21
いつもお読みいただきありがとうございます!
「は? 告白が全く通じてない? 母国語で喋ったのか?」
「もちろん母国語ですよ」
まさかの告白を他国の言葉でしたのか疑われているユージーン。
「ユージーンって口下手だしなぁ。バートラム嬢もズレた令嬢っすからね」
「アーロン、それは女性に対して失礼だ」
王子、カッコいいセリフだが半笑いなのはいただけない。
「でも契約書まで作るってなかなかっすね」
「いいんじゃないか? 『私は未来の公爵夫人よ!』っていきなり威張り散らすタイプじゃないだろうし」
「そんなバートラム嬢……ぶぶっ! 想像しただけでウケる!」
王子がふざけて長い髪をバッと肩にかけるような仕草をすると、アーロンがゲラゲラ笑う。貴族の階級はおいといて傍から見るとアホな男子が三人でふざけているだけだ。
「二人とも茶化すのはやめてください。ただでさえ彼女に家のことを誤解されてるんですから」
「あぁ、影の統率云々の話か?」
「なんでそんな風に誤解されちゃったんすかね~」
***
契約書はまだできていない。専門家にみてもらう必要もあるし、すぐにチャチャッとできるものではないものね。
そんな中で今日は目安箱にラブレター以外のまともな意見書が入ったらしい。もうさ、早く婚約者決めてよ。ラブレターの紙もったいないから。
「えーと、本日の目安箱の中の意見書ですね。『とある庶子』という方からです。わざわざ書いてあるということはある程度お察しですが……『ピンク頭のご令嬢のせいで庶子がさらに差別されている。男漁りのために学園に来ているのだろうと言われるだけならまだしも、娼婦のような距離を強要されたり、ワンナイトに都合の良い相手として見られたりするのは我慢ならない。第二王子殿下はこのことをご存じなのか分からなかったので、現状の打破になるかは分からないが投書しました』」
「うわぁ、ピンク頭って……亡霊のように忘れた頃に出てくるっすね」
むしろ、亡霊に例えたら亡霊が迷惑なレベル。
アーロン様は茶化しているが、王子は目に見えて落ち込んでいる。
「兄の弊害がここまでとは……知らなかった……情けない……対処しよう」
「いえ、むしろ庶子を一括りにして扱おうとしている生徒に問題があるのでは? このような投書があったということはおそらくやっているのは伯爵位以上の貴族でしょう」
ネメック侯爵令嬢の最もな意見に王子以外の全員で頷く。
「対処と言っても、何をしますか? 殿下が直接注意すると火に油を注ぐ形になるかもしれません」
眼鏡令息の疑問も最もである。
「ピンク頭のご令嬢が退学後どうなったのか周知が足りないのでは?」
とユージーン様。そうだった。あのピンク頭、退学になったんだった。親がすぐ退学手続きしたんだよね。あの後、どうなったのかしら。さっさと結婚させられたのか、それとも叩き直されているのか。
「んんー、確かにそれもあるかも? でもそれでピンク頭の弊害がなくなるんすかね?」
「余計に差別がひどくなるかもしれませんね」
しばし全員で悩む。
「ひとまずそんなことを行っている人間がどのくらいいるのか調査は必要でしょう。生徒会から注意をすることもできます」
ユージーン様が軽くまとめる。確かに。
ああいう輩って相手がどんなことをしても気に食わないのよね。私もよく貧乏ネタでいじめられた。成績が良いなら良いでいじめられるし、成績落ちてもいじめられるし。
「一つ提案があるのですが」
全員でうんうん唸っている空気を変えたのは、意外にもネメック侯爵令嬢だった。




