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「どちらが嫌なのかしら?」
ネメック侯爵令嬢は自分のことを嫌がられていると思ったらしく口に手を当てているが、公爵令嬢様はそうではないらしい。さすが蝶よ花よと育てられた(これは単なる想像)お嬢様である。
「どちらもです」
もう知らねぇとばかりにそのまま言ってしまう。学園は建前では平等だ。高位貴族が下位貴族をパシリにするなど理不尽な命令をしたり、討論において爵位で忖度したりしないように、である。
アンネット様は予想もしていなかったのか目を見開く。
「いじめの呼び出しかもしれないのに行くわけないじゃないですか」
「それならわざわざサロンに呼び出さないわ」
「人目を避けていじめるためかもしれないじゃないですか」
なんだ、このキャットファイト。というか、高位貴族って自分が呼びだせば立場弱い人たちはサロンにホイホイ来ると思ってるの?? 会話通じないんだけど。
「それなら生徒会室の前で声はかけないわ。この前はスピネー伯爵令嬢に呼びに行って貰ったけれど、私が行った方がよさそうなお返事だったから」
あ、一応「用があるならお前が来いや」は通じてたのね。
「面識もありませんし、こちらのネメック侯爵令嬢もグルでいじめるかもしれないじゃないですか」
まじでこのキャットファイト、なんなん? もう用があるならここで言ってくれ。いちいちサロンに呼び出さないで。
ネメック侯爵令嬢はグルという言葉にショックを受けたのか泣きそうな顔をしている。残念、私に涙は通用しません。借金取りに涙が通用しないように。泣いて借金減るならいくらでも泣くよぉ。あ、でもこれだと私がいじめてるみたい。
「もう用事があるならここで言ってもらえませんか?」
おい、そこのボンボン王子。見てないで助けてくださいよ。
「そうね‥‥‥そうしたいのだけど、あなたがこの前声をかけてくれた男爵家の令息に絡んだ話なのよ。災害が起きたところの。個人情報もあるからサロンに来てもらった方がいいかと思って」
最初からそう言えや。あ、お口が悪くなってしまった。
「なぜアンネット様があの令息を気にするのですか?」
「同じ派閥なの」
さよーでございますか。ハバツとか難しい事わかりません。
「一人では行きづらいだろうから私が一緒に行こう」
ボンボン王子を押しのけてユージーン様が出てくる。う~ん、用件気になるけど一人で行くの嫌だし。
「どうせ何度も誘ってくるんだ。用事がないなら今日さっさと済ませておいた方がいい」
ユージーン様が小声で最もなことを言う。
「わかりました。お手数おかけしますがよろしくお願いします」
ボンボン王子の方が権力あるけど、相手は第一王子の元婚約者。強く出られないかもしれない。アーロン様じゃあなんか不安。眼鏡令息は爵位でアンネット様に押し切られそう。ネメック侯爵令嬢はグルかもしれないし……信用できない。
消去法でユージーン様、君に決めた!なんちて。あ、でもネメック侯爵令嬢には後で謝っとこ。
サロンにてちてちと、あ、間違えた。嫌々付いていく。
「さっきのやりとりを見て思ったんだけど、あなたって面白い人ねぇ。ウワサより相当面白いわ」
アンネット様が道中、綺麗に笑いながら振り返る。
これって何かの隠語ですかね……バカにされてるの?




