押し付けられることもあるけど。だんだん躱すのがうまくなってきた。
ユージーン様からの指示で、王子の好きなものは「蝶以外の虫の標本」と答え、お菓子を渡してきた令嬢の家名は絶対聞くように言われている。お菓子には変な物が入っている確率が高いらしい。
以前から王子は「虫の標本」が好きと言っていたら、蝶の標本を作ってきた猛者がいたようだ。
「ネメック侯爵令嬢は休みか」
「家の用事だそうですよ」
「今日は目安箱にもラブレターしか入ってなかったから大してやることないっすね! もう今日は好きな事したらいいんじゃないっすかね? 次のテストもあと1か月半後なんで」
そうだ、次のテストまであと1か月半。過去問もあるが油断はできない。ノーモア借金である。
「ではそうするか。あ、バートラム嬢、少し待ってくれ。ちょっと君を見込んで聞きたいことがあるんだが」
「あ、はい」
いやいや殿下、まだ私立ち上がってもいませんが……図書室に行こうと思ったことがバレてたわね。あそこの方が静かなんだもの。アーロン様って結構話しかけてくるし、ふざけるし、面白いけど勉強中はうるさいのよね。
「婚約者を決めろとせっつかれていてな。参考として聞きたいのだが、女性の目から見て王妃にふさわしいと思えるご令嬢はいるだろうか?」
最近、ラブレターすごいですからね。ボンボンめ。
内心、ひねくれまくりながら王子の言葉をふんふんと聞く。美味しいお菓子と紅茶でも私のこのひねくれた考え方は変えられない。
「両陛下が決めるのではないのですか?」
「兄がピンク頭を侍らせた前例があるからな。ひとまず希望は聞いてもらえるようだが、さすがに王妃の荷が重いだろうという令嬢を選ぶ気はない」
「一応伺いますが、第一王子殿下は辺境から戻ってこられないということですか?」
「他国が攻め込んできて兄の作戦で被害を最小限にして追い払った、などよほどの功績がない限り難しいな」
「それは……まぁナシよりのナシですね」
「あぁ、ナシよりのナシ、確率としても10%切っているだろう」
ふーむ。
「私に聞くということは生徒会の他の方にはすでに質問済なんですね?」
「あぁ、男の意見しか聞いていないがな」
さすがにネメック侯爵令嬢に聞くわけにはいかないでしょうねぇ。侯爵家のご令嬢ですから絶対婚約者候補には入ってるでしょうし。聞いたら聞いたで面白いけど、あの方は余計なことは言わないだろうし、自分の売り込みもしないだろうし……。
「やっぱアンネット嬢しかいないだろ~。一番強そうだし」
とアーロン様。なんだ、強そうって。なんとなく分かるけど、基準そこ?
「再度婚約を受けてもらえるかは置いておいて、王妃教育の大部分を終えていたアンネット嬢なら余計な金もかからない」
とユージーン様。気にするのは王妃教育にかかるお金なのね、激しく同意できるけど。
「自分は高位貴族のご令嬢とは接点がないのでよく分かりませんけど……これまでアンネット嬢が令嬢達の頂点にいたと思うので……殿下がこの人!という方がいないなら順当なら彼女でしょう」
と眼鏡令息。私の意見だけみんなで聞くのは不公平と思ったのか、それぞれ意見を述べてくれる。
仕方ない。本っ当に仕方ない。
私の頭の中は自分の家のお金のことで一杯だ。王妃がどーのこーのなんて考えている暇はない。ピンク頭は論外だけど。というか税金上がらなきゃ誰でもいい。むしろ下げてくれ。いや、そもそも意見聞かずに王子がビシッと決めてくれ。
でも、他の人の意見も聞いておいて、私だけ「誰でもいいと思います!」なんて言えない。
「殿下、私の意見を聞く前に一筆書いてくださいませ」
私は紙とペンを殿下の前に置いた。